第11話

こういう時は、なるべくいつも通りに過ごす方が良い。

翌朝、水樹はやはりまだ少なからず動揺していたものの、自宅にいるのと変わらない手つきを意識し、コーヒーを淹れた。

水樹は砂糖とミルクをたっぷり入れてから、カップに口をつけた。

陽希は、流石にぐっすりは休めなかったのか、いつもより随分と早いであろう時刻に起きて来て、寝癖頭をもしゃもしゃと掻いている。

「おはよぉ、水樹ちゃーん」

「おはようございます、陽希。昨日はよく眠れましたか? シャワーを浴びてきたら如何でしょうか」

うん、と答える陽希に、バスタオルを渡してやった。

「ねえ、これって、もしかしなくても、俺が水樹ちゃんに前に貸してあげたやつじゃないよね?」

と、顔を赤くしながら問われて、水樹は首を傾げた。

「何を言っているんですか。それは新品のものですよ。ほら、シャンプーとか歯ブラシもちゃんと買ってきてあるでしょう。安心してください」

「理人ちゃんがいないと、どうもこういう事務用品について補充とか、気の利いたこと望めないんだよな……水樹ちゃん、しっかりしてないから」

「うるせぇな」

陽希は歯を見せて笑い、シャワー室へ向かった。

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