第5話
「『出来損ない』のお嬢様だー!」
「妹は優秀なのにねぇ……」
「あんな使えない魔法じゃなくて私は良かったわー」
「ほんとにねー」
シュタイン侯爵領の領民の間でも私の悪評は広まっております。
子供は私を見かけると馬鹿にしてきます。
保護者や周りの大人も、それを止めるでもなく私のことを蔑んだ目で見たり、陰口をたたいたりしています。
前の私だったら、ひどく落ち込んで街に来るのは憂鬱だったんだけど……不思議ね。
今は何の感情も湧いてこない。
こんな人たちのこと気にするなんて、時間と労力の無駄だわ。
今日私が町までやってきたのは、婚約者のピエール様との約束があったからだ。
最もその約束も、待ち合わせ場所の店に着いた途端にキャンセルされたけどね。
「友人との急な約束が入った! 今日はキャンセルだ!」
と友人という名の愛人との約束が入ったそうです。
それはもう、鼻の下を伸ばしに伸ばしながら仰ってきましたわ。
まぁ私にとってはいつものことだからもう気にしてないけど。
それよりも都合よく時間ができたわね。
折角街に繰り出してるのだから、なんか魔法試したいわ。
「私はちょっと街を見てから帰るから、先に帰ってもらえる?」
「……かしこまりました」
と御者は拒否するでもなく私の言葉に従って馬車を引いて屋敷へと帰っていった。
私の乗る馬車を引くのは御者にとっては、罰ゲームなんですって。
この前使用人たちが陰で話してるのを聞きました。
まあ、おかげで一人になることができたし、これで思う存分魔法を試せるわ。
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