第5話 『未来の人達』

「ねえ、お父さん。タイムマシンってあるよね。あれって未来の人が作れたなら既に未来人が現代に来てるよね」


 ある家庭の休日に仲の良い親子が話をしています。


「うん、そうだね。でも未来人が現代に来ていないってことは遠い未来でもタイムマシンの発明ができていないってことになるね。やっぱり難しい技術だから未来の人でもお手上げなんだろう」

「ふーん。もしかして宇宙人が未来人ってことはないの? タイムマシンが宇宙船の可能性もあるよね?」


 少年は前にも似たようなことを言っていました。


「どうだろう。そうだ近くに研究所にいる博士に話でも聞いてみようか。博士なら何かわかるかもしれないよ」


「やったあ、博士に会える!」


 仲の良い親子は博士の研究所へと向かうことにしました。


「博士! こんにちはー!」

「おやおや、よく来たね。今日は何の用かな?」


 博士は笑顔で少年を出迎えました。


「博士! タイムマシンって作れると思いますか?」

「それはいい質問だね。少年よ、あの大きな機械を見てご覧なさい」


 博士は研究所の真ん中に置かれた球体型の大きな機械を指差しました。


「博士。あれは何?」


 好奇心な少年は博士に聞きます。


「あれはね、キミが言っていたタイムマシンのようなものだよ。ただし、時間旅行というよりは未来の景色を正確にシュミレートしたうえで映し出すだけの機械なんだ。要するに未来を予知する機械だね」

「よくわからないけど博士は未来を見たってことでしょ? どうだったの? 未来ではタイムマシンはあったりするのかな?」

「ううむ、残念ながらそれは無理な話じゃな」

「どうして?」


 博士は顎髭をさすりながら答えます。


「そりゃタイムマシンが完成する前に、人類がいなくなっているからだよ」


 博士は先を語ります。


「未来人は来れないんだ。近い将来、このまま科学が発展すれば人は更に恐ろしい兵器を生み出す。人類を簡単に滅ぼすほどのね。タイムマシンの話どころではないんだ。

 それに地球にだって寿命がある。あれも一種の生命体みたいなものと考えると地球のエネルギーも無限じゃない。近い未来には枯渇し作物も動物も育たなくなるだろう。そうなれば人はただでさえ数を減らしているのに資源争いの戦争を引き起こし、また多くの人を殺すために核兵器や細菌兵器を持ち出すだろう。世界は汚染され、人類が生きていくための環境が完全になくなって人類が消えていったんだ」

「博士。それって本当のことなの? 絶対ってことはないんでしょ?」


 そう反論する少年の頭を博士は優しく撫でます。


「タイムマシンが誕生する未来は夢があるが、それ以上に未来は夢がないものだよ。私はあの機械で何通りのシュミレートを重ねたが人類の滅亡は必定だった。いまから100年以上先の話だがね。タイムマシンを作れるような未来人なんて何処にもいなかったよ」

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