セイが気が付くとそこは病院だった。

彼が通っている総合病院の病室だ。


ふと横を見ると病衣を着た久我が椅子に座り転寝をしていた。

頭がぐらぐらと動いている。


「……久我。」


セイが呟くと久我がはっと顔を上げた。


「お、起きたか!セイ。」


久我がすぐ立ち上がりセイのそばに寄った。

一瞬セイは何が起きたか分からなかった。

だが思い出す。

久我を助けに茨島神社に行った事を。


「久我、お前は無事だったのか。」


少しばかり声が出しにくい。

久我がすぐに水差しを取りセイに水を飲ませた。


「ゆっくり飲め。お前は三日間眠っていたからな。

私は全く問題ない。

クローンドームに入れられていたから

むしろすっきりしたぐらいだ。だが……、」


その時セイが自分の右手を見る。

肘から先が無かった。


「こ、これは……、」

「鬼に握りつぶされたんだ。やむを得ず肘から先を切除した。」


セイはその時の景色を思い出す。

そしてばったりと倒れた六花も思い出した。

その額からは血が噴き出していた。


「ろ、六花は!」


思わず声が大きくなる。


「問題ない。」


セイはほっとする。

だが、


「額から血が出ていたぞ。あれで何ともないのか?」

「まあとりあえず落ち着け。命には別条はない。」


その時病室の扉が開く。

そこには白衣を着た圭悟と香澄がいた。


「圭悟、六花は。」


二人はセイのモニターを見て意識を取り戻したのに気が付いたのだろう。

セイは慌てて聞く。


「大丈夫だ。額に傷が出来たが塞いだ。」

「指が刺さっただろう。」

「指?金属の棒が当たったと聞いたが、」


圭悟の後ろで久我が首を振った。

この二人には鬼憑きは話していないのだ。

セイは黙った。


「色々と調べたが骨にも脳にも異常はなかった。

傷は残るかもしれんが、

落ち着いたら形成外科で診てもらうと良い。それより、」


圭悟はじろりとセイの右手を見た。


「お前、ついにやらかしたんだな。」

「やらかしたと言うか、その、」

「人から聞いたが六花ちゃんを守って怪我をしたらしいな。

しかし、健康な体に傷をつけやがって。」


圭悟はため息をついた。

どことなくぴりぴりとした気配が漂う。

心配げに香澄が圭悟を見た。


「その、すみません。」


セイがぼそりと言い頭を下げた。

それを見て圭悟が意外そうな顔をした。


「お前、謝ったのか。信じられん。」

「謝らないといけないかと思って……。」


急に久我が口に拳を当てて後ろを向いた。

笑いをこらえているのかもしれない。

圭悟が咳払いをした。


「いや、その、まあ、一応お前の主治医として、

腕に関しては残念だが修復不可で切断となった。

ただ再生医療で時間はかかるが肘から先は

また作ることが出来るそうだ。」

「そうか、ありがとう。それで六花はどこにいるんだ。」


セイは周りを見渡した。


「六花ちゃんはもう退院した。

しばらく様子見で通院するが……、」


圭悟がセイを覗き込んだ。


「何だか妙に素直だな。もう一度頭を調べるか。」

「いや、何ともない。俺も退院する。」


とセイがベッドから降りようとした。


「駄目だ。お前は重傷なんだぞ。出血も酷かった。

最低でも一週間は入院だ。俺の検査も受けてもらう。」

「しかし、」

「しかしも何も駄目だ。」


ぴしりと圭悟が言った。

セイは無言になった。


「まあ、セイさん、六花ちゃんには私が連絡しますから。

六花ちゃんも心配していましたよ。」


香澄がとりなすように言うとセイが少しばかり嬉しそうな顔をした。

皆が目を合わせる。


「じゃあ静かに寝ていて下さいね。」


と香澄が言い、皆が部屋の外に出た。


「……あいつどうしたんだ。」


部屋を出て圭悟が呟いた。


「妙に素直で……。」


久我も呟く。


「あ、私、六花ちゃんに連絡します。

セイさんが気が付いたら教えてくれと言われてましたから。」


と香澄が急いでナースステーションの方に歩いて行った。

残された圭悟と久我が顔を合わせた。

そして久我がくくと笑いだす。


「まあ、セイも死にかけたので思う所があるんでしょう。」

「あれほど拗ねていた男が……。そんなもんでしょうか。」


久我の顔が優しい顔になる。


「多分高山君のおかげですよ。あの子がセイを変えたんだ。」


圭悟はその言葉を聞いて複雑な気分になる。

それはどう言う事なのだろうか。




一時間もしないうちに六花はセイの病室に現れた。


「セイ!」


六花の額には大きな絆創膏が張ってあった。


「六花、額が……、」


セイが彼女を見る。

六花は額に軽く手を触れた。


「あ、何ともないとは言えませんけど骨には異常はなかったんです。

ただ額の皮膚が結構裂けてしまってかなり縫いました。」

「痛いか。」

「はは、結構痛いです。でも痛み止めももらったし……、」


と六花はセイの腕を見た。


「セイこそ、右手が。」


彼は腕を持ち上げる。

切断された部分は包帯で保護をされている。


「鬼はどうなった。」


六花が頷く。


「築ノ宮さんが封印しました。

私はその場は見ていないので後から聞いたのですが、

術師の方が小さな壺を見せてくれて、

その中に雨多柆鬼がいるそうです。

多分セイが頼んだら見せてくれると思いますよ。

それは築ノ宮さんの方で保管すると言ってました。」

「美戸川は死んだのか?」

「その……、亡くなってはいませんが、」


六花の顔が難しい顔になる。


「抜け殻みたいになりました。いわゆる廃人と言うか。

話も出来ません。

この病院で保護されているようです。会いますか?」


セイは鬼に取り憑かれていた美戸川を思い出す。

初めて見た笑顔は背筋が凍るような顔だった。


「いや、いい。」


あれほど憎かった男だ。

だが廃人になってしまったのを見て自分は何を思うか、

セイは考えた。

ただ哀れみだけだろう。

そしてその姿をあざ笑う気もない。


「のちの様々な事は築ノ宮さんが全部やって下さるそうです。」

「そうか。あの人は怪我もせず何ともなかったみたいだな。」

「築ノ宮さんって私達の世界だととてつもない人なんですよ。」


六花が上を指さす。


「トップもトップ、雲の上の人です。

私も名前だけしか知りませんでした。」

「そんなにすごい人なのか。」

「ええ。見かけるだけでもラッキーなのにお話までしちゃって。

それにすごく綺麗な方でした。」


六花が胸元に手を組んでぼうっとした顔になる。


「おい、俺の見舞いに来たんだろ?」

「なんですか、妬いてるんですか?」


とぺろりと舌を出し六花が笑った。

いつもの六花だ。

セイはほっとした。


彼はそばに座っている六花の額に軽く触れた。

六花ははっとして彼を見た。


「俺はお前の額から血が出るのを見た。

お前が死んだらどうしようと思った。」


六花は無言で彼を見た。頬が熱くなる。


「俺は夢を見た。」

「夢?」

「お前が言っていたうばらさんと金剛さんがいた。」


彼女の顔がはっとなる。


「金剛さんが俺に生きろと言った。

そして金剛さんがうばらさんを抱いて消えた。」

「生きろ、って?」

「俺の右手はずっとそれを伝えたかったんだ。」


セイは六花を見た。


「それから俺はお前に会いたくなった。」


二人はしばらく無言で見つめ合った。


「あの、セイ。」


六花が小さな声で言った。


「私、力が無くなったらしいんです。」

「力?」

「鬼を封印する力です。

築ノ宮さんから言われたんですけど、

私の額の紋とセイの右手はいわゆる鬼へのにえじゃないかって。

雨多柆鬼が封印される代わりに捧げられたのではと。

簡単に言えばこれで許してやる、みたいな感じらしいです。」

「そんなものなのか?」

「私も鬼の世界はよく分かりませんけど、

これで雨多柆鬼との因縁は切れたみたいです。

そして多分うばらさんと金剛さんとの

雨多柆鬼に関わる縁も切れたのではと。」


六花がふと俯く。

セイは彼女が何を言いたいのか分からなくなった。


「それはどう言う事だ?俺には分からん。」


六花は顔を上げたがその目が泳ぐ。


「その、要するに鬼を探す仕事が終わったんです。

だからバディも解消です。」


セイの口がぽかんと開く。


「解消って、お前、」


思いも寄らぬ言葉でセイはあっけにとられた。

自分の隣に六花がいると言うのが

もう当たり前になっていたのだ。


「解消って、お前、猫、クロどうするんだ。

部屋の掃除とか。一週間で無茶苦茶になるぞ。」

「いや、その辺りは少しは学習したんで。」

「そうじゃなくて……、」


セイは手をぐっと握った。だが片手はない。

それは再生出来ると圭悟は言った。

腕は取り戻すことが出来る。

だが今六花と離れたらどうなるのか。

セイは焦った。


「お前は解消したいのか?」


少し怒ったような声でセイが言った。

六花が上目遣いで彼を見た。


「だって私はろくに掃除も出来ないし。」

「俺がやるから。」

「料理も出来ないし。」

「それも教える。」


六花はしばらく無言で俯いていた。

そしてちらりとセイを見る。


「それって私とバディを解消したくないと言う事ですか。」


それを言うと彼女は赤い顔でちらりと舌を出した。


「お、お前なあ……、」


セイの顔も真っ赤になる。

六花は立ち上がった。


「あれもこれもしてくれるという話ですが、

今はセイの右手はありません。

私がお手伝いしないと不便ですよね。

仕方ないですね。

しばらくバディの解消は伸ばしましょう。」

「……お前なぁ。」


二人はしばらく無言のままでいたがくすくすと笑いだした。


「俺は一週間ぐらい入院らしい。

戻った時に部屋がゴミだらけだったら全部お前にやらせるぞ。」

「大丈夫です。今のところ前の半分ぐらいです。」

「お前、ちょっと、」


六花がさっと扉に向かう。そして彼に振り向いた。


「また明日来るね。」


彼も答えた。


「おう。」


扉は閉まったがにっこりと笑った六花の顔がセイの目に残る。

セイは上を向いて大きく息を吸った。

浮ついた心を落ち着かせるためだ。


この感情は何だろうと彼は思った。

今まで感じたことが無いものだ。


セイは死んでしまった九津を思い出す。

彼と彼女の由佳が並んでいる時は

彼らはどんな気持ちだったのだろう。


それが今は理解出来る気がする。


ずっと無かった自分のなにかをやっと見つけたような気持ちだ。


セイはもぞもぞと横になった。

窓辺には黄昏に向かう空が見える。

夜が近い。


六花は明日来ると言った。

夜が来て朝が来れば明日だ。

小さな子が翌日のイベントを心待ちするような気持ちがした。

あまりにも子どもっぽいと思いつつ、

また六花に会える事がとても嬉しかった。






六花はセイの病室を出た。

心臓がどきどきする。


セイが無事で意識を取り戻してほっとしたのだ。

そして彼が自分の額に触れた時、彼女ははっきりと意識した。

セイが自分にとって特別な人だと。


彼女は立ち止り呼吸を整える。

そして六花は少しばかり浮足立った気分で歩き出した。

ナースステーションの前を通るとそこには香澄がいた。


「香澄ちゃん、電話ありがとう。」

「全然。良かったね、セイさんが意識を取り戻して。」

「ほんと良かった。心配してたから。」


香澄は彼女の様子を見る。

そして何かを感じたのだろう、ナースステーションから出て来た。


「なに?」

「六花ちゃんってセイさんと付き合ってるの?」


六花の顔が熱くなる。

だがどう答えて良いのか分からず少し口ごもった。

それを見て香澄がにやりと笑う。


「好きなんだ。」


六花が赤い顔のまま笑って頭を掻いた。


「そうなんだ、でもセイさんも六花の事好きだよね。」

「……お見通しでございますね。」


少しふざけたように六花が言った。

香澄がちらとセイの病室の方を見る。

今そこで何かがあったのだ。二人の運命を方向付ける何かが。


「セイさんってちょっと武骨だけど良い人だと思うよ。

優しいよね。」


六花が頷く。


「離れたらだめだよ。」

「うん、分かってる。」


六花が手を挙げた。


「また明日来るよ。セイの事よろしくね。」

「うん、分かった。」


香澄は六花の背中を見送る。

そしてため息をついた。


「圭悟先生は失恋確定か……。」


彼女は呟いた。

圭悟とは医師と看護師との長年の付き合いだ。

彼が六花の事を昔から好きなのは分かっていた。


そしてそれを何も言わず見守ってはいたが、

香澄は圭悟の事が好きだった。

それは一度も彼には言った事はない。

だが六花だけはそれを知っていた。


しかし、六花とセイの新しい間柄は

自分が圭悟に告げて良いのかどうか考えた。


自分が言わなくてもいつか圭悟は二人の事を知るだろう。

圭悟は間違いなくショックを受ける。

それを和らげたい気持ちはあった。


その時六花を無くした圭悟に自分が寄り添う事は出来るとは思う。

だがそれは彼の心の隙に付け込むようなものだ。

それはとても卑怯な気がするのだ。


「六花ちゃん……。」


香澄は呟く。

何かを見つけた六花とセイ。

そしてまだ何も知らない圭悟と何も持っていない自分。


彼女は大きくため息をついた。

そして日報を見る。

今やらなくてはいけない仕事は山の様にあった。

看護師は激務なのだ。


「成り行きに任すしかないか……。」


彼女は呟いた。




久我は翌日退院した。


「すぐに署に行く。何やら大変な事になっている。」


それは想像がつく。

茨島神社は鬼のせいで崩れてしまった。

そして20年近く鬼の結界が張られていたのだ。

それが解けた今、何もかもが混乱しているだろう。


「築ノ宮さんが色々と手を回してくれているらしい。

警察関係の仕事は別だが、

鬼とかあの辺りを築ノ宮さんが整えると言っていた。

辻褄が合わない事ばかりだからな。

私にも手伝って欲しいと言われた。」


退院時にセイを見舞う久我が言った。


「俺はここにいて良いのか?」

「お前が一番怪我が酷かったんだ。寝てろ。

何かあったら連絡するから。」


その時病室に六花が来た。

何やらいろいろと詰め込んだ紙袋を持っている。


「あっ、久我さん。退院ですか?」

「ああ、そうだ。高山君はセイの見舞いか。」

「はい。」


久我はセイを見る。


「世話をしてくれる人が出来て良かったな。」


セイの顔が赤くなる。

久我はセイの肩に軽く触れると六花に挨拶をして出て行った。


「良かったわね、久我さんが退院出来て。」

「ああ、心配だったが何事もなくて良かった。

ところでお前は今署内がどうなっているか知っているか?」

「それほど詳しくは聞いていないけど、」


六花が難しい顔になる。


「茨島神社は全壊だって。

それで美戸川室長の研究室が見つかって、

そこのクローンドームから手配犯や

行方不明になっていた署員が見つかってもう大騒ぎで。

まずどうしてこんな所にクローンドームがあるのかって、

そこから皆分からなかったみたい。」

「マスコミには漏れていないのか?」

「そこの辺りは築ノ宮さんが押さえているようよ。」


セイはため息をついた。


「鬼の結界ってそんなにすごいのか。」

「私もよく分からないけど、雨多柆鬼は弱っていたから

相当必死に隠していたんじゃないかって。」

「まあ何にしても……、」


セイはごろりと横になる。


「今は俺達が出来る事は何もない、か。」

「そうね。」


六花はセイの右腕を見た


「腕、痛い?」

「薬が切れると痛いな。」


六花がその辺りを手でそっと触れた。

しばらくすると彼女の手の温かみが包帯を伝って感じられた。

とても気持ちが良かった。


「六花、額はどうなったんだ。」


彼女の額には大きな絆創膏が貼ってある。


「10針縫ったの。皮膚に穴が開いて裂けたから、

結構酷かったみたい。跡が残るかもって。」


セイは鬼の指が彼女の額を穿った景色を思い出す。


「鬼の指は結構深く刺さっていた気がしたが、

骨は何ともなかったんだな。」

「美戸川さんの右手の人差し指なんだけど、」


それは彼女の額を穿った指だ。


「第二関節から先が無くなっていたの。

どうしてか分からないけど。」

「お前の頭の中にあるんじゃないか。」

「そんな訳ないでしょ、ちゃんとレントゲンも撮ったし。

圭悟君は何ともないと言ってたわ。」


と六花は笑った。

額の紋が彼女を守ったのかどうかは分からない。

だがあの指が六花の額を本当に貫いていたら

今ここに彼女はいないかもしれないと思うとセイはぞっとした。


「それでさっき香澄ちゃんから聞いたけど、

すぐにでもセイの右腕の培養を始めるって。

早ければ4ケ月ぐらいで手術してリハビリだって。」

「思ったより早いな。」

「圭悟君が手を回してくれたみたいよ。

全身でなく腕だけだから早く作れるらしいし。」

「まあ圭悟にとって俺は観察対象だからな。」

「またそんな事を言う。」


少しばかり怒ったように六花が言って

セイに触れていた手をさっとひっこめた。


「違う、違うぞ、俺は普通と違うからな、

もしかすると俺を調べる事で何かしらの発見があるかもしれん。

俺が役に立つならもっと調べればいい。」


とセイが少し焦ったように言うと自分の右腕を指さした。

それを見て六花がにやりと笑う。


「素直じゃないですね、セイさん。」

「うるせえ。」


六花が再びセイの右腕に触れた。


綺麗に晴れた日だ。

病室から新ナゴノシティの都心のビル群がよく見えた。

大地震の後の復興の象徴だ。


「ねぇ、セイ。」


六花がセイを見た。


「明日も来て欲しい?」


セイがちろりと六花を見た。


「毎日ってお前、仕事はどうなっているんだ。」

「今は連絡もないし家にずっといるの。

仕事って言っても歩くだけだったし。

それにこれからどうなるかさっぱり分からないもの。」


セイがふうとため息をつく。


「そうだな。」

「セイは良いじゃない、警官だし。」

「まあそうだけど。」

「問題は私よ。茨島神社は無茶苦茶になっているから

巫女も出来ないし、警察の仕事も終わりだろうし。

仕事を探さないと。」

「先生の所に戻ればいいだろう。」

「それはダメ。」


六花がセイの腕から手を放し、居住まいを正した。


「パパも私も親離れ子離れしなきゃダメなの。

特にパパよ。子離れが全然出来てない。」

「そうかな、先生はそんな人じゃないと思うが。

それにお前、仕事を首になったらどうするんだ。アパートの家賃とか。」


六花の顔がはっとなる。


「し、しばらくは貯金があるし。」


セイが彼女を見る。


「まあこれからどうなるか全然はっきりしていないし、

様子見るしかないんじゃないか。」

「うん……、そうだよね……。」


六花が上目遣いでセイを見て弱々しく頷いた。


「ところでな、六花。」

「なに?」

「その……、」


少しばかりセイが口ごもる。


「なに?」

「圭悟の事なんだが。」

「圭悟君?」

「お前と圭悟って幼馴染なんだよな?」

「そうよ、昔からの知り合い。」

「お前と圭悟って付き合ったりしてるのか?」


六花が驚いた顔になる。


「ないよ、全然。友達だよ。」

「そうか……。」

「でもね、」


六花の顔が何か企んでいるような顔になる。


「香澄ちゃんが圭悟君の事が好きなのよ。」

「えっ、英本さんだよな。」

「私はあの二人は絶対に良いと思うんだけど、

圭悟君はそう言うの鈍いみたいで全然反応ないの。

香澄ちゃんは本当に良い人なんだよ。いつも圭悟君の事を考えてる。」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る