【ある金持ちの道楽ヒーロー】 〜ヒーローやるには平和すぎるので、とりあえず"何でも屋"始めました〜
3ず
第1話 超能力者募集中!
大学4年生の春。お世話になった教授への内定報告の帰り道のことだった。オフィスがいくつも並び、ピンと皺のないスーツに、艶やかな革靴を履いたサラリーマン達がせわしなく行き交う街に、似つかわしくない光景を見た。
それは、個性的なUFOの様な形の建物で、そこからは、統一感のない行列が伸びている。列の先頭に様子を伺いに行くと、『超能力者募集中!時給2500円!』の粗末な張り紙が貼ってあった。
おかしな光景ではあったが、今流行りの新進気鋭の芸術家が開催するイベントかもと思い、僕はSNSで検索をかける。
それで、わかったことは2つ。張り紙通り、超能力者を求めて面接が行われているということ、募集者はどこかの金持ちらしいということだけだった。
本気で「超能力者を探している」という馬鹿げた行為に、好奇心が湧いた僕は最後尾に並びつつ、前の人に話しかけた。
「あなたも超能力者なんですか?」
これに、振り返ったおじいさんは、楽しそうに答えてくれた。
「超能力者?みんな、隠し芸大会みたいなもんだと思ってるよ。変わった特技の比喩だろうって。それに、採用後、何をさせられるのか誰も知らない。でも、面白そうだから並んでいるやつもたくさんいるのさ。」
なるほど。みんな、僕と同じ様に好奇心で並んでいるらしい。
「へぇ。じゃあ、おじさんは何の特技を披露するつもりなんですか?」
僕が再び質問をすると、おじいさんは「他人の晩飯の内容を正確に当てられるんだ」と少し照れた。
列に並んでかなり時間が経ったが、人数の割には回転が速く、一人中に入ったかと思えば、すぐに出てくる。そんなに厳しい面接なのだろうか。まあ、そんなこんなで、ついに次が僕の番になった。
「どうぞ」と大きな声が聞こえたので、扉を開ける。建物の中は、近未来的な外観とは違って、ウッド調でキャンプ場のログハウスの様だった。また、特に仕切りなどもなく吹き抜けの空間に机があるだけの会議室の様でもある。
部屋の奥に男が2人座っていた。
左側に座る小綺麗な紳士は、いらだった様に眉に皺を寄せて「あなたは、超能力者ですか?」と聞く。
「それは、本当の意味での超能力が使えるかと言う質問ですか?」
この状況が、おかしくてしょうがない僕の様子を見て、紳士は眉間の皺を手で伸ばしてから、「どういう意味です?」と聞き返してきた。
「超能力者かどうか答える前に、僕からも質問させてください。あなた方も超能力者なんですか?」
すると、ずっと黙りこんでいた右側の男。金髪でプロバスケットボール選手かと思うほど、背が高く、体格もいい若い男性が嬉しそうに微笑んだ。
そして、微笑んだと同時に、僕の方へ強い風が吹く。
僕は、びっくりして目をつぶった。それから、そっと目を開けると、さっきまで前にいた金髪の男性が、僕の横に立っていた。
そして、僕の顔を覗き込み「この通り、僕は超能力者だよ。他にもできることはたくさんある。君は何ができるの?」と、興奮して様子で聞いてきた。
顔が近いのが嫌だったので、彼が以上近づいてこない様に手で壁を作りながら僕は答えた。
「人探しの能力があります。名前と生年月日、顔が分かれば、面識がなくても、その人がどこにいて何をしているのかを特定できるんです。」
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