第27話
「久しぶりだなあ、無自戒」
面会室で十文字は無自戒を
窓越しに見ていた。
「随分、変わったなあ、無自戒」
「アンタは」
「十文字だよ、高校で同期の」
「覚えていない」
無自戒が頭を抱えて、髪の毛を
掻きむしった。
「記憶を失ったって」
「何も覚えていない」
「いつからだ」
「わからない」
無自戒はただただ首を振り続けた。
「オレのことは、覚えているか」
「いっ、いや」
「そうか」
十文字も力なく肩を落とした。
「おまえはなあ、闇組織に追われている
人間なんだよ」
「まさか」
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