異世界で【花嫁修業】のパートナーに選ばれた。そして俺は彼女が着るドレスになった

アカアオ

第1話 どうやら俺は彼女のドレスになったらしい

 「なぁ……これ本当にお前がやったのか?」

 「それはちょっと語弊があるよセンロク。これは私と君で得た成果と言うべきだ」


 目の前に映る光景はまさに圧巻だった。

 ゴブリンやエルフ、果てはドラゴンなどの名だたるモンスター達の死体の山が出来上がっている。


 「君を選んだ私の勘は間違ってなかった。こんなに自分をさらけ出せる戦いは初めてだったよ」


 俺に語りかけてくる少女は上機嫌にそう言いながらあたりをスキップする。

 その途中で彼女は鏡を見つけ、そこに自分の立ち姿を映した。

 

 高身長、胸は控えめ。

 髪は雪を連想させるほど真っ白で、瞳孔には十字架の様な模様が浮かび上がっている。


 そんな彼女が身に纏っているのはドレスだった。

 真っ黒で所々がボロボロな見るだけで痛々しいドレス。


 ドレスの装飾を担っているのは赤茶色になった返り血と体の全身から生えるおびただしい数の錆びた刃。

 胸元に飾ってるブローチにはギョロギョロと動く目玉が一つ配置されている。


 「こんなに素敵なドレスになった感想は無いの?」

 「誰かの衣服になるって感覚は慣れないな」

 「それじゃぁ、私と一緒にあの死体の山を作った時の感想は?」

 「あれは最高だった。爽快感、優越感、全てにおいて俺が今まで求めていた感覚そのものだった」

 

 そう、この危険度MAXな黒いドレスは俺の成れの果てなのだ。

 拝借魔公はいしゃくまこうなんて聞き馴染みのない種族である彼女、コービスとの契約によって俺は彼女の正装ドレスになったのだ。


 「それじゃぁ力試を済んだことだし、ボチボチ行くとしよう」

 「そういや、コービスはなんかやる事があるんだよな?」

 「そうだよ。一人前の拝借魔公はいしゃくまこうになる為の【花嫁修業】に合格するために君と契約したんだから」


 コービスは右手をそっと眼球のブローチに添えてクスクスと笑った。


 「ここまで来て私の【花嫁修業】に付き合わないって言うのは無しだからね、センロク」

 「俺はこの状況が案外気に入ったんだ。【花嫁修業】だってなんだって付き合ってやるよ」


 ここは俺が暮らしていた日本とは違う異世界。

 生物を特殊な力を持った衣服に変換して纏うなんて魔法少女もビックリな能力を持つ拝借魔公はいしゃくまこうが世界を牛耳っている。


 そんな異世界でこの俺、センロクこと蒼井銭六あおいせんろくがコービスと契約を結ぶ事になったのは1時間ほど前の出来事だった。

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