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 それから僕らは、新陸を深めるためにと三人が帰ってくるまで、カードゲームをやって時間を潰していた。

 リッキーは退屈しないようにと、簡単に出来るゲームなどを沢山持ち込んでくれたらしい。

 そういう所にまで気が回るだなんて、凄いと思った。

 僕の勝敗は勝ったり負けたりだったけど、楽しかった。

 友達とカードゲームが出来るなんて思ってなかったし、本当に来て良かった。

 日がすっかり暮れて、夜になりそうになってから三人は帰ってきた。

 

「随分と遅かったな」

 

 シリルが不満げに言うと、げっそりとしたメイナードが答える。

 

「シンディがあれも欲しいとか、これも欲しいとか我が儘が多くて時間かかった。その上、帰りにマイケルが道に迷ってさ。だから僕は分かれ道は右だって何度も言ったのに」

「悪い、悪い」

 

 マイケルがカラカラと笑いながら、メイナードの肩をバシバシと叩く。

 メイナードは嫌そうに眼鏡のブリッジを上げながら、まだ文句を言っている。

 

「お疲れ」

 

 リッキーがマイケルとメイナードにバドワイザーの缶を渡すと、マイケルは一息に飲み干し、メイナードはぶつぶつ言いながらも、プルタブを引いて飲み始める。

 

「私、汗かいちゃったから、シャワー浴びてくるわ。夕食の準備よろしくね」

 

 それだけ言うとシンディはさっさとシャワーを浴びにいってしまった。

 え、僕達が準備するの?と思ったけど誰も不満に思っていないのか、笑っていた。

 夕食は簡単に済まそうって事で、外でバーベキューをする事になった。

 メイナードは二人のお守りで疲れたと言って、準備が出きるまで部屋で休んでいると部屋へといってしまった。

 ずっとマイケルとシンディのイチャイチャを見せられたんだろうな。と行きの事を思い出して、少し同情してしまった。

 力自慢のマイケルや、道具の場所を知っているリッキーが中心になって道具を倉庫へと取りに行き、準備を始めた。

 やらないと、ずっとご飯が食べられないしね。

 みんな頼れる感じの人ばかりで、こんないい友達が沢山いるシリルを、少し羨ましくなった。

 僕は後ろをついていくだけの非力さで、あんまり役に立たなかった。

 みかねたシリルが、クレアを手伝ってこいと言うので、二人で喋りながら野菜を切ったり洗ったりしていた。

 準備が終わったぐらいに、シンディとメイナードは別荘から出てきた。

 各々好きな飲み物を掲げて乾杯をしてから、買ってきたものをどんどん焼いていく。

 高そうな肉とかを切ったりもせずに、パックから出してそのまま焼いていく。

 焼いた肉を口に入れる度に、誰かが旨いと上機嫌に言うから、どんどん肉が焼かれていく。

 野菜はほんのちょびっとだけど、誰も何も言わない。

 うるさく言う大人もここには居ないし。

 さっきは僕と同じオレンジジュースを飲んでいたクレアも、軽いお酒を飲んでいて、目元が少し潤んでいてとても可愛く見えた。

 調子に乗って、焼けたものをどんどんクレアの皿に乗せていたら、シリルが無言で皿を出してくるからついでに一緒に乗せてやる。

 そんな感じで楽しんでいた。

 

「おい、バドワイザーがもう無いぞ」

「じゃあ私が」

 

 相当呑んだのか、酔っているようなマイケルが大声で告げ、座っていたクレアが取りに行こうとすぐに腰を浮かせようとするから、慌ててとめる。

 

「重いから僕が持ってくるよ。クレアは待ってて」

 

 言うとクレアは嬉しそうに笑った。

 僕だってそれぐらいは出来るんだからね。

 冷えたものはもう全て出してしまったのか、バドワイザーは外に出ている分しかなかった。

 一体どれだけ飲んだんだよ。

 と思いながら思い箱を持っていると、上の階から何かが軋んだような音がした。

 もしかして、飲みすぎて気持ち悪くて誰かが部屋で休んでいるのかもしれない。と思った僕は一回箱を置いてから様子を見に行く事にした。

 音はリッキーの部屋からするみたいだ。

 大丈夫かとドアをノックしようとした時、

 

「あぅん」

 

 という喘ぎ声のようなものが聞こえた。

 それから男女のクスクスと笑うような声。

 僕は音を立てないように、こっそりとドアを細く開けて中をのぞきみる。

 ベッドの上で裸の女が、同じく裸の男にまたがって腰を振っている。

 思わず声が出そうになった。

 男は寝そべっていて顔は分からないが、マイケルではないだろう。

 背中を向けて陽気に笑っているのは、シンディだろう。

 

「おい、あまり大声を出してると、マイケルにばれるぞ」

 

 声からすると、下に居るのはリッキーのようだ。

 

「別にいいわよ」

「悪い女だな」

「お互い様でしょ」

 

 シンディが体を倒し、リッキーと重なりあう。

 体液の混ざるグチャグチャとした音が強くなる。

 僕は音を立てないように、細心の注意を払って扉から離れた。

 音を出したとしても、二人は夢中で気づかなかったかもしれないけど。

 そのまま赤くなった顔を覚まそうと、僕はフラフラと外へと戻った。

 さっきまで喋ってた友達の、そういう場面を生で見た衝撃は精神的にもきつかった。

 戻ってきたらシリルは眉間にシワを寄せていたが、気にしてる余裕はなかった。

 

「おい、ロイ。酒はどうしたんだ?」

 

 マイケルに言われて、僕は何で別荘の中に入ったのかを思い出した。

 あ、衝撃的すぎてすっかり忘れてた。

 

「ごめん、すぐにとってくる」

「全く、君は何のために行ったんだよ」

 

 メイナードがブリッジをあげながら言ってくる。

 

「やっぱり自分で行けばよかったな。オレも行こうか?」

 

 マイケルが腰を上げようとするから「いい、大丈夫」と言って走って置きっぱなしにしてしまった、バドワイザーの入った段ボールを取りに行った。

 もしマイケルに気づかれたら、一日目にして修羅場が起こる所だった。

 忘れていた段ボールを取りに行った時に、わざと乱暴にドアを開けたりしたけど、僕は悪くない。

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