群星になれば

遂空

ex 000

 XXX年XXX月XXX日 戦争が始まった。

 これは侵略という名の虐殺——その境界線を踏み越えた残虐な行為だ。

 

 平原の名を冠するにはあまりにも荒涼とした地で、血と火薬の匂いが空気を支配している。天を揺るがす雷鳴の如き大砲の音と混ざって残り最後の守護者たちの希望を塵と化していた。爆弾が地面に落ちだ瞬間、衝撃波が土や石を飛ばし、守護者たちの体もその音に応じて崩壊してゆく。

 

 彼らは自分たちの国を守ろうとした。しかし、目の前の化け物は一切のチャンスを与えなかった。クロン王国の人々はこれらの恐るべき機械を戦車と呼び恐れていた

 

 鎧を履く者たちはこの機会の前で微塵の抵抗もできない。彼らが持つやりがどれだけ鋭く、肉体の力がどれだけ強いかは無意味だ。工業革命よりできている戦争兵器は人間の肉体だけで勝てるものではない。


 戦車は不敵な速度で前進し、その履帯により、地面の罠を無に帰し、微塵の脅威も無価値にした。魔力エンジンの轟音はまるでカウントダウンのように、たまらず守護者たちにある言葉を伝えている。

 

「君たちはもう死ぬべきだ。」と。

 

 天に巨大な影が広がり、荒涼たる大地を完全に覆い隠す。その影は時に人の形、時に海の形をしている。でも、雲に隠されている関係で、正体は見えない。やつの低い叫び声だけで、守護者たちの心を砕き、精神を崩壊させた。

 

 古い国の彼らは知っていた、自分たちにはもう逃げ道がない。はるか前から、戦争の結末は決まっていた。クロン王国は、恐るべき戦車を送り込んだだけでなく、彼らは―彼らは神の力さえも引き連れてこの古の国を滅ぼしたのだ!

 

 醜く悪魔のように叫んでいる機械の上の砲塔は最後の守護者にを狙い、大きな音とともに、古い国の名誉、今まで積み重ねてきた文明の果実はまるで埃のように風に飛ばされ、歴史の中から姿を消した。たとえ古く強大な国だとしても、なんの抵抗力もない。これは新しい覇権が旧時代を完全に圧倒することを意味している。

 

 極端な個人崇拝、無比の効率性、団結する民。これが二国間の根本的な違いであった。

 

 古の国の王女は、最後の玉座に腰を下ろし、彼女の双子のように美しい水晶の杯を握りしめると、そこから深紫の強大な魔力が溢れ出した。

 

 彼女とこの古い国の名前はもう意味がない、クロン王国はいづれこの国の情報をすべて削除する。まぁ、この圧倒的な戦争は突然でも、意外でもない。この王女ははるか前にもう知っていた。自分たちが持つ無限の魔力は、資源を必要として発展拡大を急ぐ国家にとって、その偽善の仮面を剥ぎ取り、覇権の下で極めて醜い貪欲な怪物の姿を露わにするほど魅力がある。

 

 王女は水晶の杯を見て、語った。その言葉は誰に語ったかはわからない、もう誰もいないのに、彼女は口を開いた。

 

「どうか、お願いします。」

 

 カチン!

 

 清らかな音が響き渡り、水晶の杯が砕け散った。破片が地面に落ちると、無限に近い魔力が一瞬にして宮廷を満たした。巨大な青い光柱が天に突き刺さり、本来澄んでいた空は数秒で猛烈な力を带びた暗雲に覆われた。青い光柱は噴出口のように、力の泉が微塵も衰えることなく噴き出していた。

 

 その巨大な衝撃の中で、王女の姿は瞬く間に灰と煙に戻し、宮廷もまた、決して元に戻ることのない廃墟へ変わってしまった。廃墟の中のすべてが、魔力の光柱の力によって徐々に分解され、光柱の一部となっていく。

 

 全ては無声のままで進み、古い国は最後に塵と化し、無限の魔力と、永遠に荒地を彷徨う深い溜め息だけ残された。


「...聞こえた。」


 あるものは光柱の隣に立ち、誰に返事しているかはわからない。そのものは光柱を見て、ただ頭を軽く振り、まるで存在してなかったのように姿が消えた。

 

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