カウンター・エイドリアス <彼方なる故郷>
詠称あんね
第1話
カウンター・エイドリアス
<彼方なる故郷>
聖星歴2454年
地球へセリドスが侵攻してきた
地球勢力は対抗策として『英知システム』を投入
全地球人とセリドス人との戦いが始まった
オーバーテクノロジーとの遭遇による
果てしない死闘の日々が繰り返される!
第1話<最からの雷>
天球が道しるべとして選んだ彼の地は星たちの中で最も美しかった…
白と青が広がるまんまるの姿を私は忘れない
聖星歴2398年 リア・サーキュレイ
『全自動障壁を展開!星間防御フィールドを連結しろ!』
指令執行部に怒号が轟く。管制官は復唱してターミナルのコンソールを操作した。警告音とともに機械音声が応答する。
「現時点を持って第14地区カレドを放棄します。担当者は退避してください。2時間後に爆破撤退します。」
防戦一方の全地球部隊は砦となるカレドを放棄した。これで地球への防御壁は45%を失った。セリドス軍はわずか0.4%のダメージで全地球軍のカレド星域を占領した。せめてもの悪あがきでカレドを爆破しセリドスに一矢をと思っていた。
「残念だ。ここに赴任したのは12年前だったか」
カレド地域の統括官のクセフ大佐はつぶやく。感慨にふけっている時間はないがこれから起こる悲劇を想うと心苦しかった。大事な思い出をこの手で葬り去ることになるとは…昔の自分が見たらなんと思うのだろうか。退避命令が発令したのちは最後に責任者が命令ボタンを推すことになっている。クセフは右手の下にある赤いボタンに触れてみた。わずかに震えているのはためらいなのだろうか。ふうと息を吐き、ゆっくりと手を下した。
「はじまったのですね…」
セリドス軍の母艦『アーリネ』のキャプテン室でモニターを確認する女性がいた。蒼い瞳に映るのはカレド地域の中央にある三角形の建造物だった。わずかに眉を寄せてじっと見ている。その数十秒後、白い光とともに三角形の建造物は消滅した。
「クセフ大佐…ごめんなさい」
唇をかみしめ、うつむいて声をしぼりだす。額に手を置きしばし考慮したのちモニター下のボタンを押しながらクルーに指示を出した。
「セレドを制圧後に全地球軍へ『全面降伏』の勧告メッセージを発信せよ」
これから長い戦いがはじまる。
リア・サーキュレイは目を閉じ懐かしい日々を回想する。
『あれからもう何年がたったのだろうか』
はじまりの日は穏やかな日差しが降り注ぐ10月だった。
つづく
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