07:生まれて初めて
「よぉ、空、ひっさしぶり!」
「あ……」
話しかけてやる! そう決めて一週間と六日。
もう少しで二週間経つってところで空に話しかけることができた。
できるだけ明るく声をかけることを意識してみたけど寂しさを感じてる。
でも、なんでだろう。
俺が寂しがってることを空には気付かれたくなかった。
「……ひっさしぶり! じゃないでしょ。あんた、何してたのよ?」
「あれ? もしかして俺に会いたかったとか?」
「バカ。そんなんじゃないわよ!」
「またまたぁ~。モテる男ってのは辛いなぁ……」
けど分かるんだ。
顔に出てる。
俺の思い込みかもしれないけど、どうしてかは分からないけど俺のことを心配してくれてたんだなって分かるんだ。
「いやさぁ。こないだのテストですっげー悪い点とってさ。それで親にずっと勉強させられてたんだよな。ははは」
「ははは、って……。そういやあんた何歳なの?」
「ん? 俺? 十六。高一」
「げッ、タメ!?」
「へぇ~、空も同じか。これって運命かもな」
「何が運命よ。別に不思議なことでもないでしょ?」
「そうか?」
「うん、そうよ」
よくよく考えたらまぁ、そうなのかもなぁ。
あー、でも、何か共通点っつうの?
それが見つかって、ホッとしたんだ。
同じ歳ってだけだけど一つでも同じとこがあって嬉しかった。
「で、本題だけど、本当のとこはどうなんだよ?」
「ん? 本当のとこ?」
「だからァ、俺に会えて嬉しかっただろ、って言ってんの」
よし、ここですかさずスキンシップ!
空の頭を撫でて男らしさをアピールだ。
よしよし。
……。
と、思ったけど俺幽霊なんだから触れないんじゃん。
俺は出しかけた手を引っ込めた。
「……? あんた、何がしたかったの?」
「いや、別に、何も。……あ、俺、帰るわ」
「え? ちょっ……」
駄目だなぁ、俺。
何かすっげー惨めな気がする。
そうだよなぁ、俺、死んでるんだもんな。
空に見つけてもらえたことが、
こうして空と話せているこの時間が、
嬉しかったから、楽しかったから、忘れかけてた。
その時、俺は生まれて初めて"生きたい"って、そう思ったんだ。
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