第15話 幼馴染と予定立て

「お、妖崎。やっと帰ってきたか」

「遅いよー。もう昼休み終わっちゃうよ?」

「あぁ、ごめん。弁当食べるのに時間かけすぎちゃってさ」


 昼休み終了間際にようやく澪ねぇちゃんから解放され、自分の教室へと帰ってくる。あの後、澪ねぇちゃんといろいろ話していたら、気づけば昼休み終了間際になっていた。


 結局、澪ねぇちゃんの話を聞いたうえで、俺は、日暮と暁の背中を押すのはしないことにし、大人しく見守ることを決めた。澪ねぇちゃんが「あの二人は大丈夫」というのだから、きっと大丈夫なのだろう。


「あ、そうだ。さっき若葉と話してたんだけどよ、5月の頭に大型連休あるだろ?」

「ゴールデンウィークのことか?」

「そうそう。でさ、もし妖崎くんさえよければ、親睦を深めるってことで、3人で一緒に遊びに行きたいなーって話をしてたんだよね」


 日暮と暁が交互にそう説明してくれる。

 ゴールデンウィークは、正直まだまだ先の話の気がするが、俺としても、二人がそういう風に仲良くなりたいと思ってくれることは嬉しいし、二人の申し出を断る理由もない。けど、少し気になっていることもある。


「そうやって言ってくれるのは嬉しいけど、二人はいいのか?元々は二人だけで遊びに行ったりするつもりだったりしないのか?」

「俺らから誘ってんだから、別にそんなこと気にしなくていいぞ」

「それに私たちは、ゴールデンウィークに限らなくても、いつでも遊びに行けるからね」


 なるほど。それもそうか。おそらく、二人は休日とかには、よく遊びに行っているのだろう。

 二人が問題ないと言ってくれるのなら、俺がむりに気をつかう必要もないだろう。それは、逆に失礼になってしまう。


「わかった。ゴールデンウィークは予定を空けておくよ」

「よしっ。じゃあ詳しい日時とか場所は俺と若葉で決めとくよ。俺たちから誘ったんだしな。あ、あと家とかでも詳しいこと話したいから、連絡先交換しようぜ」

「あぁ、いいぞ」

「あ、私も!」


 そうして俺たちは、互いにスマホを出し、連絡先を交換する。ついでに、3人のグループチャットも作成したタイミングで、午後の授業の予鈴が鳴る。


「あ! 私、次の授業体育なんだった! もう行くね! また後でいっぱいお話ししようね!」


 ばいばいと小さく手を振って、暁は教室から出ていく。俺と日暮は手を振り返して、自分たちの次の授業の準備をする。


 まだまだ先とはいえ、高校で初めての友達と遊びに行けるのは、今から楽しみだ。


「ありがとな。今から楽しみだよ」

 俺が日暮に小さくお礼を言うと、日暮れは「おう!俺もだ!」と元気よく答えてくれる。

 二人のおかげで、午後の授業は、少し楽しみながら受けることができた。


 ちなみに、日暮はめちゃめちゃ爆睡していた。



「みなさん、初めての授業はいかがだったでしょうか――――結構疲れている人が多いみたいですね‥‥。すぐには慣れないかもしれませんが、いずれ慣れると思いますよ。今日はゆっくり休んでくださいね。それでは先生からは以上です。妖崎くん、号令を」

「起立。礼」

「「お疲れさまでした」」

「お疲れさまでした。気を付けて帰ってくださいね」


 午後の授業とその後の終礼を終え、クラスメイトはそれぞれ帰宅の準備を始める。俺も、片づけを終え、帰ろうとしたところで声をかけられる。


「妖崎くん。少しこちらへ」


(げっ‥‥)


 このタイミングで澪ねぇちゃんに声をかけられるなんて、嫌な予感しかしない。が、さすがに無視するわけにはいかないので、大人しく着いていく。


(何を言われるかわからないけど、早めに帰れるといいなぁ‥‥。)

 淡い期待を抱きつつ、俺は澪ねぇちゃんの後ろを歩いてついて行った。



「日暮くんたちと何を話してたの?」

 昼休みにも来た空き教室に着くなり、澪ねぇちゃんは単刀直入に聞いてくる。どことなく、声に怒気が含まれてる気がする……多分。


「ゴールデンウィークについてだけど……親睦を深めるためにどこか遊びに行かないかって……」

「そう……」


 俺の答えを聞くと、澪ねぇちゃんは、静かに椅子に腰を下ろす。

 そうして少しの間俯き、沈黙の時が流れる。


(なんだ……何を言われるんだ……?)

 俺がそう警戒していると、澪ねぇちゃんがふと顔を上げ、沈黙を破る。


「どぉぉぉぉしてわたしとは遊んでくれないのぉぉぉぉぉぉ!」

 うわーんと泣きながらそう訴えてくる澪ねぇちゃん。


 よし、とてもめんどくさい事になったぞー。

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