第15話

翌週、午前九時に水樹と陽希は病院にいた。退院する理人の迎えに来たのだ。水樹はペパーミントグリーンのテーラードコートを、陽希は意味不明な英語が書かれたピンク色のパーカーを着て、中に入り、理人の支払いを代わりに済ませて――の、前に。

実は、もう一つの大きな目的を、先に二人でこなそうとしていた。

比較的簡単に出入りできるのは、軽度な患者が、通院での治療や、短期間の入院生活を送っている病棟だ。理人も其処で入院している。本日をもってそれも終わりだが。

色がくすんだ鼠色の長い廊下。元は真っ白だったのであろう、その廊下の先には、閉鎖病棟がある。その先に、今回、水樹たちが調査のために会いたい人物がいるというのは、事前に全て調査済みだ。

分かっていたとしても、潜入するのは、かなり難しい。というか、治療に専念する医療関係者や患者を騙すようなことは、絶対にしたくないというのが、水樹と陽希の統一された意思だった。

あの、施錠された病棟の中は自由に患者が動けるらしいが、中に入るにはどうしたら良いのか。

「理人が懇意になった看護師から聞いた話ですが、閉鎖病棟の患者のうち何人かは、週に一度、車椅子に乗って介助者とともに中庭で散歩をする時間があるらしい。中庭には全ての患者、その見舞いに来た人も入れます」

「俺らが話したい相手が、今日、出て来てくれればいいけど」

陽希は、目的の人物の写真を手の中で回転させて、小首を傾げた。

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