第10話

「さっきの声は、誰だ?」

「我が国の聖女です」

「そうか。あの声が噂の…。とても優秀だと聞いている」

「ええ。とても優秀な子ですよ」

「そうか…。それは、うらやましい」

「で、殿下…実は、私も聖女なのです」

「… お前は」


殿下が、私を再度見つめる。

ここは、アピールポイントね!


「そうです。リリアは、とても美しい聖女なのです」


うちの王子様も援護してきた。

おそらく、俺の聖女はすごいんだぞって、マウントとってるつもりなんだろうけど、いいわよ。その調子。どんどん褒めなさい。


「ええ。リリア様は、とても美しい」

「見てください。この髪や肌を。さすがは、聖女というだけあって、輝いています」

「…王よ。この者たちは」

「ああ。わかっている。私もこの件については、頭が痛い。見苦しいものを見せてしまって、申し訳ない」

「あなたも苦労しているのだな」


王様と殿下がなにやら、ぼそぼそ言ってるけど、関係ないわ。


「殿下!私は、とても優秀なのです」

「そうか。それで、お前は何をしている」

「え?」

「同じ聖女が、戦っている最中にお前は何をしている」

「え?」


何を言っているのかしら?


「なにって。殿下とお話ししています」

「…はぁ」


なんでため息をつかれなきゃならないの?

美形だからって、こちらを馬鹿にしていいと思っているのかしら。

やっぱり男が権力を持つと駄目ね。

偉そうになるばかりで、こちらを馬鹿にしてくるんだもの。

この王子さまは、違うと思ったのになんだかがっかり。

まぁ、ため息をつく姿もかっこいいし、私は寛容な女だから、別にいいけど。


「お前は、戦わないのか?」

「殿下こそ、戦わないのですか?」


殿下の目が、すっと細くなる。

色気が増して、とてもかっこいい。

ふふ。私に図星を刺されて、痛くなったのを隠しているつもりなんだろうけど、無駄よ。私には、なんでも分かっちゃうの☆


「戦いませんよね?殿下がいるせいで、戦いが起こっているのに、殿下はこの城から出ない。戦えないから。違いますか?」

「おい、小娘。殿下になんという無礼」

「うるさい!あなたは、黙ってなさいよ。私たちは、戦わなくてもいい存在なんですもの。だって、守られるべき存在だから。だから、私は戦わない。殿下も戦わない。そうでしょう?」

「…ふん」


殿下が、私の言葉に何も言えずにそっぽを向いた。拗ねてるんだわ。かわいい。


「なら、俺が戦えば、その減らず口もなくなるか」

「は?」

「で、殿下…!?」

「そこの女が言う通り、俺のせいで起こった戦いだ。罪もない民が、けがをしているとあれば、俺が隠れているわけにはいかない。行くぞ」

「お、お待ちください!ここで、なにかあったら、王がなんと言われるか」

「うるさい。あそこまで言われて、黙っていられるか」

「待たれよ。オスカー殿。そちらのものが言う通り、ここであなたに怪我でもされたら、外交問題になるだろう。賢い貴殿なら、わかるだろう」

「なら、ここで待てというのか」

「そうだ。おそらく、あの子がじきに」

『お待たせしました。終わりました』

「は?」

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