第29話

「宇宙の支配者、だれだそれは」

「美葉、実葉竜也という男だ」

「実葉、あの有名な国文学者の」

十文字が一笑に付そうとした。

「そうだ」

「何をバカな、バカバカしい」

「本当だ、実葉と闘ってから千五百年が経つ」

「千五百年、いつの話だ」

「飛鳥時代、大化の改新の頃だ」

「どこで闘った」

「一条大橋の上で」

「訳が分からんな」

「なぜ、闘った」

「「あ」という言葉を守り抜くため」

「「あ」、を」

十文字が痴呆児を見つめるように

無自戒を見た。

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