皆さんと作る思考実験小説 : 現代の寓話

カラストラガラ

第1話 たとえ完璧に白くならないとしても

太郎「完璧に白くならないとしても、洗濯をしないわけにいかない」

ボブ「村上春樹を意識するなら、『完璧なスパゲティー』とかじゃないかな」


太郎「いや、ドストエフスキーの『悪霊』と、星新一と、サンデル先生の思考実験をだね」

ボブ「待て待て待て、情報量が多い。混ぜたな!」


太郎「だいたいそういうことがしたい。な?」

ボブ「また何か思いついたね? とはいえ、読解力を期待されても困るよ」


太郎「分かった……。


ドストエフスキーの『悪量』は、2世代に渡る群像劇。外国に留学している期待された若者が、満を持して登場する。人間が虚無に陥るとどうなるかを描いた作品。人間の醜さや愚かさの品揃えが豊富。救いはない。


星新一。日本SFの功労者の1人。ショートショートで有名。抽象的に描くことで、読み手の想像の余地を作った。すぐ読めて、ずっと楽しいとも言える。


サンデル先生。『これからの「正義」の話をしよう』で検索。トロッコ問題などで有名」

ボブ「急にナレーション口調になったね。『説明しよう』と言わないのかい?」

太郎「忙しかった」

ボブ「そんなもんさね」


ボブ「君が抽象、私が具象の担当かい?」

太郎「いや、そこは、知的な友情にしてくれたまえ」

ボブ「何の話だっけ?」


太郎「で、具体的にすると、例えば、志望校に手が届かないと、偏差値70出せないと、モチベーションが低下する」

ボブ「なんかそんな報道を読んだぞ? 物騒な話はお断りだ」


太郎「安心しろ。具体的なことは言わない。理想と現実の調整が下手とも言えるけど、高望みし過ぎとか現実を見ろとも言えるけど」

ボブ「見た方がいいね、現実は見て損することはない」


太郎「端的に言うと、完璧や無限と競走したと思うんだ」

ボブ「飛躍したね」

太郎「抽象度を上げたのさ」

ボブ「それで、上げてどうしたの?」


太郎「達成できるのは個別具体的な目標で、漠然とした夢や希望の段階は抽象的で、それは『完璧・無敵』みたいなものではないかな」

ボブ「また情報量が渋滞してるな。早口になって、前のめりなの自覚してる?」


太郎「熱心と表現してくれ」

ボブ「注文が多いな。で、夢や希望を具体的な目標や計画に落とし込めないことを、『完璧や無限と競走』と呼んだの?」


太郎「不可能だとすぐ伝わらない?」

ボブ「伝わったら、飛躍と指摘しない。」


太郎「友達以上恋人未満とかを例に出すべきだった?」

ボブ「それはグラデーションや線引きがどこかの話だろ。理想や完璧に類するなら、ピクマリオンを出せばどうだい?」


太郎「君がうまいこと言ってどうする」

ボブ「聞き手がオチを話すことも、メタ的でいいと思うよ」

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