無慈悲なる生き物
1
臨時収入が入ってから、すぐに僕はゲームを頼んだ。
在庫があったからゲームは1日で届き、僕は毎日のように攻略に勤しみ、シリルは僕のやっているゲームの画面を眺めながら本を読む。という日常が戻ってきた。
ヘレンさんはオリヴィアさんにも会ったようで、帰れない間もしっかり二人の事を見てくれていてとても助かったと褒められたようで、その日の夕飯は御馳走だった。
ヘレンさんも僕達が居ない間にベンさんと思う存分イチャイチャ出来たみたいで、何ならもう何日か行ってても良かったのよ。と言っていた。
いや、冗談じゃなくいきたくないです。
またあんな目にあうかと思うと、ゾッとする。
アイラとライラは可愛いけど、出きればもう行きたくない。
やっぱりシリルの言う通り、引き込もっているのが一番精神の安定にもいいかもしれない。
僕は時々ネットで攻略法を見ながらも、順調にゲームを進めていく。
上手く行けば家に帰るまでに、攻略出来るかもしれない。
そう思うとワクワクする。
引きこもり万歳だ。
帰ってきてから数日、ヘレンさんは機嫌がとても良かった。
だけど、また僕達が外にもでずゴロゴロしているのが分かると、段々と機嫌が悪くなっていくのが分かる。
無言で、僕らに何かを訴えかけてきている。
シリルなんかは無視してるけど、居候の僕は気が気じゃなくなる。
そんなある日の夕食。
珍しくベンさんも食卓についている。
ベンさんは夕食なのに席に着いただけで、食事には手をつけていない。
それもそうだ。
いつものようにフルフェイスの仮面をつけているのだから。
だけど、シリルもヘレンさんも全く気にしていない。
いつもの事なんだろうか?
僕だけが挙動不審になってしまう。
「ウーウー」
ベンさんが何事かを言う。
「嫌だ」
「いいわね」
その言葉を聞いて、シリルとヘレンさんが真逆の反応を示す。
えっと……
僕は黙って、ご飯を食べ進める事にした。
また何か言って、シリルに頬をつねられるのは嫌だ。
あれは地味に痛い。
「ウーウー」
「そうね。ベンの言う通りよ。親と子の交流は必要よ」
「家の中だけで十分だろう」
「ウーウー」
「ベンだって貴方にいい所を見せたいのよ。ねえ」
ヘレンさんがベンさんに抱きつくと、照れているのかベンさんの耳が赤くなったのが見えた。
両親のイチャイチャに、シリルは冷めたような目をしている。
僕には何を言っているか全く分からないが、三人は会話を続けている。
「私、あなたが大物を釣ってくるのを、楽しみに待ってるわ」
「ウーウー」
ベンさんがドンと自分の胸を叩く。
「俺は行かない」
「シリル」
あ、この目はベビーシッターを引き受けた時と同じだ。
またヘレンさんの説教が始まりそうだと、僕は察した。
「行きなさい」
「嫌だ」
「行かないなら、当分おやつ抜きにするわよ」
シリルの声がつまる。
重度の甘党のシリルが、おやつ抜きだなんて耐えられるはずもなかった。
渋々ながらもシリルは頷いた。
「ウーウー」
「そうね、行くとなったら準備が必要だものね」
「ウーウー」
ベンさんは最後に僕に何かを言ってから、席を立って出ていってしまった。
僕は首を傾げたが、ヘレンさんは機嫌よさそうにご飯を食べ続け、シリルはむすっとしたまま、何も説明をしてくれなかった。
え、僕だけ何も分からないんだけど。
僕は説明してよ。という思いを込めてシリルを見たが、シリルは僕を睨んだだけで、何の説明もしてくれなかった。
ヘレンさんの機嫌がいいまま夕食は終わり、シリルはさっさと自分の部屋に帰ろうとするから、僕も追いかけて部屋に入る。
入るとすぐにシリルは僕の頬を無言で捻りあげた。
痛いよ。
何でだよ。
今回は僕全く何もしてないじゃん。
理不尽さに抗議したが、シリルは全く聞いてくれなかった。
とりあえず、ベンさんとどこかへ行く事になったようだ。
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