【投稿停止】双子の兄に劣等感を感じていた俺は、双子の姉に劣等感を感じていた美少女と幸せになります‼︎

穂村大樹(ほむら だいじゅ)

【双子の弟妹】

第1話 「双子なんて」

 今日は高校の入学式。


 あと五分程で入学式が始まるという状況で、俺、双川志道ふたかわしどうは、校舎裏に置かれた椅子に座って空を眺めていた。


 中学時代に一度だけ学校見学で訪れたことはあるものの、校内のマップなんてまだ頭に入っているはずもなく、テキトーに彷徨っていて見つけたのがこのベンチである。


 俺以外の生徒は入学式に参加するために体育館へ向かっているため、この周辺には俺以外誰もいない。


 中二病を拗らせて『一匹狼でいるのがかっこいい』と思っているから一人で奥まった場所にあるベンチに座っているわけではない。


 俺がこうして入学式をばっくれて一人で校舎裏のベンチに座っているのは、俺の双子の兄、双川侑志ふたかわゆうしが原因だ。


 侑志は中学時代、定期テストでは毎回学年順位一位、所属していた柔道部では県大会に出場して優勝するなど、文武両道のあまりにもできすぎた兄だった。


 その上、長身で顔もイケメンときており、俺が侑志に優っている部分なんて一つもないと言っても過言ではない。


 そんな侑志と俺は昔から何かと比べられ、その度に哀れみの目を向けられる人生を送ってきた。


 人間という生き物は、これほどまでに人を哀れむことができるのか、と感心してしまいそうなレベルで哀れみの目を向けられてきた。


 それでも俺だって最初から侑志とのバトルを諦めていたわけではなく、最初は『絶対に負けるもんか』と奮起していた。


 勉強も侑志が1時間するなら俺はその倍の2時間、部活だって侑志が2時間練習するなら俺は4時間と、ムキになって頑張っていたのだ。


 しかし、侑志は俺がしている努力の十分の一程度の努力で、俺の成果をいとも容易く超えてくる。


 何度も勝負を挑んでいるうちに『俺は絶対に侑志に勝てない』と思うようになり、今はもう完全に諦めて、戦おうとはしなくなってしまった。


 そして侑志との勝負を諦めた俺は、できるだけ目立たないようコソコソと暮らす生活を開始したのである。


 『なぜ同じ高校に入学したのか』という疑問を持つ人もいるだろう。


 なにせ俺だって侑志とは、できれば別の高校に進みたいと思っていたからな。


 そう思っていた俺だったが、両親から『家から近いから』という理由で勧められた高校に半強制的に入学させられてしまい、結局侑志と同じ高校に入学することになったというわけ。


 そして俺が懸念していた通り、侑志は学校に来た途端有名人になった。


 まずはその見た目に釣られた女子どもが群がり、それを見た男子が『女子との関係を築いていくためにはこいつとは仲良くしなければならない』と群がり、一瞬で向こう3年間人間関係には絶対に困らないであろう状況を作り上げた。


 それだけならまだ良い。


 地獄はそこから始まる。


 入学式ということもあり、侑志の周りにいる人間は様々な質問をぶつけていく。


 その中で、俺が侑志の双子の弟だということはすぐにバレてしまったのだろう。


 俺が侑志と双子だと知ったクラスの奴らは、俺の方を見て気まずそうな、同情しているような哀れみの目を向けてきたのだ。


 身長も侑志のように高くはなく、顔も普通の俺のことを見ればそんな反応にもなるだろう。

 見た目からして、あまりにも双子で違いすぎるのだから。


 それは、これまで俺が幾度となく見てきた反応だった。


 高校でもそうなることは予想していた。


 しかし、覚悟はできていなかったようで、その視線に耐えきれなくなった俺は教室を出て、こうして校内を彷徨い一人でベンチに座っているというわけである。


「はぁ……。いつもいつも持て囃されるのは侑志ばっかり……。こんなのもう死んでるも同然じゃねぇか……」


「いや、それな」


「双子なんてどっちか1人いなくなったって気付か

れないんじゃねえか--って誰だお前⁉︎」 


 俺しかいないと思って独り言を口走っていたが、俺の横には急女子生徒が現れた。


 リボンの色が青色なので、同じく新入生のようだが、なぜこんなところにいるのだろうか。


「え、双見新那ふたみにいなだけど」


「……いや名前言われてもわからんて」


 突然現れた女の子に、俺の頭は完全に混乱してしまっていた。


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