第8話 ダンジョンボス
中層と思われる、14階層に降りると、このダンジョンの特性が現れた。
「すこし温度が上がりましたな」
「ここは火系統のダンジョンのようだな」
当たりだ、火系統は圧倒的高火力を出す魔物が多い。
火を扱うだけではなく、その能力値も計り知れない。
そしてそこからドロップするアイテムは、攻撃力を向上させてくれる効果が付与されている。
「フィー大丈夫か?」
相性的に、妖精のフィーは熱に弱いはず。
「バカにしないでよね!私ぐらいになると、熱さなんてへっちゃらなんだから!」
それならいいのだがな。
俺達は中層を瞬く間に突破し、40階層の下層まで降りていた。
◇
「熱い!熱すぎるわよ!もう無理!!」
下層まで来ると、その温度はおよそ、80度まで跳ね上がる。
フィーには厳しくて当然というか、フィー以外にもかなり厳しい。
「あなた、風の精霊に頼んで熱さをどうにかすればよろしいのでは?」
「ダメねこのエロ執事は、周りが熱いんだから風を操っても温風になるだけよ!」
「……まさか、ぺったんこ妖精に正論を言われる日か来るとは悲しいですぞ」
どこに行ってもこの二人はこの調子だな。
仕方がない、耐熱効果のあるマントを皆に渡しておくか。
「みんな、これを付けろ」
「何これ?」
「耐熱効果のあるマントだよ、300度までなら耐えきれる」
「流石、ご主人様!用意周到ですな」
「助かったぜ」
この環境はかなりまずいな、体の中の水分も持っていかれる。こまめに水分を取らなければすぐに脱水で倒れてしまう。
そしてなにより下層の魔物は、もう素通り出来るほど逃がしてはくれない。
「ご主人様このダンジョン一体何階まであるのですかな、既に40階層、そろそろダンジョンボスが現れてもおかしくないのですが」
「さあね、でも40階層まであるということは、かなり厄介なボスになりそうだね」
すると、広大なエリアに着くと、そこには魔物が待ち伏せていた。
あれは、
頑丈な鱗に守られ、飛行を自由にするため攻撃が当てにくいドラゴンだ。
「来るぞ!」
それを全員が別々の場所に避けると、次は、イングルに向かって突進を仕掛けてきた。
「おいおい、何でおれだよ!!だけどここで使わせてもらうぜ!」
イングルは、存在進化を発動させ、白豹竜に姿を変える。
体には、竜と同じ、固い鱗が纏われ、翼も生えていた。
これが存在進化か、間近で見ると、元の姿に何かを足されているという感じだな。
イングルは片手に持っていた槍を構え、
「槍術スキル!ドラゴンスピア!」
高回転に動く槍の攻撃で、
それに追撃するように、イングルは止めを刺そうと空から首を狙う。
すると、視覚から何者かの放電がイングルに直撃した。
「グハ!!」
「!?」
雷を放たれた方を見ると、もう一匹別のドラゴンが隠れていた。
そこにいたのは、雷を自由自在に操る事のできる
何故、火系統のダンジョンに雷属性のドラゴンがいるんだ?
「ご主人様どうやらここは、中ボスエリアのようですな」
ダンジョンには、ボスエリアがあるのだが、それに近づくと、中ボスエリアが現れる。
中ボスを倒さなければダンジョンボスに続く階段が現れない。
ドラゴンが二体とは厄介だな。
「イングルの奴はもう戦闘不能だ、ヴァンとフィーで片付けておいてくれ」
「承知しました」「はーい」
「では、私は手負いのドラゴンを、あなたはあっちをお願いしますね」
「自分だけ何、楽の方選んでんのよ!」
「おっほん、私はこの熱さのせいで、血液操作が使いにくくなっているのですぞ」
「はー、無能は困るわね」
ヴァンとフィーが口喧嘩をしていると、ドラゴンたちが向かって来ていた。
口をあけ、咆哮を打つ前動作をしていた。
ブウオオオオオオオウウ!!
「うるさいですぞ!」「うるさい!」
そういうと、ヴァンは
フィーは雷に有効な属性、土属性の大精霊を呼んだ。
「大精霊ちゃんお願いね!」
土の大精霊 スキル『天変地異』発動
大精霊がスキルを使うと、
「潰れちゃえ!」
グオオオオオオオオ!!
威力が凄まじく逃げる隙がない。悶え苦しむ
「こっちにまで隕石が来ましたぞ、のう、
ブウオオオオオオオ!!
ヴァンに向かって炎の咆哮を放つが、ヴァンの影移動でさらりと躱した。
「首の下失礼しますね」
スキル『血液操作』発動
「
「終わりですな」
やがて消滅していった。
さすがだな、災害級モンスターをいとも簡単に倒してしまうとは、しかしフィーに関してはオーバーキルな気もするが手加減が出来ないのか。
「う……俺は……」
イングルを安全な場所に移動しておいた。
気が付いたようだな。
「ああ、ちょうど終わったよ」
「やっぱり俺は足手まといだったか……」
「いいや、
「……旦那は優しいな」
すると、イングルは再び意識を失った。
イングルはここまでのようだな。
「魔王様~、何かドロップしてたよ」
フィーは
「鑑定」
ユニークアイテム 『雷竜の指輪』 雷系統のスキルと俊敏性が大幅に上昇。
「よくやったフィー、これは使えるぞ」
「まぁーね」
「ご主人様、戻りましたぞ、それとこちらは、レア素材の火竜の鱗でした」
うーん外れかな。
やはりレイがいないと高ランクの物がドロップしずらいな。
「そうだ、ヴァン、眷属に頼んで、イングルを獣人の群れまで送り届けてくれ」
「承知しました」
「やっぱり、足手まといじゃないコイツ」
「フィーお前は黙っていろ」
「何よ!本当の事言っただけじゃない!ムキー」
中ボスを倒したことにより、隠し階段が現れた。
ここからは深層のダンジョンボスだろうな。
気を引き締めていかなくては、全滅してしまう。
「フィーすまないが、風の精霊の力を俺に貸してくれないか?」
「別にいいけど、何で?」
「ここからは深層だ、多分だけど、床一面マグマになっているはず、深層に足の踏み場がない事は良くあることだ」
「いいよ、精霊ちゃ~ん」
風の精霊の力をかり、俺は一時的に浮遊することが出来た。
「お前たちも常に飛行状態にしておけ、マグマに落ちたら流石に死ぬからな」
さて、とうとうダンジョンボスか、一体どんな魔物が出てくるのやら。
俺を先頭に階段を下りていくと、肌に痛みが生じるほどの熱を感じた。
階段を抜けると先ほどの10倍以上の広大な部屋に辿り着いた。
床は案の定マグマが広がっていた。
「おっとこれは……」
先ほどの
床からかなり離れた場所でさえ、100度以上の温度になっているようだ。
さすがに下にマグマがあるせいで、これ以上は降りられないが、ダンジョンボスと思われる魔物はいなかった。
「どこにもいないわね~、もしかしてさっきのが、ダンジョンボスだっだりして」
「それなら何故、隠し階段が現れたのですか?もう少し頭を使いなさい」
「あーもう!うるさいわね!そんな事いちいち言われなくてもわかっているわよ!!」
こいつらには緊張感というものがないのか?
毎回喧嘩を止めるのも、面倒くさくなってきたな。
「お前たちいい加減に…」
すると、マグマの中から巨大な物体が動き出した。
あれはドラゴンか?
黒い鱗に覆われた、山よりも巨大なドラゴンが現れたのだ。
すると、ドラゴンは俺達を視認すると、すぐにうねり声を響かせた。
ブオウウウウウウウウウウウウ!!
「うるさ!」
耳を抑えるが振動として体に伝わり、その唸り声に上の階段に繋がる壁が崩れ落ちた。
どうやら逃がす気はないようだな。
うねり声は治まり、ようやく姿を見ることが出来た。
あいつがダンジョンボス。
「鑑定」
ヴァンが反射的に鑑定を使うが、そもそも魔物に対しての鑑定で得られる情報は少ない。
鑑定とは本来知能ある生物にしか効果がなく。
魔物に関しては本能のまま生きる存在のため、あまり効果がないのだ。
名前
スキル 不明
称号 不明
「
全ての種族の頂点とも呼ばれる龍だ。
ダンジョンとはそんな化け物までも生み出してしまう。
「これは中々骨の折れる戦いになりそうですぞ」
「あたしがいるから大丈夫よ!」
「来るぞ」
「ご主人様!逃げますぞ!」
「いや問題ない、
俺は、ファイアブレスを片手で掻き消した。
「これは!!」
古代龍も驚いているだろうな。
俺は魔王になったことにより、魔王の称号を手に入れていた。
その効果は、『戦闘時のスキル発動時無敵効果』というもので、俺がスキルを使用するタイミングは俺自身無敵効果が付与されるものだ。
今までの
しかし今は、この魔王の称号のおかげで、相手の攻撃は、ほぼ無効化することが出来るようになったのだ。
「まさかブレスの時間を操作して、掻き消すとは驚きですぞ」
「そんな力あるなら、最初から言っときなさいよね」
「すまん」
さて、初手の攻撃は無駄だったな、そこからどう動く古代龍。
ブオウウウウウウウウウウウウ!!
するとまた同じように超高圧のファイアブレスを放つが、また俺のスキルで掻き消した。
「何度やっても無駄だと言うのに、フィー!行けるか!」
「もう少しだけ時間稼いで、今召喚してるから!」
俺は、風の精霊の力をかり、古代龍の頭上まで移動した。
「剣聖スキル!
十字型の斬撃を古代龍目掛けて飛ばすと、古代龍はご自慢の爪で弾き返してきた。
「あぶね!」
剣聖スキルを打ち返してきやがったぞコイツ。
しかし、これで時間稼ぎさせてもらう。
俺は剣聖スキルを使いまくり、古代龍の注意を俺に引き付けた。
「私を忘れてもらっては困りますな!」
ヴァンは古代龍の首を狙い血液操作のスキルを使った。
「
しかし、首に到達するまでにその巨大な鎌は蒸発してしまう。
「やはり倍の血を使ってもダメですか」
古代龍が背後にいたヴァンを見る。
俺はそれに気づき、何かを仕掛けてくると思い、すぐに声を上げた。
「ヴァン!一旦下がれ!何かしてくるぞ」
「え?」
古代龍の尻尾がマグマから現れヴァンに向かって迫り来る。
後ろに逃げようとするも、その巨体の尻尾はヴァンの元にすぐに到達した。
「これはやばい奴ですな」
直撃した。
ヴァンは勢いよく吹き飛ばされ、壁に埋もれた。
「グハ!!」
口から血を吐き出すが、すぐに体を起こしていた。
「ヴァン!大丈夫か!」
「おやおや、あばらの骨が肺に刺さって痛いですな」
さすが吸血鬼、なんていう生命力だ。
あの攻撃を受けてもまだ、余裕なそぶりを見せていた。
「不用意に近づくな!」
「申し訳ございません」
ヴァンの超回復のスキルで、みるみると怪我が治っていく。
運のいい奴だ。あのままマグマに叩き落されていたら完全に死んでいたからな。
「魔王様準備OK!!」
ようやくフィーの準備が完了した。
「ヴァン!離れるぞ!」
「承知!」
すぐにその場から離れ、フィーの攻撃の巻添いを受けないところに移動した。
「これで最後だ、剣聖スキル
古代龍の足元のマグマに向かって斬撃を飛ばし、軽い目くらましをする。
「フィー今だ!やれ!」
「もーう妖精使いが荒いんだから!」
フィーは雷、水、風の大精霊をそれぞれ召喚していた。
「大精霊を召喚するの、ちょー疲れるんだからね!」
『
その強烈な魔法は古代龍の周りのマグマまで吹き飛ばし直撃させた。
ブオウウウウウウウウウウウウ!!
壁の方まで吹き飛ばされた古代龍の体には、無数の亀裂が出来ていた。
「おやおや、可哀想ですな」
「これで終ると思ったが頑丈だな」
今の一撃で満身創痍の古代龍の体から黒色の血が流れていた、それはマグマに落ちても蒸発していないことがわかった
「おやおや、古代龍様の血は黒なのですな」
すぐに、ヴァンは血液操作のスキルで古代龍の血を傷口から吸い取る。
「この黒い血液なら蒸発しませんな」
「ヴァン止めを刺せ」
「はい、先ほどのお返しをしなければなりませんね」
古代龍は体を動かすことが出来なかった。
壁にもたれると最後の足掻きに、弱弱しいブレスを放つ。
「
それを掻き消すと、頭上には、ヴァンが作り上げた黒色の悍ましい巨大な鎌が出来ていた。
「さようなら、
弱り切った古代龍の首を両断、ゆっくりと頭と首が離れ落ちた。
その巨大な首と体はマグマの中に沈んでいく。
「この血はいいですな、大切にとっておきたいですが、生血じゃなくなるので使えなくなりますな」
「そんな物騒な物早く捨ててしまえ」
「ひどいですな、ご主人様は」
「どうやら終わったようだな」
古代龍の体は分子レベルに消滅していく。
これでダンジョンボスを突破した、このダンジョンに魔物が生み出されることはなくなっただろう。
「ねえエロ執事良かったわね、私のおかげで命拾いして」
「あなたがいなくても、ご主人様が倒されていましたよ」
「嘘ね、だってご主人様の攻撃全然効いてなかったもん」
「これ!失礼でしょうが!」
地味にフィーの言葉に傷ついてしまう。
確かに俺一人じゃ絶対に勝てなかったな。
「ご主人様のスキルのおかげで、あのブレスを防いだのですよ」
「それもそうか~ありがとう魔王様!」
「ああ」
ヴァンのフォローにも少し傷ついてしまう。
「まぁ一番の功労者は間違いなくあたしだけどねー!!」
「どうですかな、最後に止めを刺したのは私ですけど」
「はぁー!あんなのイングルでも止め刺せたわよ!」
「どうですかな」
こいつら本当仲いいな。
喧嘩するフィーとヴァンを置いて、空中から降りると、古代龍の死体があった場所に近寄った。
さてそろそろ何かドロップしただろう。
そして、そこにあったのは……。
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