第31話 久しぶりのイレギュラーボス

フラワ~『通常のレーダーコンドルは黒に白の模様のはず! 深い青に白色の個体! 間違いなくレアです!』


 雫月は陽花のコメントを見て、身を引き締めた。

 どうやら、イレギュラーの中でもイレギュラーにぶち当たったようだ。


『ボスのイレギュラーとかマジで!?』

『そんなのある……そういえば、マッスルゴブリンもイレギュラーで出てたな!』

『いやいや、それとはまた別でしょ!』

『Cランク最強のモンスターのイレギュラーだぞ!』


 そう、相手はもともCランクエリアの中では最強と言われていたモンスター。

 そのレアモンスターなのだ。

 いくら雫月と言えど……


フラワ~『レアです! 弱らせて捕まえましょう!』


「フラワ~さんならそう言うと思いましたよ……」


 まだ出会って短いが陽花のことはなんとなくわかってきている。

 雫月としては、陽花がもしもここで撤退を提案するようならそれに従うつもりでいた。

 しかし、そうでは無いということは。


「私は勝てる!」


 勝つというか、捕まえるだが。まぁ、同じようなものとしておこう。


『捕まえるの!? ボスを!?』

『見たいけど……危険なことはしないでほしい!』

『流石の鬼畜花は本当に鬼畜花だった!』

『いっそもう見たいよ!』


 視聴者の声は期待と不安が半々だ。

 雫月は覚悟を決めて、レーダーコンドルに向かって手を構え。


「ストーンバレット!」


 石を射出した。

 射出された石は、嵐にも負けずに突き進みレーダーコンドルに当たる……直前で避けられた。


「流石……避けられましたか」


 これまでどんな敵も一撃で倒してきたストーンバレットを避けられるとは思わず、雫月は驚いた。

 これは厳しい戦いになりそうだなぁと。


「ガァアアアア!!」


 攻撃されたことで完全に敵対したレーダーコンドルは雫月をにらみ、翼をはためかせた。


「うわっ!」


 風の勢いが増して、雫月に強烈な雨が襲う。

 目を開けているのも辛いレベルだ。


「こんなことならゴーグルでも用意してくるんだった」


 そんな反省をする雫月。余裕があるのかないのか……

 必死で目を開けながらレーダーコンドルを狙ってストーンバレットを放つがやはり避けられてしまう。


「もう少し近寄ってこないと厳しそう」


 いかんせん、距離が離れすぎているのだ。

 しかし、レーダーコンドルは降りてくることをしない。


「ガァアアアア!!」


 再び、レーダーコンドルが大声をあげ、翼を動かす。

 しかし、今度は先程とは違う現象が起こった。


コツッ


 雫月の身体に、何かが当たる。

 これまでの雨とは違う明らかな固形粒が当たった感覚。


「まさか……雹だったりします?」


 雫月は小さな氷の欠片がその身に当たっているのを確認した。


『雹!?』

『そんな攻撃してきたっけ!?』

『いや、見たこと無い! 多分イレギュラー特有の行動だ!』

『流石にルナちゃんと言えど!』


 厳しい……流石に一粒や二粒では雫月の岩の防御を剥がすことはできないが、大量の雹にいつかは防御が破壊されることは想像に容易い。


フラワ~『こんな時の防壁!』


 陽花の言葉に我に返った雫月は地面に手を着く。


「ロックウォール!」


 雫月の言葉に合わせて、地面から岩がせり上がってきた。

 それは雫月を雹から守るようにせり立った。


『なんぞ!?』

『防壁! そうか! 岩だもんな!』

『戦闘前に言ってた考えてることってこれのことか!』


 ロックプリンが使える技の一つ。

 岩の防壁を作り上げるロックウォールだ。

 これにより、雫月の身は雹から守られた。


 レーダーコンドルも突然出来上がった防壁に驚いたのか、翼を動かすのをやめた。

 どうやら翼の動きに合わせて技を発動させているらしい。


「隙あり! ストーンバレット!」


 そんな一瞬の隙をついて、ストーンバレットを放つ。

 動きを止めていたレーダーコンドルは飛んできた石をギリギリのところで躱す。

 いや、躱しきれずに足を貫いた。


「ゲェエエ!」


 痛みに怒ったような大声を上げる。

 そうして、再び翼を動かし始めた。

 今度はバサバサと大きくゆっくりと動かしている。


「うっそ!」


 それに合わせて、大きな雹が作られていくのが見えた。


『そんなこともできるの!?』

『やばくね!? あれどんだけの重さあるのよ!?』

『避けてぇええええ』


 言われなくても!

 射出された巨大な塊は先程の雹のようなスピードはなく、避けることができた。


バリンッ!


 先程まで雫月が立っていた地点に巨大な氷塊が突き刺さる。

 立てた防壁を貫いている。


 それを見て、すぐさま雫月は防壁を復活させようと地面に手を……


「速っ!」


 その時には、すぐそこにレーダーコンドルの鋭い嘴が迫っていた。

 一直線に雫月の身体を貫こうとするその姿はまるで大きな矢のようだ。


「ぐっ!」


 雫月は地面に手をつこうとしたその勢いのまま転がりそれをギリギリのところで避けた。

 姿勢を立て直す、その間にもレーダーコンドルはすぐにUターンして雫月に再度迫ろうとしている。

 しかし、そのスピードのせいか、Uターンするにも結構な距離が空いた。

 それは、雫月が技を準備するのには十分な時間だった。


「ストーンアロー!」


 雫月から石が射出される、しかし、今度の石は丸形ではない。

 鋭い矢の形をしていて、それでいて先程よりも速い。

 雫月に向かって迫っていたレーダーコンドルはそれを避けるのには間に合わなかった。


「グェエエエエ!」


 石の矢はレーダーコンドルの翼を貫いた。

 翼に穴が空いたことでレーダーコンドルは体制を崩し、地面に不時着する。


 ズザザザと地面を擦るレーダーコンドル、全身傷だらけで立ち上がるのもやっというというところだ。


「封印!」


 そこに近づいた雫月がソウルストーンを押し付ける。

 光となってソウルストーンに吸収することに成功した。


「はぁ……はぁ……なんとか…‥なりました!」


 思わず喚起の叫びと共に、カメラに向かってソウルストーンを見せつけた。


『すげぇえええええ!』

『まじで捕まえちゃったよ!』

『凄いバトルだった!』

『ルナちゃん最強!』


 視聴者もその姿を称え、喜ぶ。

 何より喜んだのは……


フラワ~『封印ありがとう! あ、身体は大丈夫? 怪我してないよね?』


 雫月の勝利を一番に願っていた陽花だった。

 戦いのことよりも、無事に封印できたことの方が嬉しそうではあるが……

 一応本人のための名誉のために言っておくと、あのくらいのレベルなら負けることはないと信じていたからである。

 考えてみれば、傷ひとつなく勝っているのでその推察は正しかったわけであるが……


 ともかく、無事に勝利した雫月は喜びと共に、ダンジョンから脱出するのだった。


----

本日で2予定していた話投稿は最後になります。

改めまして混乱させましたことをお詫び申し上げます。


というつもりだったのですが、この際いけるところまで2話投稿続けてやろうというモチベーションで書き溜めまして、ある程度ストック溜めましたので、できる限り2話投稿を続けることにします。

今の感じですと、多分年末年始の週(1月8日)くらいまではいける予定ですが、またストック溜まったら報告いたします。


ここまで読んでくださった方、お詫びは受け取ったという方、続き頑張れという方、星、フォロー、ハート等々是非ともよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る