第12話再出発

(まえがき)

11話と同時更新ですのでまだの方は11話を先に読んでください。

先に12話から開いてしまった人のために、ネタバレ回避のための空行作っておきますので、お手数ですが長めのスクロールをお願いします……!


































 ――高校を卒業してから3日後。


 

 俺は家の近くにある公園のベンチでうなだれていた。


「やばいな……。まじで部屋が決まらない」


 無事に大学に合格した俺は一人暮らしを始めようとしているのだが……

 部屋が見つからない。

 あるにはあるが家賃が高かったり、かなりボロかったりと条件が合わない。

 入学式には間に合いそうもなく、当面は家から大学まで2時間50分をかけて通うか、大学の近くにある安めのネカフェで寝泊まりをするしかないと、覚悟を決めつつあったときだ。

 公園のベンチでうなだれている俺の目の前に思いもしなかった人物が現れる。




「あの時はごめんなさい」




 いきなり俺の目の前で頭を深々と下げて謝ってきたのは――

 2年前、俺が突き放したことで疎遠になっただった。

 あれから随分と経った。もう、怒りも嫌悪も綺麗さっぱりに……とまでは行かないがおさまっている。

 ゆえに、素直に謝ってきた雪菜を突き放すなんて酷いことはできなかった。


「もうアレから随分経ったしな……。仲直りするにはちょうどいいのかもな」


 俺の声を聞いた雪菜はホッとした顔つきで俺に言う。


「ありがと。あと、今の今まで謝れなくてごめん……」

「てか、あのときは俺も言い過ぎた。そこに関してはずっと俺も悪いと思ってて……。俺もお前に謝ろうと思ってたけど、気まずくて声を掛けられなくてさ……」

「……別にいいよ。悪いのは私なんだから」

「にしても、あれだな。なんで、このタイミングで謝りに来たんだ?」


 雪菜は下を向きながら俺に話し出した。


「家が見つからなくて困ってるって聞いて……。だからその、えーっと……」

 

 やけに言い淀む雪菜。

 そんな彼女は俺の目をちらちらと見ながら声を震わせながら言った。


「い、家が見つかるまで、私の部屋に居候する?」


 俺は雪菜の思いがけない発言を聞いて、その場で固まってしまった。

 数秒ほど固まった後に冷静さを取り戻した俺は雪菜に質問する。


「雪菜は俺を助ける義務なんてないだろ。いきなりどうして……」

「まあ、あれ。私、晴斗のことから……。助けてあげたら、私のことまた好きになってくれるかな……って」


 雪菜はとっくに俺のことなんて好きじゃなくなっていると思っていた。

 だがしかし、2年と3カ月経った今も雪菜は……。




「お、俺のことまだ好きなの……か?」




 挙動不審に俺がそう言うと、雪菜は黙って首を小さく縦に振って頷いた。

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