第100話 二人目の転校生


 GW明けの月曜日。俺はいつもと同じように紅さんの運転する車で美麗と一緒に登校した。

 校門ではGW前と変わらずに十人以上のファンの人達が俺達が車から降りてくると朝の挨拶をしてくる。


 俺も慣れて来て、手を上げながらおはようございますと言うと笑顔で駅の方に歩いて行く。こんなものなのかな。


 昇降口で美麗と別れて俺の下駄箱に行く。上履きは靴袋に入れているので行く必要は無いのだが、下駄箱がファンレターボックスに変わってしまっているのでそれを取り出す為だ。


 毎日、会えるんだからくれなくてもいいのにと思うのだが、こればかりは仕方ない。階段を上り教室まで行くと芦屋さんはもう来ていた。

「麗人お兄様、おはようございます」

「おはよう、芦屋さん」


 よく見ると芦屋さんの前の席が一つ空いている。誰が座っていたんだっけ?


 そんな事を思っていると


―なあ、知っているか。今日転校生が来るんだって。

―今時?もう三年生だぜ。受験期に転校って?

―ああ、俺もそう思う。それにもうすぐ中間考査って。

―あっ、でも芦屋さんも今頃だったような。

―うーん、分からん。


 分からないでいて下さい。



 そして予鈴がなって桜庭先生が入って来た。教室の前側の入り口が開いている。


 私、桜庭京子。早乙女麗人と芦屋真名がいる3Aの担任。この二人でさえ頭いたのに、GW一週間前にいきなり教頭から


「桜庭先生、GW後に転校生が来る。名前は文子・セガールだ。君も聞いた事がるだろう、ソティーブン・セガールの娘さんだ」

「……………」

 だから何よ。私のクラスに入れようなんてしないでよね。


「もう、分かっていると思うが、彼女も現役の女優だ。という訳で頼むよ。君の今迄の活躍で来年度は学年主任が確定している。もう少しだ、頑張ってくれ」

「…分かりました」


 あの末生りヒョウタン頭の教頭が都合の悪い事は全部私に押し付けてくる。頭に来る。GWでHPを補充したのに。なんで私だけなのよ。


 他の先生がざまぁみろって顔している。覚えてろ、お前達。来年度は苛めに苛めてやるからな。なんてしたら直ぐに解雇か…。運が悪い。



「皆さん、おはようございます。今日は転校生を紹介します。入って来なさい」

「はい」


 うちの指定服を着て入って来た。似合っている。


「「「「「おーっ!可愛いーっ!」」」」」


 男子生徒が騒いでいる。


―ねぇ、あの子。

―そうだわよね。

―うん、間違いない。


「皆さん、初めまして。私の名前は文子・セガール。大阪店王寺高校からやって来ました。ソティーブン・セガールは私の父です。今日から皆さんと一緒に勉強出来る事を楽しみにしています」


―すげえ、店王子高校と言ったら、進学校でもトップレベルじゃないか。

―ああ、とんでもない子が入って来たな。

―背が高いな。

―ああ、俺よりありそうだ。

―あれ、あの子、ゴメラと心が通じている役やった子だ。

―あっ、本当だ。

―俺のこのクラスで良かったぜ。


「皆さん、文子・セガールさんも特別校則対象者です。言動には十分に注意するように。席は芦屋さんの前の空いている席に座って下さい」


 また面倒な子が入って来たわ。目的はどうせ麗人お兄様。


「はい」


 文子さんが、ゆっくりと自分の席に…。あれっ、俺の前に来た。

「麗人さん、約束通り転校してきました。末永く宜しくお願いしますね」


―おい、どういう事だ。もう名前呼びしているぞ。

―あの言い方は、もう早乙女と何らかの約束が。

―これは大変な事になるぞ。

―うんうん。


「皆さん、静かに。早乙女君、時間を見て校内を案内してあげて」

「俺…ですか?」

「そうです。特別校則対象者同士の方がよいでしょう」


 そうなのかな?


「私、芦屋真名よ。宜しくね」

 何でこんな子が来るのよ。


「ええ、知っていますよ。同業ですから」

 ふん、面倒な子がいるものね。


 嫌な予感しかしない。



 桜庭先生が教室から出て行って、直ぐに一限目の先生が入って来た。

「先生、私教科書をまだ頂いていないんです。麗人さんの教科書を一緒に見たいので、彼の隣席に移りたいんですけど」

「君は…確か、今日から転入して来たセガールさんだね。隣の望月さんの教科書を見せて貰いなさい」

「いえ、私は麗人さんの教科書が」


「セガールさん、我儘言っていないで。私の教科書見せるから机をくっ付けてよ」

 全く、なんでこんなに早乙女君の傍に邪魔な女が来るのよ。


「セガールさん、早くしなさい。授業を始めます」

「はい」

 今は仕方ないか。



 午前中の授業は文子さんが望月さんの教科書を見るという事で納まり、予鈴がなって昼休みになった。


「健吾、購買に行こう」

「おう」

「あの麗人さん、私お昼一緒に食べたいのです。ステラに連れて行って下さい」

「ステラ?」

「はい、生徒が集まって一緒に食べる所です」

「ああ、学食か。そこは諸々の事情で行かない事にしているんです」

「そうなんですか。お昼どうしましょう?」

「俺と一緒に購買に行きますか?」

「麗人、それは不味い」


「そうだな。文子さん、菓子パン何か欲しいものありますか?」

「菓子パン?なんですかそれは?」


 これはまた凄いお嬢さんが入って来たな。仕方ない。

「健吾、文子さんを連れて行く」

「分かった」


 そこに美麗と優美ちゃんがやって来てしまった。

「お兄ちゃん、お弁当食べ…。あっ、もういる」

「美麗、ちょっと待っていてくれ」

「分かったけど…」



 俺は文子さんを連れて廊下を歩いてのだが


―あっ!

―今日入って来た転校生じゃないのか。

―凄く可愛いな。

―しかし、何でいつも早乙女のクラスなんだよ。

―仕方ない、特別校則の所為だ。

―もう少し勉強頑張れば良かった。


「麗人さん、賑やかですね」

「ええ、その内馴れます」


 購買に着くと大分並んでいた。買えるかな?


 少し待って最前列に来ると

「これが菓子パンという物ですか。あっ、サンドイッチのパックも有ります。私はあれにしましょう」

 まだ彼女が選べるものが有って良かった。しかしこれからが大変そうだな。


 自販機でジュースを買って戻ってくると、あれ、生徒がいつもより多くないか。立食に近いじゃないか。


「麗人さん、いつもこうなのですか?」

「はい」


 雫や望月さんが席を作ってくれている。美麗は俺の隣だ。


「麗人、これでお昼は、麗人、美麗ちゃん、芦屋さん、望月さん、健吾と私になったわね」

 これじゃあ、遠足のお弁当みたいじゃないか。


「麗人さん、他の方はお弁当を持って来ていますね。私も状況が分かったのでお弁当持ってきます。麗人さんの分も作りましょうか?」

「「「駄目!」」」


「えっ、どうしてですか?」

「お兄ちゃんのお弁当は私が作っていたの!」

「麗人お兄様のお弁当は私が作ります」

「何言っているの二人共、早乙女君のお弁当は私が作るわよ」


「という訳です。文子さんは、自分のだけ作って下さい」

「分かりました」


 麗人さんの周りは面倒な人が多いですね。何とか差別化しないと。将来彼の妻になる身としては、面倒な人は早く遠ざけた方が良いですね。


―――――

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