第2話 冒険者ギルド
優香たちと別れた俺は、早速この国にある隠れ家へと向かった。
そしてたどり着いたのは、街の一角。
なんの変哲もない路地裏。
俺はその壁の石垣の一つを押し込む。
すると、地面の石畳が並びを変え、その場に地下への階段を作り上げた。
「うん、ちゃんと残ってるな」
俺はその階段を降りる。
俺が内部に入り切った瞬間、入り口が自動で閉じる。
階段を降りていくと、一つの部屋に辿り着いた。
「懐かしいな。大体3000年ぶりか。流石に埃を被ってるな」
辿り着いた部屋には、たくさんのモニターと別部屋への扉があった。
一度埃を払ってから、モニターの電源を入れてみる。
モニターの電源を入れると、王国中の映像が一気に映し出された。
「お、ついたついた。大丈夫そうだな」
きちんと機能することを確認した俺は、次の部屋へと向かう。
「ええっと、次の部屋は………ああ、武器庫か」
扉を開け、さらに奥に入ると、そこには壁にかけられた何本もの剣や槍、刀や杖などの武器が、綺麗に収納してあった。
「魔法で錆止めしといた甲斐があったな。全部綺麗な状態だ」
俺が一本一本状態を確認していると、この部屋に飾られた一つの絵画が目に入った。
「あぁ、そうそう、俺の姿ってこんな感じだったっけなぁ」
絵画に描かれていたのは、1人の男。
この男こそが、3000年前、魔王を討伐し、魔族を滅ぼした勇者であり、俺の前世、ライナス=ガイスト=ハーレストだ。
2本の剣とあらゆる魔法を自在に操り、当時の剣聖や大賢者すら圧倒したという伝説の人物。それが俺の前世。
俺が最初、なぜ俺たちがこの世界に呼び出されるのか、なぜ前世が勇者でありながら最弱と呼ばれるのかは、これが理由だったりする。
俺たちが転移させられることを知っていたのは、勇者時代に獲得した能力の一つ《未来視》で確認していたから。
なぜ最弱と呼ばれるのかは、これほどの実力を持っていれば、ほぼ確実に脅威として処刑されるので、実力を隠していたから。
「そういえば、自分のステータス確認してなかったな。あんまり覚えてないし、見ておくか」
―スキル神眼《鑑定》発動―
―――
個体名
アオイ・タカバタ
性別
男
適正属性
全
所持スキル
神眼 Z
虚構の邪視
千里眼
未来視
瞳術
鑑定
超鑑定
勇者 SSS
破邪の力
剣魔両極
神聖魔法
聖者の威圧
剣聖 SSS
二刀流
遠隔斬撃
高速斬撃
万物切断
武器破壊
大賢者 SSS
詠唱破棄
詠唱拡大
詠唱反響
詠唱破壊
魔法創造
従魔士 SSS
孵化
従魔召喚
従魔認識
感情共有
精霊使い SSS
精霊召喚
精霊魔法
環魔使役
即時再生 SS
魔力回復 SS
環境適応 SS
万能偽装 SS
万能隠蔽 SS
読心 SS
行動予知
魔力増強 S
攻撃力増強 S
防御力増強 S
回復力増強 S
瞬発力増強 S
持久力増強 S
魔法攻撃力増強 S
魔法防御力増強 S
魔法回復力増強 S
物理攻撃無効 S
属性攻撃無効 S
即死攻撃無効 S
魔法攻撃耐性 A
精神攻撃耐性 A
ギフト
模倣者 SSS
―――
「おお、俺もギフトって貰えたんだな。まぁ名前からして大体わかるけど」
一応鑑定しておこう。
―――
ギフト
模倣者
ランク
SSS
説明
一度見た技や魔法を模倣し、自らのものにできるギフト。
全ての能力が分かれば、スキルも模倣できる。
―――
「おお、こりゃすごい。まぁ使う必要あるのかわからんが」
少なくとも、かなり有能なギフトではある。
「さて、息抜きはこれくらいにして、掃除の続きだな。めんどくさいから魔法でやっちゃおう」
俺は風魔法を発動して部屋中の埃を集めていく。
全て集め終わったら、炎魔法で焼却する。
「よし、あらかた終わったな。そんじゃあ、冒険者にでもなるか?いや、もう遅いし明日にするか」
そういうわけで、俺は次の日、武器庫から刀2本を持って、冒険者ギルドへと向かった。
◇
〜君嶋優香side〜
冒険者登録を終えた私たちは、その次の日に初めての依頼をこなしていた。
冒険者にはランクがあり、最低のEランクから最高のSランクに分けられる。
ランクに応じて受けられる依頼の難易度が変わるが、その分報酬も多くなるので、ランクを上げることが大事になってくる。
入りたての私たちは冒険者ランクEなので、まずは薬草採取などの簡単な依頼からだ。
薬草を採取するのに集中していても、頭のどこかに碧がいる。
あれから碧はどうなったのだろうか。
きちんと生活していけているだろうか。
悶々としながらしばらく薬草を採取し続けて、ある程度貯まったところで、ギルドへと届けに向かう。
私はギルドの扉を開き、受付へと向かう。
「あの、依頼品の納品をお願いしたいんですけど」
「はい。畏まりました。少々お待ちください」
そう言って、笑顔で去っていく受付の女性。
そのとき、受付の奥から何やら話し声が聞こえた。
「おい、聞いたか?少し前に来た男。今日冒険者登録したのにもうSランク冒険者になったらしいぞ?」
「なんだそのバケモンは?一体どんな奴なんだ?」
「ええっと、確か名前が………アオイ………タカバタ、だったか?」
アオイ・タカバタ、高畑碧。
その名前を聞いて、私は酷く驚いた。
「碧が、Sランク冒険者………?」
その言葉が、頭から離れなくなった。
◇
〜高畑碧side〜
「ここが冒険者ギルドか」
今日、俺は冒険者登録をするために、冒険者ギルドへとやってきていた。
冒険者ギルドの扉を開いて、受付の方へと歩いていく。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどんなご用件で?」
「冒険者登録をしたいんですが」
「畏まりました。それでは、こちらの書類に氏名をご記入いただいて宜しいでしょうか」
そう言って差し出されたのは、ギルドの利用規約のような紙だ。
特に問題は無いので、名前を書いて渡す。
「アオイ・タカバタ様ですね。早速登録手続きをして参りますので、しばしお待ちください」
そうして後ろへと入っていく受付の女性。
しばらくして、何やら文字の刻まれた一つの金属板と、一枚のカードを手渡された。
「そちらの金属板は、冒険者ギルド所属の証になります。基本的に身につけていてください。そちらのカードは、ギルドの基本施設を利用するためのカードです。ギルドには、宿泊施設、鍛冶屋、道具屋などの様々な施設が併設されております。そちらを利用される場合、そちらのカードをお見せいただくことで、利用料金の80%を値引きさせていただきます」
「おお、すごいですね」
「それから、アオイ様は登録したてですので、ランクは最低のEとなります。ランクを上げる方法ですが、依頼をより多くこなすか、自分よりもランクの高い冒険者を倒すことで上がります」
「なるほど」
今後のためにも、早めにランクは上げておいた方が得だな。
なら、上位ランクの冒険者を倒した方がいいだろう。
早速、倒していこう。
「それじゃあ、早速やりあってもらえますか?受付嬢さん?」
「え?私ですか?」
「ええ、だってあなた、Sランク冒険者でしょう?」
周囲からざわめきが起きる。
「………そう思った理由は?」
「ギルドのルールでは、ギルド内での戦闘は禁止されています。ですが、実際に戦闘が発生した場合、止める人が必要になりますよね?」
「まぁ、そうですね」
「戦闘が発生した時点で、その場に上位の冒険者が居れば問題ないですが、もし、いなかった場合、その場を止められる人がいなくなります」
「………」
「もし上位の冒険者同士の戦闘であれば、それは街一つが無くなりかねない被害になる。そうならないために、ギルドスタッフには少なくともAランク以上の冒険者が集められている。違いますか?」
俺の推理を聞いた受付の女性は、そこでフッと笑う。
「………えぇ、正解です。この仕組みを見抜いたのは歴代でも2人目ですよ。でも、よく私がSランクだって分かりましたね」
「いや、そこだけは勘ですよ。その様子だと、当たりですかね?」
「カマかけでしたか。これはしてやられましたね。それで、本当にやるんですか?」
「俺から言ったんですよ?やるに決まってるじゃないですか」
俺が断固としてやり合うと言うと、女性は少し残念そうな顔をする。
「はぁ、あまり新人さんを叩きのめしたくはないんですがね。分かりました。やりましょう」
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