第14話
「探偵社アネモネ」に帰還すると、さっそく水樹と陽希は向かい合ってテーブルに着いて、ネットで調査を始めた。だが、陽希の顔は曇ったままである。「クッキー・ホープ」で買ってきたチョコチップクッキーを籠に持って出しても、手を付けない。
理由は分かる。陽希は、また理人が倒れないかが心配で仕方ないのだ。これは推理などではなく水樹も同じ気持ちだから伝わってくる。水樹は手を組み、その上に顎を載せて陽希を覗き込み、口を開いた。
「陽希。僕も、理人のことはとても心配です」
「じゃあ、水樹ちゃん、今回の事件が解決するまで、理人を関係個所に連れて行くのはやめようよ。何とか止めて」
「いえ。僕は、心配ですが、見守ろうと思うんです」
陽希の喉仏が動き、ぐっと息を呑む音がした。
「陽希が理人を守ろうとしているその方法も、間違いではない。それに実際今まで理人は支えられて救われてきた。それが陽希の力だと思う、尊敬します。だから、そのまま続けてあげてください。ただ、僕は――何より理人自身が変わろうとしていると感じました」
「でも、また体調を悪くしちゃったら」
「僕は理人の自力で立ち上がろうとする力を信じたい。だから、見つめ続ける。どんなに理人が転んでしまっても、相棒として傍にいようと決めているから」
陽希の手を握ったら、少し震えていた。
「勿論、陽希に対しても同じように考えていますよ」
「水樹ちゃん……」
陽希のシャムネコのような目に、涙の膜が張る。でも、それを落とさないように陽希は笑った。
「俺、アネモネで頑張って来て良かったって思ったよ!」
「そりゃあそうでしょう、僕のように優秀な探偵と出会えて陽希は幸せ――うぐぇ」
陽希が猫のように飛んで来たかと思うと、思い切り抱き締められた。苦しい。が、今日だけは、そのままさせておくことにする。
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