第20話 放送の反省会
配信を終えた次の日、雫月はまたしても陽花の家に来ていた。
「それでは! ルナルナチャンネル反省会を始めます!」
「わ~わ~」
由香里が宣言をして、陽花がはしゃぐ。
そして肝心の雫月は……
「……なんで由香里さんがいるんです?」
今の状況に疑問を抱いていた!
「そりゃ、先輩! 私は名誉リスナーですから!」
「いつの間に島村さんは名誉リスナーになったんですか!?」
「そりゃ、バズる前からずっと追ってましたからね!」
「ほんとにですか!?」
「まぁ、嘘ですけど」
「嘘!?」
雫月の反応に由香里はケタケタと楽しそうに笑う。
「まぁ、冗談はほどほどにして、話を先に進めましょうよ」
「島村さんが言うことではないと思いますけど……というか、島村さん学校にいる時とキャラ違くないですか?」
学校での由香里は1年でトップの実力を持つ優等生だ。
こんな冗談を言うような人間ではなかったはずだが。
「ここは私のホームですから!」
「由香里ちゃんもこの家に住んでるんですよ」
「……そういえばお母さんがメイド長さんなんでしたっけ? 先日お会いしましたよ」
「お母さんに会ったんですか? それはそれは親子ともどもよろしくお願いします」
後輩の母親をよろしくと言われてもと一瞬戸惑った雫月だったが深く考えないことにした。
「えっと、それで前回の放送ですけど……」
雫月は昨日のことを思い出しながら話す。
「陽花さんの協力もあり、かなり盛り上がりました。チャンネル登録者数もアーカイブの再生数も伸びに伸びてます!」
雫月は二人に自分のチャンネルを見せる。
そこに表示されている数字は、確かに先日までとは明らかに伸び方が変わっている。
「一番盛り上がったところは、やっぱりボスのRTAですかね? コメントでも触れてる数が多いですね」
「ボスがレアだったら捕まえてもらおうと思ってたのにな~」
「そのあたりは、始めから決めていましたからね。道中でも結局最初に出たモンスターだけですし、やっぱりそうそうレアなんて出ませんよ」
「そういえばあのレアの子!」
その言葉を聞いて陽花は思い出した。
「マッドプリンですね。もちろん、持ってきてますが……」
「やった!」
マッドプリンは決して強いモンスターではない。
しかし、陽花に取っては強さは重要ではないのだ。
ソウルストーンを受け取った陽花は嬉しそうにソウルストーンに頬ずりをしている。
「それじゃあ早速……」
いつものように封印を解いてモンスターと戯れようと、椅子から立ち上がる陽花であったが……
「ちょい待ち陽花! もうちょい反省会してからにしよう」
「あ、ごめんごめん」
由香里の言葉で反省会の最中だったことを思い出して再び椅子に座った。
「それじゃあ、反省会の続きをしましょう。先輩は何か気になったこととかありますか?」
「そうですね……特には……あ、気になったことがありました」
「なんですか?」
「視聴者さんのコメントにも合った通り、弱すぎると捕まえにくいというのが気になりました。今回はプリン系のモンスターだったのでやりやすかったのですが、それ以外だと倒してしまいそうで……」
プリン系のモンスターはコアにさえ攻撃を加えなければ倒すことはない。
しかし、他のモンスターは普通に攻撃をするとダメージを受けて倒れてしまうのだ。
「確かに! 今の先輩だとレアモンスターが出ても捕まえる間もなく倒しちゃう!?」
陽花はそれを聞いてショックを受けた。
せっかくレアモンスターが出てきても捕まえられない可能性があるのだ。
「一応、弱らせなくても捕まえられる可能性はありますが……確率が非常に低いはずです」
「先輩の言う通りですね。基本は弱らせてからソウルストーンに封印っていう手順です」
雫月の言葉に由香里も同意する。
「由々しき事態だよ!」
陽花が大仰に天を仰ぐ。
「今の雫月先輩であれば、Cランクの道中のほとんどののモンスターは簡単に倒せそうですね」
「流石にそれは……とは言えないですね、実際マッスルゴブリンは一撃でしたし……」
強すぎるゆえの、なんとも贅沢な悩みである。
うーむと3人で悩むがいいアイデアが浮かばない。
「そういえば、陽花さんはお父様やお母様からソウルストーンを受け取ってたんですよね? それはどうしたんですか?」
陽花は父と母からモンスターを捕獲したソウルストーンを受け取っている。
日本でも有数の冒険者でもある二人は、雫月よりも強いはずであり、どうやって捕まえているのか聞ければと思ったのだが。
「う~ん、わかんない。陽花はパパとママからモンスターを受け取ってただけだから……」
「私もわかりませんね。聞こうにも旦那さまも奥様も依頼で出ていますからね……ついでにお母さんも」
生憎と聞ける相手は出かけてしまっている。
これはよくあることで、今回は2週間ほど不在にする予定となっている。
「うーん、それまでは出てきてもスルーするしかないですかね」
「え~……でもでも……う~ん……あっ!」
雫月の諦めの言葉を聞いて考え込んだ陽花が突然何かをひらめいた。
「もっとソウルストーンに詳しい人に聞けばいいんだよ!」
ソウルストーンは一般的に売られているものであり、つまり作っている人間がいるのだ。
「あ、あー……」
「……それはそうかもですが、そんな人とコンタクト取れるのですか?」
「大丈夫、任せて!」
陽花は自身を持って胸を張った。
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