暗闇
伊咲
第1話
目を潰してから二週間が経った。現実への絶望から逃れる事に成功したが、これは正しい事だったのだろうか。
あの日、私の現実は真っ黒になり、自分の視界も真っ黒にしようと思い至った。そんな事を思い出しながら、今日も散歩する。公園を散歩していると、お婆さんに声をかけられた。「目が不自由なのに頑張ってるのねえ」と。
然し不自由などでは無い。過去の絶望などいざ知らず、私は見えないこの世界で唯一自由に暮らしている。最近は耳がとても良くなって来て、車が来る音等も分かるのだ。益々この世界は私の思い通りに行くようになる。皆、労ってくれる、昔とは違って。
耳が良くなって以来、様々な会話や喧騒が聞こえるようになった。彼らは表面では労ってくれるが、姿を見れない為どう接しているか分からない。遠くで聞こえる笑い声は、自分を陰で笑っているかもしれない。一時私は逃げられて安堵していたが、やはり現実の残酷性からは逃げられないと、静かに悟った。
静かな心とは裏腹に、街の喧騒は絶えず止まない。見えない世界の恐ろしさに叫ぶ自分の声が、今日も頭に良く響く。
暗闇 伊咲 @Jun1150
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