第21話 結婚式とその後しばらくの間はよかったのに………

「グレゴノール殿下、わたしの想いを受け止めていただきまして、ありがとうございます。グレゴノール殿下、好きです。愛しています」


 わたしは涙声になりながらそう言った。


「ありがとう。わたしはレデシアーヌさんのこと幸せにする」


「こちらこそどうもありがとうございます。わたしもグレゴノール殿下のことを幸せにしたいと思っています」


 グレゴノール殿下はわたしを抱きしめる。


「遅くなってごめん」


「わたしこそ催促して申し訳ありません」


 唇と唇を重ね合うわたしたち。


 そして、二人だけの世界に入っていく。


 今までない幸せをわたしは味わっていた。




 この後、話はどんどん進み、十一月に結婚式が行われた。


 財政難の中なので、それほど大きな規模のものにすることはできなかった。


 それでも国王陛下と王妃殿下を中心とした王室の方々や、貴族たち、そして平民の代表がわわたしたちを祝ってくれた。


 その中にはノディナーヌさんもいて、


「レデシアーヌさん、おめでとう」


 と喜んでくれた。


 ありがたいことだ。


 グレゴノール殿下と誓いのキスをした時は、涙が出るほどうれしかった。


 これで、やっと、グレゴノール殿下の妃になれる。


 わたしは幸せに包まれていた。




 結婚式が終わり、グレゴノール殿下とわたしは正式な夫婦になった。


 わたしは王宮に移り、部屋を与えられた。


 もうキュヴィシャルデ公爵家からいちいち通う必要はない。


 毎日、大好きなグレゴノール殿下と一緒の寝室で寝ることができる。


 二人で一緒に住むということがこれほど幸せなことだとは思っていなかった。


 いくら今までグレゴノール殿下の婚約者だったとは言っても、わたしたちは別々に住んでいたので、どうしても心理的距離があった。


 それがもう今はない。


 新婚旅行は、財政悪化の影響で、この王宮から比較的近い景勝地だった。


 グレゴノール殿下はもう少し遠くの景勝地に行きたかったようで、少し残念だと言っていたのだけれど、わたしとしてはグレゴノール殿下と旅行ができるだけでも十分満足だった。


 結婚式が終わった翌日にわたしたちは出発した。


 ちょうど紅葉が見ごろの季節だったので、一週間の間、王室所有の別荘に泊まって、存分に楽しむことができた。


 幸せな時間を過ごすことができた。


 新婚旅行から帰ってきた後のグレゴノール殿下は、仕事により励むようになった。


 実績を順調に積み上げていく。


 順風満帆な日々が続き、これなら子供もできて、より一層幸せになっていけそうだと思っていたのだけれど……。


 結婚してから半年もまだ経たない三月。


 この頃から、グレゴノール殿下と二人だけの世界に入っていく回数が減り始めた。


 それまでは、お互いの体調が整わない時以外は、ほぼ毎日に近いぐらい入っていた。


 それが、週一回になっていく。


 理由は、


「仕事で疲れているから」


 というものだった。


 グレゴノール殿下の評判はどんどん高くなってきていた。


「増税をせずに財政赤字を縮小していく」


 という政策が、王国民の支持を受けていることが大きい。


 プロジェクトチームで立案した対策は実行に移され始めている。


 しかし、効果という面では、まだまだこれからというところ。


 グレゴノール殿下がそれだけ重い課題を背負って大変だというのは、理解できる。


 わたしはグレゴノール殿下の為、王室の料理人と協力し、疲れの回復がし易いと言われる料理を出すなどの工夫をして、少しでも役に立とうと努力をした。


 グレゴノール殿下の方も、


「ありがとう」


 と言ってわたしのことをねぎらってくれていた。


 ただ、もしかすると、グレゴノール殿下とは幼い頃から一緒なので、わたしにだんだん飽きてきているのでは?


 心の中では、そういう思いも湧き出し始めていた。


 というのも、週一回になった二人だけの世界でも、少し入っただけで終わってしまうことが、だんだん増えていたからだ。

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