5
微かに叫び声やら何やらが聞こえてくる。
よく見ると、沖の方から海が真っ赤に染まっていっている。
その範囲が徐々に広がっていっているのがわかる。
「な、何?」
サーファーやら波で遊んでいた人達が、大慌てで砂浜に戻ってこようとしている。
パラソルもそのままに、身一つでバラバラと一斉にみんなが砂浜に向かって走り出す。
叫び声がして沖の方をみると、必死に逃げようとしているサーファーの後ろから真っ赤な口が波の隙間から見える。
無情にもその口は閉じられ、サーファーの下半身はかじり取られる。
何度も口が閉じられ、その分サーファーの体はどんどん小さくなっていき、真っ赤な血が広がっただけだった。
そして、何かを隠していた波が収まり、何かは姿を現す。
その瞬間絶叫がおき、その波は電波していく。
「サメだ!!」
誰かが叫んだ。
その声に悲鳴が起きる。
サメは少し満足したのか、巨大な姿を悠々とさらす。
どこに隠れていたのか、その姿は小型のトラックぐらいはある。
なのに泳ぐ姿は、巨体に似合わず静かで優雅だった。
サメはバラバラと逃げ出す人達を冷たい目で睥睨してから、海の中へ戻った。
背びれだけが海に目印のように浮かんでいる。
その姿のまま近くに居る人間へと襲いかかっていく。
圧倒的な海の王者のスピードに呆気にとられた人達はどんどん口の中へと放り込まれていく。
逃げ出そうとするが、叶うはずもない。
一緒に飲み込んだ浮き輪やサーフボードもまとめてサメはかじりとり、全てを巨大な腹の中へと収めていく。
ゾッとした。
サメってさっき倒した一匹だけじゃなかったんだ。
ベンさんが倒したサメが子供のように思える程、その姿は巨大だった。
サメは少しずつだが、砂浜の方へ向かってきている事がわかる。
赤い色が海に広がっていく事からもわかる。
サメに気づいているのか居ないのか、パラシュートを引いていた小型の船がサメへと近づいていく。
サメは背びれを海の中へと潜らせた。
避けたのだろうか?
船が真っ赤な海を横切ろうとした時、パラシュートを繋ぐロープを噛みちぎるようにサメは飛び跳ねた。
その巨体は日に輝いて、とても美しかった。
空中を楽しんでいた人は、あまりの事に何も出来ず無防備に海に落ちて、バシャバシャと少しでも距離を取ろうとしているが、サメは全く関係ないとばかりにパラシュートごと丸呑みした。
咀嚼している間に小型の船は旋回し、無防備に人を食べているサメに、勢いよくぶつかった。
サメは少し押し戻されたが、何事もなかったように食べ続けている。
その姿に恐怖したのか、船はサメから距離をとろうと慌てて浜へともうスピードで走り始めた。
咀嚼が終わったのか、やっぱり不快だったのかサメは船をもうスピードで追いかけ始める。
徐々に背びれが船へと近づき、体当たりを始める。
その度に船はユラユラと揺れ、乗っている人間たちは放り出されないようにしがみついて居るが、何人かは海に落ちてしまい、巨体な体に押し潰されたりしている。
だが、少しずつ砂浜へと近づいていっている。
サメ苛立ったかのように海の中に完全に潜りこむ。
船はその隙に逃げようとしているが、徐々にスピードが落ちていってるのがわかる。
船上に居る人が慌てふためいているが、何をしているのかはわからない。
「下にあるエンジンを食ってるんだろうな。随分と知能が高そうだ」
ポツリとシリルが呟いた。
言葉に通りに船は完全に停止してしまった。
誰も近づけない海の上に取り残された人達は、なんとか逃げようとしているが、背びれがグルグルと船の周りを嘲笑うかのように回っている。
恐怖に耐えられなかった一人が海へ飛ぶこむと、サメはすかさず周りこみ悠々と飲み込む。
その姿を見た船の人達はこちらに届く程の叫び声をあげる。
グルグルと回っていたサメは遊んでいるかのように、時々船に向かって体当たりをしている。
その度に船は枯れ葉のようにグラグラと揺れる。
何度目かの体当たりで船は完全に横転し、ひっくり返ってしまった。
後は同じだ。
順番にサメは腹の中へとおさめていく。
水面は赤く静寂に戻った。
少しでも海面から離れようと、砂浜で遊んでいた人達は走って逃げている。
海に入っている人は、誰も居なくなった。
サメは次の獲物を探そうと、砂浜へと向かってくる。
浅瀬で隠しきれなくなった巨体が徐々に出てくる。
怯えた警察官が押し出されながらでてくる。
「なんとかしろよ!!」
「こういう時の為に居るんだろ!!」
怒鳴られているが、完全に腹の出っ張った警察はこんな事態を想定していなかったのだろう。
完全腰がひけている。
それでもサメは海の生き物だ。
海上に出てくる事はないだろうと高をくくったのか、砂浜で大声で叫ぶ。
「止まれ、撃つぞ」
当然サメに言葉が通じる訳がない。
警察官がサメに向けて銃を撃つ。
ただ、大きさが大きさだ。
サメにとっては玩具の弾が当たったぐらいのダメージしかなかったのだろう。
続けて何度も警察は何度も発泡するがサメの進行は止まらない。
そのまま波と砂を引き連れたまま、大きく口を開け砂浜に立っていた警察官を頭から丸呑みにsた。
砂浜が血に染まっていく。
ボリボリと骨を噛み砕く大きな音がここまで聞こえてきている。
砂浜にとどまっていた人達は、あまりの光景に立ち尽くしていた。
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