「あきらめたら、そこで試合終了だよ?焼きいもだ!」バスケ以外でも、生きていけ!

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 バスケが人気。ミツイ君も、「冷たい水部」から「バスケ部」に入部。高校に入学し、ついに、あの先生と再会し…。びっくりなラスト!

 バスケ部は、輝く。

 「バスケを、やらせてください!」

 「バスケを、したいんです!」

 日本全国の中学や高校で、バスケ部の入部希望者が増えたという。

 「スラ○ダンクの映画、良かったなあ」

 その影響も、あるだろう。

 「よう。また、きたぞ」

 やや不良な中学生男子、ミツイ君も、バスケ部が好きだった。

 ただし、バスケをしにいくのではない。

 「ヤンザイ先生に、会えるんじゃないか」

 そう思えていたから、きていたんだろう。

 ヤンザイ先生は、「臨時顧問」の男性。

 普段は、高校の先生。高校からたまにやってきて、中学生のバスケ部の面倒を見てくれていた人だ。

 なかなか会えないということは、わかっていた。

 「でも…」

 彼には、先生との出会いが忘れられず。

 彼は、「冷たい水部」というところに所属していた。

 彼の通っていた中学では、夏に、文化祭が開かれる。

 そこで活躍するのが、「冷たい水部」。

 「南極でとれた氷が溶けて生まれた冷たい水、いかがっすかあ!」

 うそ、だけど。

 売っていたのは、本当は、「冷蔵庫で冷やしただけの水道水」。

 だって彼は、不良男子。

 「あの部の人たちが売っている水って、本当は、南極の氷から生まれた水じゃないらしいよ?」

 ばれれば、終わり。

 ばれなくても、冬は、ピンチ。

 「冬は、南極の水(本当は水道水)が、まったく売れなくなる!」

 だから、冬、「冷たい水部」は、体育館で「お湯」を売っていた。 

 不良男子、だからな。

 が…。

 「君たち!何を、やっているんだ!」

 大人に怒られて、部は消滅の危機。

 「なぜだ…。なぜ、売れないんだ!もう、あきらめるしか…」

 彼がぼやいた、そんなときだった!

 「あきらめたら、そこで試合終了だよ?」

 だれかが、声をかけてきた。

 それが、バスケ部の「臨時顧問」として高校からやってきていた、ヤンザイという先生だった…。

 「中年太りな、メタボでメガネなオヤジ」

 「二重あごというのか、三重あごの、たぷたぷオヤジ」

 だれからも、そう言われて仕方のないような大人。

 さえないオヤジ、ヤンザイ先生。

 が、声をかけてもらえた彼にとっては「神様」でしかなかった。

 立ち上がった、彼。

 「ヤンザイっていう先生よ、ありがとう!俺は、一生、この恩を忘れないぜ!そうさ。あきらめたら、試合終了なんだ!」

 決心が、固まった。

 「あの先生のいる高校に、いきたい!とりあえず、今からでも、この中学校のバスケ部に入ってみようじゃないか!」

 中学生活に、やる気が出てきていた。

 高校入試も、突破!

 「よし!ヤンザイ先生の勤める高校に、入学できたぞ!」

 入学先の高校のバスケ部に、ダッシュ!

 「ヤ、ヤンザイ先生!」

 「…ん?君は…えーっと…」

 「中学時代、先生に、あたたかい言葉をかけてもらえた生徒です!」

 「あたたかい、言葉…?」

 「先生!先生は俺に、あきらめたらそこで試合終了だって、言ってくれました!」

 「そうか。私は、君にそう言ったのか…」

 「先生!」

 「良し、わかった!」

 「先生!」

 「一緒に、焼きいもを売ろう!」

 「…は?」

 「夏、とれすぎてねえ。在庫が、いっぱいなんだよ」

 「…」

 「しかし、あきらめたら、そこで試合終了だよ?」

 「…」

 「焼きいもにして、売ろう!」

 「…」

 彼は、今、あこがれの先生とともに、リアカーを引いている。

 「焼きいもは、いかがっすかあ!」

 彼の涙が、止まらない。

 「ヤンザイ先生!」

 「何かね、君?」

 「スラ○ダンクのファンに、怒られませんかね?」

 「…」

 「ちょ、先生?何でそこ、無言?」




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