第4話 冒険者登録
――冒険者ギルド・リーゼン支部
「流石に人が多いな」
入って左手には、依頼の紙が張り出されている掲示板。
右手には、長椅子やテーブルがあるあたり、待合スペースと思われる場所が。
正面には、受付カウンターがあり、窓口が6つあった。
左の2つは『登録・昇級』で、真ん中の2つは『依頼受注』、右の2つは『報酬受け取り』と上の看板で記されてるな。
俺は左の窓口に行けばいいんだな。
コウは、冒険者登録をするために左の窓口に進む。
一番左の窓口で1人の男が何かしており、その隣は空いていたので、そこで登録をすることにした。
『登録・昇級』の窓口は空いてるんだな。
「冒険者登録をしたいんだが」
「はい。冒険者登録ですね」
窓口にいた丸眼鏡をかけた女性が、着々と準備を進める。
「ステータスの開示をお願いします」
「は、はあ」
やっぱりステータスを見せないといけないのか。
「情報漏洩は今まで一切許していないので、安心して開示してください」
心を見透かすように、女性はそう言った。
コウは了承し、ステータスを見せた。
「ありがとうございます。こちら、証明書となる、『冒険者カード』です」
見せてすぐに、カードを渡された。
「これが……」
受け取ったカードには、名前と、ランクEと表記されており、右下には冒険者ギルドの印と思われるものが刻まれていた。
「このカードを提示すれば、大抵の町や国は出入りできるはずです。そして表記してあるランクですが、初めは誰でもEランクのスタートです。Dランクにはこなした依頼の数が規定量を超えればなれます。それ以上は昇級試験を受ける必要があります」
ランクねぇ。
「ランクが上がるといいことあったり?」
「受けれる依頼の難易度を上げることや、世界に名が知られるなど。様々なもの、権利を手に入れることができます」
まあ強い冒険者は何かと役に立つもんな。
「最高ランクは?」
「Sランクです。その下がAからEと順になっています」
6段階か。
俺も成長したらそのうちSランクになれるかな。
「他に質問はありますか?」
「関係ない話なんだが、甲冑に詳しい人って、この町にいたりする?」
「確か甲冑専門店があったはずです。地図を描きます。少々お待ち下さい」
女性はそう言うと、奥へ歩いていった。
俺がよっぽど余所者に見えたんだろうな。
ここまで対応してもらえるとは。
コウは待ってる間、他の冒険者を観察してみる。
やはり人によって適正があるんだな。
杖を持ってる人、槍を持ってる人もいるな。
でも甲冑を着てるの俺しかいねぇ......。
確かに冒険する上では結構不向きだよな。
甲冑専門店も、結構不況なんじゃないか?
「お待たせしました」
ふと不安がよぎると、女性が手に地図を持って帰ってきた。
「この赤い点が甲冑専門店です。他にも役立ちそうなお店は記してあります。時間があれば寄ってみて下さい」
女性が描いたであろう地図を渡された。
その地図は簡易的だが、とても分かりやすかった。
「何から何までありがとう」
地図を受け取ったコウは、女性に感謝の言葉を伝え、窓口を後にした。
思ったより早く終わったな。
あそこの長椅子にでもかけておくか。
コウは待合スペースのような場所で、アロナが来るのを待つことにした。
◇ ◇ ◇
「お待たせ~」
椅子に座って間もなく、アロナは帰ってきた。
そういえばポーション屋はそんな遠くなかったな。
コウは地図を見て確認した。
「じゃあ報告してくるね」
アロナは依頼が書いてある紙をヒラヒラさせ、右側の『報酬受け取り』の窓口に向かっていった。
多分あの紙に、依頼主からの依頼完了の印でも記されて、それをここで見せるんだろう。
窓口で報告をしてきたアロナがすぐに戻ってきた。
「薬草を届ける依頼って、報酬はどのくらいなんだ?」
コウは戻ってきたアロナにそう言うと、アロナは小さな袋を取り出した。
「この報酬は銅貨30枚だね」
袋の中を見ると、銅貨が30枚入っていた。
「これは世界で共通の通貨なのか?」
「そうだね。一番下が銅貨。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚って感じだよ」
「なるほど。じゃあ銅貨30枚の依頼ってことは」
「全然だね。ランクEの依頼だし」
そういうことになるよな。
簡単な依頼程報酬を安い。
「だけど冒険者ランクを上げてくなら、こういう依頼をこなしていくしかないのか」
「そういうことっ。私も最近Dランクになったばっかだし」
アロナは袋をしまうと、自身の冒険者カードを見せてきた。
そこには確かに、ランクDと記されていた。
「じゃあ俺もそういう依頼からこなしていかないとか」
「そうだね。レベル上げにも素材集めの為にもなるし、冒険者は必ず通る道だよ。勇者様だってそうだったし」
「勇者様?」
コウは、”勇者"という言葉に引っかかった。
「勇者様はね、大昔にこの世界を支配しようとしたモンスターの王、"魔王"を倒したんだって。その勇者様も、最初はEランクでコツコツ依頼をこなしていたとか!」
作られた話のような気もしなくはないが、一応覚えておくか。
「それでこの後どうするの? 簡単な依頼だったら、日没までにはギリギリ達成できるかもだけど……」
「いや、今日はこの町の甲冑専門店に行こうと思うんだ」
コウは、アロナに先程貰った地図を見せた。
「このお店か~。人気のないところにあるから私もよく知らないんだよね」
ますます不安になってきた。
その店大丈夫なんだろうな。
その後、アロナもその店に同行したいと言ってきたので、2人でその甲冑専門店に向かうことにした。
◇ ◇ ◇
――リーゼンの町・甲冑専門店
「着いた……」
「ね、ねぇ……本当にここで合ってる?」
アロナが疑うのも当然だ。
周りから人の気配を感じない場所に、ポツンと建っているボロい店。
きっとこの店が、甲冑専門店なのだろう。
「入ってみよう……」
「う、うんっ」
コウは意を決してドアノブを握る。
アロナはコウの背後に隠れている。
――ギギギッ。
軋む音を立て、扉が開いた。
「誰もいない……」
見当たす限り、様々な甲冑が飾ってあった。
「......邪魔するぞ」
コウは右足を前に、店に踏み込んだ。
「――うおっ!?」
突然、入ってすぐに飾ってあった甲冑が、剣を引き抜き襲い掛かってきた。
「ガアアッ!」
振り上げた剣は、予想以上の速さで降り注いできた。
避けられなっ――。
「危ないっ!」
コウの後ろに隠れていたアロナが、コウを後ろへ引っ張った。
「がっ……」
間一髪、アロナのおかげで剣を躱せたコウは、2人共々店の外で尻もちをついた。
「た、助かったアロナ。ありがとう」
「ううん。それよりあれって……」
2人が店の中へ目をやると、甲冑は再び元の場所に戻り、動かなくなった。
「分からない……。防犯の為か、もしかしたら……」
「アレを倒さないと入店できない……とか?」
2人は立ち上がって、甲冑をよく観察する。
両肩がやけに大きいな。
多分あの剣を振る速さの元はあそこだろう。
「やるしかないか……!」
コウは剣を引き抜き、戦闘態勢に入った。
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