第18話
その後、洋館の中を歩き回り、水樹たちは、地下の鍵付きの倉庫に辿り着いた。其処は入り口よりも遥かに厳重な鍵で、陽希ですら、開けるのに時間を要した。だが、「時間を要した」、というだけで、開いたのだ。また、こういう事情もある。鍵は既に誰かによって、何度か強引に開けられたらしく、緩くなっていた――
其処には、三本の猟銃が保管されていた。壁にかかっているそれに、慎重に近づくと、まず水樹は顔を寄せて観察した。一丁だけ、埃のほとんどついていない猟銃がある。それらを写真に収めた後、其処へ知り合いの警察官を手配するため、理人が倉庫を後にした。
そこで、理人は襲われた。
倉庫の出入口のところで、急に黒い影が飛び掛かって来たかと思うと、理人は危うく頭に麻袋を被せられそうになった。その動きは理人の目には見えていたが、動くことはできなかった。恐ろしい目に遭うと、声も出なければ体も動かなくなってしまうタイプの人間はいる。理人はいつもそうであった。目を閉じることすらも忘れ、そして、気付くと息が出来なくなっている。
しかし、すぐに、その横からもう一つの影が、理人の前に立ちふさがった。両手を広げた背面の、少し猫背のシルエットは、間違いなく、
「陽希」
思わず理人は名前を呼んだ。洋館の中の僅かな光を跳ね返すような明るい色の髪は、この時は天使のように見えた。
それでも、理人を襲おうとした犯人はめげずに、陽希に飛び掛かろうとする。しかし、水樹が横から、普段突いている杖で、首の後ろを殴りつけた。
「今度は、助けられましたね」
水樹は誇らしそうに笑った。倒れ込んだ犯人に跨るようにして、陽希が取り押さえる。髪を掴んで頭を上げさせると、犯人の顔を拝むことが出来た。
翔であった。
「やっと此処まで来たんだ。どんな気持ちで俺が、ずっとどれだけ我慢して、やって来たと思ってるんだ!」
翔の、論理的に破綻した叫びが、悲痛に響いていた。
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