第33話 Bランクエリアに入るため
「Cランク攻略おめでと~」
「おめでとうございます!」
「ありがとう!」
次の日、雫月のCランクダンジョンの攻略をお祝いしていた。
流石の雫月も嬉しそうにしている。
「放送をずっと見てましたが、あのレーダーコンドルとの戦いは熱くなりました!」
お祝いにかけつけてきた由香里が興奮したように話す。
「ロックプリン……でしたっけ? あの子の良さがよく出てましたね」
そのロックプリンは、陽花に封印を解かれ、ツキヨウと戯れている。
「怪我しないようにね」
戯れているとはすなわち、戦っているということで……
まぁ、お互い戦闘スタイルが違いすぎて攻撃の意味がなしていないが……
「そういえば、あの子名前は付けないの?」
「あ、そうですね、考えてはいて……一応ミルキーにしようかなって」
マッドプリン時代から考えていた名前で、見た目の白いプリンから連想してそう付けた。
「いいですね!」
「うん! 決定!」
マッドプリン改め、ミルキー。
今後もお世話になることは間違いない。
「それで、次はBランクでしたっけ?」
「そうですね。配信としてBランクに挑んだほうが盛り上がりそうですし」
正直、これ以上Cランクエリアには通常の手段では撮れ高は見込めないというという切実な事情もあったりする。
しかし、雫月はBランクエリアにはまだ入れない。
「Bランク以上のエリアに入るためには仲間が必要なんですよね……」
以前陽花と話していた通り、Bランク以上のエリアに一人で入ることが禁じられている。
そのため、仲間がいないといけないのだが。
「うーん、私はまだCランクエリアを全部をクリアしてないですし……」
「ですよね……由香里さんなら色々と事情も知っているので安心できるのですが……」
陽花という存在がある以上、仲間選びには慎重にならざるを得ない。
「普通Bランクどころか、Cランクからパーティを組んでますからね……」
そもそも、Cランクをソロで攻略という時点でハードルが高いのだ。
当然、普通の冒険者はCランクを挑むパーティでそのままBランクに挑んでいく。
「一応3年生のトップ組はBランクに挑めるだけのレベルではあるはずですが……」
現在アカデミーの2年生は雫月がトップ。
やっとBランクに挑めるようになったというレベルで、これは2年生ではダントツで一番になる。
3年生でもBランクに挑めるのはわずか1パーティしかいない。
「流石にそこに入らせてもらうのは厳しいですね……」
完全に固まってしまっているパーティに後から入るのは難しい。
そうなると、野良で募集するということになるのだが……
「配信をしているというのを受け入れてくれる人でないと……」
当然、配信を嫌がる人だっている。
自分の能力を公開するようなものだ、隠しておきたいというのも頷ける。
「パーティを組んでなくて、配信にも寛容で、おまけに口も固くて余計な詮索しない……」
「かなりハードルが高いですね……」
探せばいないことはないだろうが、どれだけ時間がかかるかわかったものではない。
二人して頭を悩ませてしまう。
ちなみに陽花は耐えられなくなっていつの間にかモンスターの戯れに混ざっている。
まぁ、そういうことだ。
「雫月先輩にBランクに入れる知り合いとかいないんですか?」
「一応、いないことはないけど、パーティに入っているはずなんですよ」
その人物は、学校の3年生で雫月の先輩にあたる人物。
つまり、学校でもトップ組の一人だ。
「へぇ、どなたですか?」
「華鳥(はなどり)先輩って方なんだけど、一応子供の頃に少しだけ交流があって」
華鳥家は日本の旧家の一つで、元々ダンジョン島で大きな力を持っていた家だ。
雫月とは幼馴染とまでは言わないけれど、子供の頃は親の関係もあって親しくしていた。
学校でも出会ったら挨拶するくらいは仲なのだが、最近は会えていない。
「えっ? 華鳥先輩?」
由香里も当然その名前には聞き覚えがあった。
しかし……
「華鳥先輩……ダンジョンには潜れなくなったって聞いたんですが」
「えっ!?」
由香里の言葉に雫月は驚いた。
最近会えていなかったのは、きっと忙しくダンジョンを攻略しているのだろうと思っていたのだ。
「それで組んでいたパーティもやめたって話でしたけど」
「本当に!?」
パーティをやめるというのは相当なことがあったはず。
いったいどうして?
「先日のダンジョン攻略で3年に会ったので聞いてみたんですが、なんかウェアできなくなったとか」
「まさか!」
ウェアしていない状態でダンジョンに潜ることは禁止されている。
それはすなわち、冒険者としての資格も失ったことに等しい。
「元パーティメンバーも原因不明と言っているらしいですよ」
お世話になった先輩に一体何が……
「華鳥先輩……会いに行ってみようかしら」
雫月は後悔していた。
自分のことで大変だったのは確かだけれど、まさか知り合いがそんなことになっていたなんて。
「ウェアできなくなったのを解決出来たら一緒にパーティ組んでくれるかもしれないですし、いいかもですね」
「えっ、いや、そこまでは考えていませんでしたけど」
そもそも、そんな問題を自分で解決できるなんて雫月は思っていない。
「確かに、私たちでは厳しいかもしれませんが……ほら、あそこにモンスターの気持ちがわかるっていう変な子がいるわけですし」
由香里が見る方向にはモンスター2体を相手取って、翻弄する陽花の姿が。
というか、あのレベルのモンスターを相手にして完全に遊んでいるのはもはやわけがわからない。
「そうですね……確かに陽花さんならあるいは……」
そんな陽花の姿を見て引き合わせて見ようと決めた雫月だった。
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