第17話

「ひ、人の婚約者に…婚約を申し込むなど、貴様のほうが紳士の風上にもおけないじゃないかっ!」

「なにを言っている。貴殿は、彼女に婚約破棄を叩きつけたという聞く。好いた女の相手が消え、これ好機と思わない男がどこにいる」

「は」

「きゃ~♡あつ~い」

「ま、まだ婚約破棄と決まったわけでは…」

「遅い!」

「っ!」

「元より、お前から言い出したこと。そして、それを彼女も、彼女の家族もそれを受けた。お前は、もう彼女の何でもない。わかったら、とっとと失せろ」

「… …アリシア」

「ロミオ。最初から、お伝えした通り。私たちは、利害の一致で婚約した関係。あなたから解消したいと願い出たことです。ならば、私はそれに答えるまで」

「じゃ、じゃあ、僕がまた婚約を申し込めば、君は答えてくれるんだね」

「……」


どうして、そうなるんだ。

押し問答に頭が痛くなる。

言葉が通じないのか。いや、むしろ通じないのは、常識か。


「そもそものきっかけは、あなたの浮気よ。どうして、それを許すと思えるの」

「あ、あれは、だから、そそのかされて…」

「そそのかされたら、誰にでもしっぽを振るのね。あなたという人は。…あなたに心の余裕を割いている余裕は、私にはないのよ。これ以上、騒がれたくないなら、早く私の前から消えてくださる?」

「…その言葉遣いはなんだ!僕は名家の家だぞ!」

「ならば、僕も名家だな。アルセウムの家が、彼女の盾になろう」

「ぅぐっ!アリシアっ!」

「見苦しいっ!吠えてないで、あなたは、自身の最愛と共にいなさい!もう誰もあなたを責めません!」

「アリシア…覚えてろよ」


そう言って、ロミオは学校のほうへ向かった。


「ふぅ」


疲労感が半端ない。

これから授業だというのに、すでに疲れている。


「アルセウム。どうもありがとう。おかげで助かったわ」

「驚いた。君は、きちんとお礼が言えるようだ」

「……」


アルセウムのこういうとことが嫌いなのよ。

嫌みでしか、返事できないの?


「私がお礼を言わないことがあって?」

「お礼を言われたことがないな」

「言われるようなことしたことないからでしょう」


この男、いつも会えば、嫌みか自慢しかしてこなかった。

それなのにお礼を言う女が、どこにいる。

生きていてありがとうとでも言えと?


「おあいにくさま、自慢話にお礼を言うような教育は受けてこなかったものですので」

「あら」


リリーが、口に手を当てている。


「それって、アピールしてたってことになりませんか?」

「アピール?」

「……」


アルセウムの顔が真っ赤だ。


「私と会うたびに自己PRしてたってわけ…?」

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