昭和のラブコメ

進藤 進

第1話 昭和のラブコメ

「いっけなぁい・・・」

鼻にかかった甘ったるい声で圭子はダイニングに入ってきた。


「寝坊、しちゃったぁ・・・」

着替えたばかりの制服から覗かせるバストの谷間が悩ましい。


同居している勇祐は喉が上下するのを必死に隠そうとしていた。

だが、目ざとく見つけた圭子が大げさな声を出した。


「あっー・・勇祐のエッチィ・・・」

ワザとらしく胸を隠すようにして部屋を出る。


素早くテーブルに用意されていた勇祐のトーストを手に取る。

そのまま口にくわえると、玄関に置いてあったカバンを持ち出て行った。


「あ、あいつめぇ・・・」

勇祐は嬉しそうに呟くと、同じくトーストをくわえて家を出るのだった。


毎朝の行事に。

二人は胸をときめかせ、学校へと走る。


「遅刻、遅刻ぅ・・・」

と、トーストをモグモグさせながら。


「ひょんなる(笑)」偶然で。

圭子と勇祐は同居するはめになった。


高校一年生。

十五歳の春のことだった。

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