第2話
「それに君の家、事業に失敗したそうじゃないか」
「え?」
事業に失敗した?そんな話、聞いたことない。
この学校は、全寮制であるため、家には長期休みの時でしか帰っていない。
この前の冬休みに帰った時は、そんなそぶりはなかったけれど…。しかし、世の中どうなるか分かったものではない。もしかしたら、もしかするのかもしれない。
「あら。知らなかったの?」
「…初耳です」
「あらあらあら~。かわいそ~う。きっとあなたのお父様は、あなたを心配させないように何も伝えなかったのね。あなたを見るのも、あと少しかもしれません」
「成り上がりなど信用ならないと母が言っていた。それは、正しかった。しょせん、一夜限りの幻のようなものだと。平民は、金の使い方を知らない。だから、金持ちになってもすぐに使い果たして、人生に失敗してしまうのだと。僕は、それに早く気づけて良かった。…君のおかげだ」
「ロミオ様…」
二人は抱き合って、お互いの目を見つめ…情熱的なキスをした。
私の目の前で。
「… … …」
すっかり蚊帳の外に追い出されてしまった私は、さっそく外泊許可をもらいに先生のところへ行く。
彼らの話を信用したくはないが、もし、これが本当であるならば、大変なことである。
借金を抱えた生活というものが、どういったことなのかは知らないが、友人の別れや部屋の私物も整理しないといけない。
やることは、たくさんである。
◇
「どうしましたの?部屋替えでもされるの?」
「荷物を実家に置いていこうと思って」
「それに…その袋は?」
「処分してもよいものを入れているの」
「まだ使えるわ…。これ、あなたが気に入っていたぬいぐるみじゃありませんか。捨ててしまうの?」
「生きるのに必要ないものだから」
「生きるのには、癒しだって必要よ。…ねぇ、どうなさったの。お顔が怖いわ。あの婚約者に何か言われたのね。いきなりどうして、こんなことを?」
「それが…」
私は、自身の父親が事業に失敗して、借金を抱えてしまったかもしれないこと。
それを婚約者と浮気女に言われたこと。
もし、それが本当ならば、物は減らしたほうがいいと思い、断捨離をしているところ。
私は、真剣に話した。この子になら、本当のことを言ってもいいと思ったからだ。これで、離れるような可愛い性格は、していない。もし、離れてしまっても仕方ないというあきらめの気持ちは、一応持っていたが。
同居人のリリーは、私の話を聞いているうちに、顔をうつむかせた。こちらから、表情も見えない。
「っ!… … …」
「リリー。あなたには、分からないかもしれない。あなたのお家は、あなたのお家が稼いでくれるものね。でも、うちは違うの。お父様が一代で築き上げたものだから、失敗してもおかしくはない。だから、いつ貧乏になってもおかしくないの」
「… … ふ」
「リリー?気分を害してしまったかしら。でも、ごめんなさい。本当のことなのよ」
「… ふ…ふ…ふふ、…っ」
「リリー?」
リリーの様子がおかしいので、顔を覗き込んでみる。
…笑っていた。
それも爆笑である。
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