おまけ52・久美子、虐待を疑われキレる

 2人の、いや3人の家に帰って。

 子供のいる生活が始まって。


 大変ではあったけど、私たち夫婦の愛の証がいる生活。


 まあ、私の基準では幸せな生活。


 なんだけど……


 なんかさ、夫が延々働いてるんだよね。

 四天王の仕事があるのに、帰ってきたら延々家事をしてくれるんだよね。


 ありがたいんだけど……


 正直、不安になる。

 ノイローゼになるんじゃないだろうかと。


「あなた、そこまでやんなくてもいいよ?」


 山河に授乳していたら、夫が死んだ目で掃除している。

 授乳、すぐに終わらないけど、それを考慮に入れて掃除計画くらい立てられるし。


 でも、寝ないで仕事ばかりしている夫にその点を指摘したら


「キミも大して寝て無いだろ」


 そう言って、掃除機を手放さないし。

 冷蔵庫の中身のチェック、買い物にまで行ってしまう。


 ……こんなの奴隷じゃん。

 嫌だよ、そんなの。


 自分で自分を追い込んで、彼の中から私たちへの愛が消えたらどうしよう……?


 私は私で、眠くてしんどかったけど。

 悩んでしまった。


 夫が働き過ぎなんだ。


 悩み抜いた末、母に電話したら


「当たりの旦那さんを引いたわね」


 ぐらいしか言わないんだよね。

 なんか嬉しそうに。


 私は全然嬉しく無いんだけど!

 不安になるよ!


 子供が生まれたのに、自分は不幸になった。


 そんな風に彼が思ったらどうするのよ!


 そしたら母は


「お父さんなんて、ほとんど手伝わなかったわよ? まあ、お父さんは学者だから研究で忙しかったんだけど」


 覚悟もしてたしねー。

 そんな、母親の妙なマウントめいた思い出話を聞かされて


 内心「知るか!」と思った。



 そしてある日のことだ。

 彼が考えていることが分かってしまった。


 自宅ソファで山河をだっこしながら居眠りしていたら、起きたら彼が帰宅していて。

 何か仕事してた。


 で、そこでふたり話をしていたら。

 何で彼が馬車馬みたいに働くのかがとうとう判明した。


 その理由は……


「(私が)育児ノイローゼになることを危惧してる」


 最初何を言われたのか分かんなくて。

 ボケーっとしてた。


 でも、段々意味が浸透してきて。


 ……メッチャクチャ、ムカついた。


 しんどいくらいで、あなたの子供を虐待するクソ女に変貌するんじゃないかと疑われていたということに。

 やるかボケェェェェッ!


 心の内で叫んで。


 私は山河にちょっとベビーベッドで寝て貰うことにした。


 そしてその後速やかに


 彼にキッスをして。

 夫婦の寝室に引っ張り込んだ。


 ……忙しさがあったから夫とはしばらくご無沙汰だった。

 そのせいもあるかもしれないよね。


 だから寝室に引っ張り込んで。

 彼に、いつも山河に授乳している私の胸を、妻として晒したら。


 ちゃんと即反応してくれて。

 とても、燃えてしまった。


 ……愛する人に求められるって幸せなことだよね。

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