第8話 トルドの考えと私の誘い
「追放としたが、学園には戻ってきてほしい」
何度読んでも意味が分からない文言だ。追放したくせに学園には来い?本当に意味が分からない。
(行くわけないだろ)
この手紙は両親には言わない事にした。どうせ騒ぎ立てるだけなのは目に見えている。
そしてトルドの誘いにも乗らず、ここでいる事も決めた。
(私はナホドが好みだし、どうせ学園行ったってロクな事無い)
私は手紙をそっと服のポケットの中に入れたのだった。メイドにも帰って良い事を伝える。
これでようやく、ナホドとまた話せる時間がやってきた。
「ごめんなさいね。ばたばたしてしまって」
「ええ、大丈夫です」
「少し話しましょうか」
「何を話します?」
普段はおぢ達の話を聞くのがメインなだけに、こちらが話す側に回るとなると何をどう切り出せばよいのか戸惑ってしまう。
だが、この程度で混乱してはいけない。まずは何とかして頭から聞いてもよさそうな当たり障りのない話題を絞り出す。
「ナホド、趣味は何かあるかしら?」
「最近は海で釣りをしたり、鯨や魔獣のウオッチングを楽しんでいます」
ほうほう、中々にアクティブなようだ。ナホドと一緒に釣りをしてみたくなってきた。
「いいですわね。今度ご一緒させて頂いても?」
「リリア様……危ないですよ?」
「駄目ですか?」
必殺・ニコッと笑って上目遣いのおねだり。これで落ちたおぢは数知れず。
さて、ナホドはどうなるか。
「でも、リリア様を怪我させては行けません……」
駄目だった。しかし反応は尊い。あの元彼はここまでしてくれただろうか。
(いや、ここまで優しくはなかったような……)
多分だが、私リリアとナホドの侍従関係もあるのだろう。
ここは、彼の言う通り大人しく引き下がる事に決めたのだった。
「ご心配してくださり、ありがとうございますわ」
「いえいえ、とんでもない」
だが、その後の会話が続かない。
(どうしよう)
すると、ナホドの口がゆっくりと開く。
「こちらでの暮らしはいかがでしょうか?」
「あ……もう大丈夫ですわ。あなた達のおかげです」
「ありがとうございます。そう仰って頂き光栄です」
やっぱりいつ見ても、ナホドの微笑みは尊い。私はそんなナホドの微笑みにただただ癒されたのだった。
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