第9話 世界最強の龍 爆誕
俺達は、
奴が放つ超高圧のファイアブレスには肝を冷やしたが、死人を出すことなくやり遂げた。
さて、あれだけのダンジョンボスだ、きっと高ランクのドロップ品があるはず。
俺は期待に胸をふくらませ、古代龍が消滅した所に行く。
そして、そこにあった物は、紅く一切の濁りがない球体の物と、ルビーの宝石のようなものが埋め込まれた指輪だった。
見た目はよさそうだぞ!
「鑑定」
ランク レジェンド 古代火龍王の宝玉
ランク ユニーク 火龍王の指輪、『火属性完全無効』『腕力上昇』
よし!大当たりだ!
つい、ガッツポーズをとってしまった。
まぁ、ここまで来るのに、かなり大変だった。
ダンジョンボスクラスになると、
「ご主人様、良い物がドロップしましたかな?」
「ああ」
喧嘩をし終えた、ヴァンとフィーは少しスッキリした表情を浮かべていた。
こいつらのストレス発散は口喧嘩なのか?
やはり仲がいいな。少しその距離感が羨ましく思う。
「で、さっそくするの?」
「ああ、そうだな」
「どんな感じに創造されるか見てみたかったのよね~」
「おや?まだ見た事なかったのですか?ああ、そうでしたね、あなたは15番目でしたね」
ヴァンは15番目の所だけ強調して、フィーを小馬鹿にするように話しかけた。
「何よ!そんなんでマウント取ってんの!?このエロ執事は!」
15番目?フィーってそんな後だっけ?
あ、そういえば、ヴァンの次は、ゴーレム達だったな。
数を数えているあたり、ヴァンの性格の悪さが出ているな。
「ま、まぁそれぐらいしか誇れるものがないのは悲しいわね」
フィーの返しに、ヴァンは片手を開き、耳の横におくと更に小馬鹿にする。
「おやおや、15番が何か言っておりますな~何も聞こえませんな~」
それにしても、こいつら、まだ喧嘩するのかよ。
どんだけ仲良しなんだよ。
この光景に飽き飽きした俺は、自分もこのノリに参加することにした。
「ちなみに、一番初めに創造したのはレイたぞ」
「え!?そうなの!?え!てことは、あんた二番なのー!?レイの下じゃん!あっはっはっは!」
「ちょ、ご主人様、それは内緒ですぞ!」
こうした悪ふざけは久しぶりな気がする。
ここ、最近は、常に頭を回しているから、俺自身余裕を持てていなかったかもな。
俺は、何となくだが、こういうやり取りこそ仲間って感じがする。
身内ノリでしかわからないやり取り、腹を割って言い合える仲、この無駄なやり取りこそ仲間意識を向上させてくれるような気がする。
「さっそくスキルを使うから、お前ら少し離れていろ」
「ワクワクだわ」
さて、このレジェンド
ヴァン達を創造した際に使われたアイテムは、戦闘面よりも知識を向上させてくれるアイテムを使用していたが、今回は、戦闘で使える効果のあるアイテムだ。
知力ない生物を生むのはリスクがある。
しかし、ここまで創造してきて、レイ、ヴァン、フィー、ついでにゴーレム達が俺に危害を加えることは絶対になかった。
ならば、問題ないはず。
「生物創造」
クリエイター
『マテリアルとアイテムを入れてください』
レジェンド
ユニークアイテム 雷竜の指輪
「ほお、雷竜は、中ボスエリアで倒したドラゴンですな」
「何々!この変な板に入れればいいの?」
離れていろと指示をしたはずなのだが、ヴァンとフィーは俺の両隣でクリエイターの画面を見ていた。
フィーはかなり気になっているらしく、画面の前に止まっていた。
クリエイターの画面が見えないので、フィーの首根っこあたりを持ち、どかした。
「邪魔、見えないだろ」
「ごめんなさい~、でも不思議なんだもん」
クリエイター
『手をかざし魔力を流して下さい』
確か、この時に俺のイメージも反映されるんだよな。
強そうな龍がいいよな、そんでデカければデカい程良い、あっでも、大きすぎると 魔王城に入らないから、人型の方がいいかもな。
龍のイメージが決まらず、次の工程に中々進まない俺に、フィーが痺れを切らしてしまった。
「魔王様!早くしてよ!」
「うわ!」
耳元で話しかけられ驚いてしまった。
びっくりした。
全く、少しぐらい黙って待つ事が出来ないのか、フィーは、いつも子供のように落ち着きがなくて困る。
クリエイター
『準備完了、創造しますか?』
気が付くとクリエイターが次の工程に進んでいた。
「あれ?何で勝手に進んでいるんだ?」
「ご主人様、先ほど手をかざしてしまったのですよ」
嘘!
そうか、フィーに驚いて、そのまま手をかざしてしまったのか。
「でも、魔力なんて流してないけどな」
「ご主人様は常に魔力が漏れ出ていますので……」
そうだった!
今の俺の魔力量は、魔法が得意なフィーから見ても多い方の類だ。
こんなことになるんだったら、魔力制御でも習得すればよかったよ。
そして、フィーは流石に申し訳なかったのか、または、怒られるのが怖いのか落ち込んでいた。
「ごめんなさい」
「……まぁいいよ」
まぁ、フィーに関してはこれから色々と学んでもらえばいいか。
それに、うじうじと悩むようなことがあれば、一度何も考えず、先に進めば案外いい物が出来たりするしな……多分。
さて、想像してしまうか。
「クリエイターやってくれ」
クリエイター
『承認しました』
すると、古代火龍王の宝玉と雷竜の指輪が画面外に出る。
それぞれが光を発しながら、融合していく。
いつ見ても不思議な感じだ、魔王のみが持つスキルだというのに、何故こんなにも美しいのだろうか。
あたりは、神秘的な光で満ちており、ヴァンとフィーの心を奪った。
「きれいね」
「ですな」
融合された
みるみると巨大になっていくそれに、呆然と眺めていた。
クリエイター
『完了しました』
光は治まり、クリエイターの画面はプツンと閉じてしまった。
しかし、今回の生物創造はかなりのものになり、ヴァンとフィーは驚きのあまり硬直してしまっていた。
俺自身もかなり驚いてしまい数秒固まっていた。
「これはまた……」
生み出された生物は、
それは神話の時代に出てくる雷神様という、雷を自由自在に操る神が持っていた太鼓に近しく。
そして、この龍の平然とした態度からは知性をも感じ取れた。
「鑑定」
名前 なし
種族 龍 メス
スキル『
称号 炎龍雷帝・・炎と雷を司るドラゴンの上位種であり、同種族のドラゴンは従わせる事が可能。
「ほうこれはすごいですな、二属性の龍王とは、まさに
ヴァンの言う通りだ、龍王は、普通一属性ずつで分けられている。
この龍の瞳は、鋭く、金色に近い宝石のトパーズのように輝いていた。
俺の方をジッと見ている。
名前を決めてやらないとな。
今回は、ちゃんと性別も把握したから、それに似合う名前を付けなくては。
それにしても、この龍、かなり美しいな。
この神々しさはまるで、神話の時代に出てくる古代龍にも見える。
「ライカ……ライカはどうだ?」
「キュルウ?」
おお、見た目とは裏腹に可愛く鳴くんだな。
「そうだ、お前は今日からライカだ」
すると、ライカは俺の言葉を理解しているかのように、嬉しそうに、鼻を俺の前に出す。
「キュルウ」
撫ででほしいのか?
俺はそっと鼻に手を乗せ、優しく撫でた。
ライカはくすぐったそうにしていたが、嬉しそうに鼻を俺の顔に押し当ててきた。
良かった、心を開いてくれた。
しかし、あまりの巨体のせいでちょっと痛いな。
「いい名前ね!ねぇ、ライカ」
「ご主人様にしては、悪くないネーミングセンスですな」
俺ってそんなにネーミングセンス悪かったのか。
ヴァンとフィーがライカに触ろうとすると、ライカは嫌そうに顔を背けた。
「あれ?」
ライカは、俺とは正反対に冷たい態度をフィーとヴァンに向けたのだ。
「もしかして、お前らに攻撃されたことを覚えているんじゃないか?」
「うそー!違うのよ、ライカ~、あれは魔王様がやれっていったから~」
フィーが俺に責任転嫁しようとすると、更にライカはフィーからそっぽを向く。
「キュルウ!」
「ガーン!」
かなりショックを受けたようだ。
フィーにとっての初めての後輩だからな、嫌われてしまい精神的に来たらしい。
「ホッホッホッホッホー、これは、打ち解けるには時間が必要ですな、それでご主人様、今思ったのですが、ライカをどうやって地上に出しましょうか?」
確かに、崩された階段を元に戻しても、結局ライカの姿じゃ入らないからな。
「キュルウ」
「うん?何だ、ライカ?」
すると、ライカは俺たちの話を聞いていたのか、唐突に、岩石でできた天井を見上げた。
「上を見始めましたな」
「ああ、何をする気なんだろうな」
ライカは、天井に向かって口を大きく開けた。
もしかして。
「お前ら離れろ!」
「キュルウウウウウウウ!!」
『スキル
ライカは、炎に雷を纏わせた超高圧ブレスを天井に向かって放った。
そのブレスの威力によって、ライカの周囲は埃が舞い、ヴァンとフィーが壁際まで吹き飛ばされていた。
かくいう俺も、壁際まで飛ばされた。
「ライカ!一体何を!」
ライカの方を見ると、一筋の光がダンジョンに差していた。
嘘……。
ライカの咆哮の威力は、ダンジョンの深層から一瞬で地上まで貫通し、そのまま雲を突き抜けていたのだ。
ダンジョンの壁は、壊れにくいで有名なのだがな。
天井には、ライカが通れるほどの大穴が出来ており、雲を突き抜けたことで、眩い光が差し込んでいたのだ。
ヴァンがスタスタとライカの方を見ながら、俺の方に近寄った。
「主よ、とんでもない化け物を創造しましたな」
「それはお前たちも同じだよ」
「キュルウン!」
ライカは、俺に褒めてほしそうに、長い尻尾を地面に叩きつけていた。
その振動で、ダンジョンが大きく揺れていた。
こいつはまじで、とんでもない生物を創っちまったかもな。
「わかった!わかった!よくやったライカ!偉いぞ!だから暴れるのをやめろ!」
「キュルルルウン!」
俺に褒められ、治まったようだ。
ライカには大人しくしてもらいたい、こいつがもし、町里を通れば滅んでしまう。
存在が、既に天災級モンスターだ。
「ゴッホ、ゴッホ、もーう!やってくれたわね!ライカ!」
埃まみれのフィーがふらふらとライカの方に近づく。
「キュルウ?」
自分のせいで俺達が吹き飛ばされたことに全く気付いてないライカは、首を傾げ、不思議そうな表情でフィーを見た。
「何でわかんないのよ!」
やばいな、そろそろフィーの方が怒りで暴れてしまう。
「そこまでだフィー、ダンジョンを攻略したことを、あの族長の所に報告しに行こう」
「イングルの事も心配ですな、一応回復はさせましたが」
ヴァンの奴、一応イングルの事を気にかけていたのか。
まぁ、一時的に仲間になったもんな、気に掛けるのは当然か。
ヴァンはたまに可笑しな事をするが、有能な執事だもんな。
「にしても、ライカの
前言撤回、このエロ執事が。
そうして、俺達は、新たな仲間を手に入れ、獣人が住む洞穴に帰還することにした。
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