コスプレ喫茶にいた、3週間おばさんの謎。そして、持ってきていた荷物の中身の謎。

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 10年前、この店におきた謎できごとって?3週間おばさんは、地球を侵略しにきたグレイだったんじゃないか?(絶対に、ちがうと思うがな)

 ここは、オタクなモナタ君の働く、とあるコスプレ喫茶。

 最近は、こんな名前でも呼ばれている。

 「ざんねんなコスプレ喫茶」

 今日も、客はまばら。

 こういうひまな日は、いつものような 2人の会話がはじまる。

 「店長?」

 「何かね、モナタ君?」

 「オカルトブーム、ですしね!店にまつわるホラーな話を、聞かせてください!」

 「おお」

 「宇宙人の陰謀に、負けてはならないと思います(オタクが言いそう)!」

 「良いだろう、モナタ君」

 店長は、彼がここで働きはじめる前に起きた不思議体験について、話してくれた。

 「この店にね?」

 「はい」

 「変わった客が、きてね」

 「どういう人、でしたか?」

 「年輩の女性」

 「おばちゃん、ですか?」

 「ホント…。ビジネス相手には、良かったんだがね」

 はて?

 どういう意味?

 「いらっしゃいませ」

 「私…。 3週間続けて、泊まります」

 「 3週間?」

 「 3週間後に、金を払います」

 言われて、10年前の店長(当時は、フロアの責任者)は驚いた。

 ちなみに、10年前のこの店は、24時間営業だったらしい。

 もちろん、店長は、日本の謎生物、ザ・おばさんに聞いてみた。

 「今、 3週間分の代金をいただくことはできますか?」

 聞くのも、当然。

 泊まっている途中で逃げられたら、営業的に、大変なマイナスになってしまうものな。

 が、おばさんは応じない。

 「 3週間後、必ず払いますから」

 その、一点張り。

 「信用できませんか?それなら…」

 おばさんは、かかえていたバッグを、レジカウンターの前に置いた。

 「ドスン…」

 重そうな、響き。

 両手でかかえるほどに大きいそのバッグには、何が入っていたんだ?

 大金?

 まさか…。

 「これは、私の身代わりです。それでは…ええと…そこが、良いでしょう」

 おばさんは、フロアの 1つのブースを指さした。

 24時間営業をしていた10年前のこの店は、漫画喫茶やネットカフェのような個人の部屋を、備え付けていたようだ。

 お気に入りとして使っているある一部屋の中から、ときおりふらっと、店の外に出ていくおばさん。

 そのときは、一旦預けたバッグを持って。

 一体、何者?

 「モナタ君?」

 「はい」

 「そのおばさんは、バッグとともに消えたよ」

 「え?消失現象?」

 「…」

 「おばさんが預けた謎のバッグの中身は、見てみたんですか?」

 彼でなくとも、疑問に思うところだ。

 「…バッグの中身、か」

 「店長?何が、入っていたんですか?」

 「そのバッグの、中にはね…」

 「はい」

 「洗剤やぞうきん、スポンジが、大量に入っていたよ」

 「…て、店長?やつは、地球を侵略しにきたグレイだったんじゃないでしょうか?」

 ちがうよ。

 お掃除のおばさん、だろうな。

 「くやしかったなあ」

 「え?どうしてですか、店長?」

 「 5万円超えの客に、逃げられた…」

 だ、大丈夫なのか、店長?

 そのことがあってから、この店は、24時間営業ではなくなったという。

 「24時間時代が、なつかしいよ」

 涙ながらに、語られてしまった。

 「店長?」

 「何かね?」

 「気に、しないでください。24時間営業じゃないコスプレ喫茶のほうが、今は、多いはずです。全国的に」

 「…」

 「許可を取れば、また、24時間営業の店に戻れますしね」

 「そうなの?」

 …大丈夫なのか、この店長。

 「そうか、店長!」

 「な、何かね?」

 「やっぱり、宇宙人の陰謀なんですよ!そのおばさんは、グレイだったんじゃないでしょうか?」

 オタク脳は、結局、そこか。

 が…。

 「おばさん=グレイ説」

 完全には、否定できそうにない。






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