14🏠ルナの試練

オカン🐷

第1話 幻のクリームパン

「ルナちゃん、幻のクリームパンってこれだろう?」

「ヨッシー、ありがとう」


 売店に早く行かないとすぐに売り切れてしまうkuwanyanの幻のクリームパン。

 実はさっきタナベ君に買って来てもらって、今日2個目。

 ルナは透明の袋を開け、半分に割り、それをもう半分に割った。


「ヨッシー、あーん」


 ヨッシーの口に入れると、もう半分を食べた。


「タナベくん」

「なに!」


 タナベはまたパシらされると思ったのか、少しビクついてる。


「タナベ君もあーん」

「えっ、おれはいいよ」

「まだ食べるのかよって目で、ルナのこと見てたわよね。いつも買って来てもらうばかりで悪いから。それに、タナベ君、手も洗ってないでしょ。だから、あーん」


 身体の大きなヨッシーが一歩前に出た。


「せっかくのルナちゃんの好意を無にするのか」


 不承不承という感じで口を開けた田辺。でも、ゆでだこみたいに顔を赤くし、耳まで真っ赤になっていた。

 田辺にしてみたら、これも一種のお仕置きだった。


「美味しいけど甘いな。あっ、おれ部室に行かなきゃいけないんだった」

「ヨッシー、あちこちのクラブから引っ張りだこだね」

「うん、いろいろやってみて、合うものを探しているんだ。じゃあ、行くね」

「うん、ありがと」


 ルナがヨッシーに手を振っていると、


「ああやって男を手玉に取るのよね」


 と言うのが聞こえた。

 声のした方を見ると、教室の片隅で4、5人の女子グループが固まっていた。


「タナベ君、手玉ってなあに?」

「気にすることないよ。あのヨッシーと仲がいいのか?」

「うん、幼馴染でルナのヒーローなの。その話聞きたい?」

「昼休憩終わってしまうから、また今度訊かせてもらうわ。それとも話を聞かなかったら懲罰もの?」

「タナベ君たらオーバーね。じゃあ、また今度ゆっくりとね」


 田辺は苦笑いを浮かべながら自分の席に戻って行った。


 ヨッシーはスポーツ万能で背も高く、身体もがっしりとしているので、バレー部からも、バスケット部からも、勧誘合戦が続いている。

 どちらにも決められないので、1日おきに交互にクラブに顔を出しているようだ。


「ルナちゃん、私も幻のクリームパン食べてみたい」

「わたしも」

「じゃあ、半分こね」


 ルナは残りのクリームパンを2つにちぎると、それぞれの口に入れた。


「わあ、美味しい」

「本当、幻と言われるだけある。クリームが滑らか」

「 ユイ、幻のパンって、もう一つあるの知ってた?」

「知らない」

「わかった、焼きそばパン」


 ルナが応えたところで予鈴が鳴った。







🏠 結音(Yuine)さんお名前をお借りしました。

作品 『でこぼこミステリ』


https://kakuyomu.jp/works/16817330666592948247



🏠kuwanyanさん、いつもありがとうございます!









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