第15話 ~鉱山ダンジョン・第一階層~
ダンジョンの入り口から続く通路を歩くこと数分。
中は薄暗くジメッとした空気が漂っているため、カビ臭い匂いが鼻につく。
通路幅は大人二人が並んで歩ける程度で天井も高くない。
「あいたっ!?」
どこからか入っているかわからない光を頼りに歩いていると急にマリンが声を上げた。
頭をさすっていることから、低い天井から伸びる岩に頭をぶつけたようだ。
「気を付けろよ。何回目だ?」
「もっと心配してよ~、このままだと私の頭がたんこぶだらけになるわよ?」
「心配しているよ。いてっ!?」
俺の頭にもいくつかたんこぶができており、天井に注意しながら中腰で進む。
(今モンスターが現れたら厄介だな……まともに戦えるのか?)
こんな狭い場所でモンスターと出会ったら逃げることも難しい。
俺はいつでも対応できるように剣の柄に手をかけておくことにした。
バサッバサッバサッバサッ……
羽ばたくような音が断続的に聞こえてくる。
「トールさん」
「シッ……気付かれる……」
小声で話しかけてくるマリンを黙らせて、音の正体について潜考する。
(鉱山ダンジョンのこの階層でこの音は……グレイバットか! 一匹であってくれよ……)
グレイバットはコウモリ型のモンスターで、体長30cmくらいしかない。
レベルも低く、攻撃力も防御力も低いので初心者でも倒せる相手である。
(こんな狭い場所で数が多いと面倒だ……羽音の数はそんなに多くないけど……)
耳を澄ましながら周囲を見回すと、暗闇に紛れて無数の赤い目が光っているのがわかった。
飛んでいるものだけではなく、洞窟の天井や側面に張り付いている個体もいる。
(10……20……25……30匹以上はいそうだな……)
この数を相手にするのは困難なので、なるべく戦いを避けたいところだ。
(とりあえず無視したい……今は探索することが目的だからな……)
どうするものかと立ち止まっていると、後ろから服を引っ張られた。
振り返るとそこには笑顔のマリンがいる。
「ねえ、あれ見て」
マリンが小声でそう言って指さした先には大きな穴が開いていた。
穴は直径2メートルほどで、奥は真っ暗で何も見えない。
しかし、かすかに風が流れているような気がする。
「……あれは?」
「きっと奥に続く道よ。ここで立ち止まっているよりは良いわ」
確かにその通りだ。
このままここにいても状況は好転しないだろう。
それに、先ほどから羽音もどんどん大きくなっている気がする。
「わかった……行こう」
俺たちは意を決してその真っ暗な穴の中へ足を踏み入れようとした。
ゴンッ!
穴は微妙に狭くなっており、俺とマリンのつま先が岩に引っかかり、音を立ててしまった。
バサッバサッバサッバサッ!!
振り返ると数匹のグレイバッドがこちらへ向かってくる。
「マリン! 気付かれた! 支援を頼む!!」
「わかってるわよ!!!」
俺が声をかけると、マリンはすぐに支援スキルを俺へ唱えてくれた。
このまま襲ってくるグレイバッドをひたすらに切り続けるしかない。
「フッ!!」
剣を鞘から抜いて構えると、先頭にいるグレイバットへ向けて突き刺す。
グサァ!
刃先が柔らかい肉を貫く感触が手に伝わってくる。
「ギギィ!?」
攻撃を受けたグレイバットは剣に突き刺さり、ピクピクと痙攣していた。
そのままグレイバットを剣から抜くために剣を振り払う。
ドシャッ!!
地面に叩きつけられたグレイバットは動かなくなった。
(グレイバットの能力は!?)
俺は二匹目と戦う前にグレイバットのステータスを覗き込む。
◆
【名 前】グレイバット
【種 族】動物族
【レベル】6
【基礎能力値】
体 力:250/250
魔 力:10/10
筋 力:9
生命力:8
敏捷性:15
器用さ:11
知 力:5
幸 運:1
スキル:吸血Lv1《与えたダメージの1%体力が回復する》
討伐者:トール
《能力値をステータスに変換しますか?》
◆
視界にグレイバッドのステータスが飛び込んでくる。
(よし! 変換だ!)
俺はすぐさまグレイバットのステータスを能力へ変換した。
◆
【名前】トール
【種族】人間族
【年齢】18歳
【レベル】0
【基礎能力値】
体 力:851/851
魔 力:300/300
筋 力:33+12
生命力:23+10
敏捷性:26+10
器用さ:22+12
知 力:12+10
幸 運:3+10
スキル:吸血Lv1《与えたダメージの1%体力が回復する》
装備品:鉄の剣:攻撃力10(筋力+2 器用さ+2)
革の胸当て:防御力7
革の肘あて:防御力5
状 態:ブレッシング (9分31秒):全能力値上昇
エンジェルブレス (9分31秒):幸運値上昇
スピードブースト (9分31秒):移動速度上昇
マジカルアーマー (9分31秒):防御力上昇
マジックバリア (9分31秒):魔法防御力上昇
ブラインドカーテン(9分31秒):回避率上昇
◆
(スキルを覚えた!? モンスターのスキルも変換できるのか!!)
「トールさん! なんとかしてよ!! このっ! 離れなさいよ!!」
マリンが数匹のグレイバットに襲われている。
手で追い払おうとしているが、まったく離れる気配がない。
俺はステータスを詳しく視る間もなく、すぐにマリンの援護に向かった。
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