星からの寄付

 我々の宇宙船から惑星地球が見えてきた。ㇰパルグ歴760年、我々は初めての別の惑星の知的生命体と接触することになった。あちらの各国の代表にも既に連絡してある。


 着陸すると、大きな人だかりができていて祝福ムードになっていた。我々の姿が地球人と同じく二足歩行で両手があり同じくらいの大きさと、比較的姿が似ていたことが作用したのだろう。


 地球人はみな古臭く、みすぼらしい服装に身を包んでいた。各国のトップの服装も、一般人も、全員である。地球のファッションはㇰパドゥーク星のファッションから少なくとも100年ほど遅れている。


 文化の交流会が元々予定されていたので、我々の代表が衣服の交換会に変更したところ、あちらの代表にあっさりと了承してもらえた。


 宇宙船の中の新しい服を集めて地球人代表との交流会に挑む。気味が悪くなるほど女性政治家が、我々のファッションに興味をもったらしく、着せてみる。するとたちまちその醜い顔までもが美しく見えるようになった。


 我が星のファッション技術は着ている人の美しさを最大限まで引き出し、環境に違和感なく調和するレベルなのである。しかも快適な温度設定なども設定できる。

 

 これが地球で話題にならないわけがなかった。滞在期間中には服を恵んでくれという「服乞い」まで現れるようになった。


「我々の星にはいらなくなった服が沢山あるから、それを次のときに持ってくる」と軽く約束してしまった。


 最初の地球訪問から一週間、今度は我々の星で集めたおさがりの服を大量に持ってきたところ、前回よりも歓迎された。「服乞い」も増えていた。発展途上惑星への寄付活動としてㇰパドゥーク星人から集めたものだったので、勿論無料で配布した。


 想像以上の速さで地球人が服を取って行くものだからあっという間になくなった。


 それから毎週地球のあちこちで我々ㇰパドゥーク星人は地球人に服を配るようになった。数十週したころには地球人の衣服企業から迷惑だと連絡を貰うようになったが、大事なのは企業の意見ではなく、より多くの地球人が服に満足するかどうかである。もちろん無視した。


 それから何十年とㇰパドゥーク星と地球の交流は続き、衣服企業から迷惑だと言われなくなった。地球人曰く、衣服企業というものはもう無くて、服はㇰパドゥーク星人からもらうものになったらしい。


 だがある日を境にㇰパドゥーク星で集まる衣服の数が減少していき、とうとう0になってしまった。手ぶらで地球に行っても暴動が起きるだけだと考え、これ以上地球に行かないことにした。


 そして地球にはㇰパドゥーク星の服を着た、服の編み方すらしらない人間が残ったという…

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