第2話


 朝起きて、学校に行って。


 いつも同じ時間に、同じ電車が来る。


 変わらない顔ぶれ。


 透き通った声のアナウンス。


 窓越しに過ぎていく街の景色が、穏やかな陽の光の中に包まれていた。


 ガタンゴトンと揺れる線路が、確かな地面の感触だけを、緩やかな時間のそばに残して。



 ずっと続いてるんだ。


 「今日」が。


 空に浮かぶ雲の形も、水辺に映る街の色も。



 “かつて世界には「戦争」があった”



 眠たい午後の授業の片隅で、カッカッと黒板にぶつかるチョークの音が、もう何年も前から繰り返し響いている。


 ただの気のせいかもしれない。


 ——いや、きっとそうに違いない。


 じゃなきゃおかしいだろ?


 世界が“止まってる”なんて、そんなあり得ないことが…



 ただ、「空」を見上げてた。


 今日はいつで、ここがどこか。


 どうしようもないくらいに干上がった感情のそばで、ふと、雲の流れていく軌跡を見たんだ。


 雲間から落ちてくる光の雫を、いつの日か、この目に逃してしまわないように。

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