異世界トーキング・ブルース
ぬかてぃ、
繁華街、某ギルドにて 1
「一寸前なら覚えちゃいるが、一年前だとちと分からねえなあ。
お前さんも見りゃあ分かるだろうがここは多くの奴が仕事を探しに来る。戦を求めるやつがいりゃ、ちょっとした部屋の掃除までなんでもござれってやつだ。だから来るやつも頼むやつも千差万別。軍から主婦から、誰もが依頼を出し、受ける。ギルドってのは諍いや争い事ばかりやってるってわけじゃあねえのさ。
髪の長い黒髪だっつってもねえ。ここに来るのは人間だけじゃあねえのさ。耳長族や人豚族、魚人族に竜人族、妖精。誰かの手が必要なら誰だってやってくる場所なんだ。
あそこの二人組をみてみろ。人豚族の男と耳長族の女。あいつら夫婦なんだがな、ここで出会ったのよ。古い話すりゃ耳長族と人豚族なんかお互いが目の敵にしていたってくらい仲が悪いってえ話なのに、二人で仕事したからってんであれだ。仕事も夜も相性ばっちりだってよ。
まあ、お互い自分の親には間違っても結婚相手の話は出来ねえってんで仕事以外ではここで専ら酒飲んでるが、そんな常識では考えられねえってことが起こる場所なんだよ。ここってのはな。
だからお前さんの探してるっていう『ヨーコ』だっけか。珍しい名前かもしれねえけど3日後には想像もつかねえ事が起きるここでは別に珍しい奴ってわけじゃあねえのさ。
シナイ、竹。なんだそりゃ。木製の剣を持ってるだって。
お前さん、話聞いてたか。ここにゃ料理に使う鍋蓋を片手にして、それを商売道具なんて豪語して飛び込んでくるやつなんかざらにいるんだよ。それが商売道具になるかどうかは別としてな。
そんな物珍しいものを持って来たっていってもな、一寸前ならまだ覚えてもいるだろうがね。一年以上も前なんて言われても覚えているわけねえんだ。
お前さんが言うには確かに物珍しい格好かもしれねえけどな。ここは人間語が話せて、自分の名前が書けて二足歩行なら誰だって来るんだ。なんなら二足歩行じゃねえやつだってくる。
そこで呑んだくれてる死人族を妖精が口説こうとしている場所なんだ。お前さんの言う特徴なんか特徴に入りもしねえんだよ。
悪いが他をあたってくんな。
もしかしたらここで飲んでるやつの一人や二人に聞きゃなんか分かるかもしれねえがな。少なくとも俺にゃ分かんねえよ。
で、さ
アンタ、その子のなんなのさ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます