第35話 夏休み 健吾達とのプールは楽しいけど


 前話と逆に長いです。


―――――


 埼玉の遊園地の有るプールには、誠也達とは現地待合わせだが、健吾とは途中で合流して現地に向った。


 遊園地のある駅に着いたのは、集合時間午前九時の十分前だ。もう誠也や川上、相模も来ていた。


「おう、来たか。早速並ぼうぜ」


 午前九時の開園だけど、もう一杯の人が並んでいる。



 私、望月美紀。田所君と早乙女君がこの日にここのプールに来ることを学校の廊下で聞いた。クラスの子には中止と言っておいて本当は来るという事を聞いた。


 だから、私もここに来た。目的は勿論早乙女君。皆の前では麗人なんて言ったけど、あの時は思い切りマウント取りたかったから頑張って言っただけ。本当は恥ずかしくて言えない。


 部活の夏休み後半の練習は二十五日から。だから今日は彼に思い切りアピールするチャンス。田所君達もいるけど関係ない。いかにも偶然を装って行くんだ。


 


 俺達は並んでから二十分位待って中に入る事が出来た。チケットは、誠也が皆が渡したお金でまとめて買ってくれている。遊園地には入れないプールだけのチケットだ。


 俺の恰好はサングラスにサンシェードそれにTシャツにジーンズといつもの恰好だ。これだけだと顔がほとんど見えない。


 プールの入口を入って左に折れてロッカールーム兼着替え室に入って、サングラスとサンシェードを外すと


―えっ!

―なんだ!ロッカー間違えたのか?

―女か?


 まあ、こうなるよな。俺の方を皆がジッと見ている。

「麗人、早くTシャツ脱いで男だと教えてやれよ」

「ああ」


 俺がTシャツを脱ぐと


―おーっ!

―でも、顔は女だぞ。

―すっげえ、綺麗だ。

―いや可愛い。


 はぁ、だからプールは苦手なんだ。早く海水パンツになって外に出るか。何故か、俺が着替える姿に周りの視線が集中している。


 ロッカー側を向いてジーンズを脱いだ後、腰に長いタオルを巻いてパンツを取ってサポーターと水着を履くとタオルを取った。


―お、男だ!


 当たり前だ。


 俺は貴重品を防水バッグに入れて直ぐにロッカールームを出ると後から付いて来た誠也が

「凄かったな」

「これが有るからプールは苦手なんだ」

「そうか、誘って悪かったか?」

「いや、それは無いんだけど」

 せっかくクラスの友達が誘ってくれたのを無下にする気は無い。


 健吾や川上、相模も出て来た。

「へーっ、早乙女の体って凄いな。贅肉のぜの字も無いじゃないか。俺なんかより全然マッチョだ」

「本当だな」

「だから、俺は男だって言っているだろう」


「いやぁ、でも、もしかしてという思いもほんのちょっとだけど残ってて。でもこれで完全に消えたわ。早乙女は男だ」

「確かに」

「その辺で良いだろう。皆場所取りしようぜ」

「「「おう」」」



 ふふっ、早乙女君の水着姿。抱き着きたくなるくらい素敵。私はスタイルには自信がある。しっかりと印象付けないと。



 健吾と俺が百八十越え、誠也、川上、相模も百七十五はある。歩いていると思い切り目立った。


―ねえ、あの子達。

―うん、中でもあの人。

―どう考えればいいの?

―でも男でしょ。

―あんなに綺麗で可愛い男っている?

―すね毛も無いし、喉仏も出て無いし、肌もきめ細やかよ。

―でも凄い筋肉。

―分からない。


 どうでも良いだろう。人の事なんか。まあ、海でも同じだけど。



「おっ、あそこが空いている」

 田所が少し端になるが、四人で座れるパラソル付きの四人掛けテーブルを見つけた。


「いいじゃないか。あまり周りに人もいないし」

「良し決めた」隣から椅子を一つ持って来れば問題ない。



 皆でそこに行って軽く準備運動した後、プールに入った。とても大きなプールだ。側には大きなウォータースライダーがある。何故かプールの傍に舞台の様なものもあるけどイベントでもあるのかな。



 皆で泳いだり、水の掛け合いをした後、ウォータースライダーでみんなで繋がって滑ったりして楽しんだ。

「そろそろ、一回休むか」

「「「おう」」」


 流石誠也、クラス代表委員だけ有って、上手くリードしてくれている。



 俺達は、席に戻ると五人の体が止まった。


「偶然ね。みんな」


 何故か俺達の傍には一年末考査で学年一位、女子剣道部の望月美紀さんが、ビキニ姿で俺達の隣のテーブルに座っていた。一人だ。


「あ、あの望月さん?なんでここに」

 川上が聞くと


「さっきも言ったでしょ。単なる偶然よ」


 なんか怪しいけど。でも俺達がここに来ることは誰にも言っていない。


「ねえ、それより私一人なの。一緒に遊んでくれない?」

「俺はいいけど。みんなどうする?」

 川上はまんざらでもない様子で答えた。


「別に構わないけど。皆良いよな」

「「「いいよ」」」

「良かった。もし断られたらどうしようと思っていたの」

「いやぁ、望月さん程の人を断る人はいないよ。それに俺達が居れば虫よけにもなるだろう」

「ふふっ、そうね」


 川上は望月さんに気でも有るのか。やたらと話しかけている。確かに女性にしては大きいし、剣道をしている割には、胸もお尻もしっかり大きい。


 でもこれだけのスタイルなら、当然ナンパの可能性もあるだろうから一人で来るなんて危険…。あっ、そう言えば女子剣道部の部長をクラブ見学の日に三本連取したとか言っていたな。そういう事か。なら俺達必要無いだろう。やっぱり偶然は怪しい。


「みんな、もう泳いだの?」

「ああ、俺達はもうウォータースライダーもやって結構楽しいんだところだよ」

「へぇ、あれかぁ。私もして見たいな」



 俺と健吾がここの周りの事で駄弁っていると

「私、一人じゃ怖いから早乙女君一緒に来て」

「お、俺?」


「麗人行ってやれよ」

 誠也がニタニタしながら言っている。川上は行きたそうだが。


「川上が言ってやればいいんじゃないか」

「えっ、俺はいいよ。早乙女に任した」

 本当は行きたいけど、空気読まないと。



 健吾の顔を見ると仕方ないという顔をしている。


「じゃあ、皆も一緒に行こうぜ」

「ああ、それが良いな」

 誠也、ナイスフォロー。


 せっかく早乙女君とイチャイチャしようと思ったのに田所君が詰まらない事言うから。



 何故か、みんなでプールの中に入ってウォータースライダーまで来ると俺と望月さんだけがプールから上がった。

「麗人、頑張れよ」


 誠也、他人事だと思って。それに何頑張るんだよ。



 十分位並んでスタートの位置に着いた。

「彼氏さんが前ですね。彼女さんは後ろに座って、手を彼氏さんのお腹に回してください」

「こ、こうですか」


 ふふ、何ていう幸運。こんな事ここでしか出来ない。早乙女君の体って見た目でも分かったけど、筋肉だけって感じ。こんな人に〇〇〇〇ら。


「はい、スタートして下さい」

「えっ?!」

 変なこと考えていたらスタートしてしまった。


 うっ、望月さんって見た目より背中への圧が凄い。ちょっとこれじゃぁ。


 ふふっ、思い切り顔も早乙女君の背中に着けて、気持ちいいー。


 右に左にぐるぐる回りながら最後は、


ザブーン、ザブーン。


「ぷふぁ。気持ち良かったぁ。もう一度やろう」

「い、いや俺は」


「いいじゃないか。早乙女」

今度は相模だけでなく川上も言っている。


「健吾、変わってくれ」


 健吾が笑いながら首を横に振っている。覚えて置け。

「これが最後ですよ」

「うん♡」


 またしても同じ目に遭った。参った。女性の体がこんなにくっ付いているのは、妹は別として、雫と健吾と一緒にお風呂に入った中学一年以来だ。参ったな。


ザブーン、ザブーン。


「うわぁ、気持ちいい。もう一度。ねっ」

「駄目です」


「そろそろお昼にしないか」

 健吾ナイスフォロー。


「じゃあ、テーブルに戻ってから、買いに行くか」

「「「おう」」」



 買い出し係は、誠也と三上それに望月さんだ。二人いれば問題ないだろう。


 俺と健吾それに相模と三人で話していると

「ねえ、君達」


 振り向くと俺達より年上だとはっきり分かる女性が三人立っている。。大学生か社会人だろう。


 何だという顔をしていると

「私達と一緒に遊ばない?」

「いや、俺達、友達が昼を買いに行っているので」

「じゃあ、戻って来てからでもいいけど」


 俺と健吾と相模が顔を見合わせると

「麗人、どうする?」

「えっ、俺は遠慮する。健吾と相模は?」

「田所と川上次第かな」

「俺も」


 おっ、何と反応したぞ。

「君も一緒に遊ぼうよ」

「いや、俺は…」


 丁度、誠也達が戻って来た。

「どうしたんだ?」

「ああ、このお姉さん達が俺達と遊びたいんだって」

「あーっ、俺はいいや」

 誠也が断った。彼女でもいるのかな?


「小早川君と相模君はどうするの?」

 なんと望月さんが過激な発言。


 ふふっ、これで早乙女君と二人になれれば。


「うーん、俺もいいや」

 健吾が断った。


「えーっ、二人だけじゃない。田所君も行ってあげなさいよ」

 何故か、逆ナンを押す望月さん。どうしてだ?


 健吾が

「お姉さんたち何処に座っているの。昼食べて相談するから」

「そうね、私達も食べようか」

「「うん」」



 お昼をこれから食べるというお姉さん達は、俺達が食べ終わっても戻ってこなかった。よく見ると他の男の人達にナンパされている。そういう事か。


「あういう人達って、こういう所はあれが目的で来るのかな?」

「そうなんじゃないか。俺達は健全に遊ぼうぜ」

 誠也と相模の会話に川上が残念そうな顔をしている。まあ次を頑張ってくれ。



 それから、流れるプールとかに俺達と望月さんが行って遊んだ。川上が思い切り望月さんの相手をしている。良かった。


 でも十分も遊ばない内に

「ねえ、早乙女君、一緒に遊ぼうよ」

「えっ?」


 川上の顔を見ると仕方ないという顔をしている。

「いやぁ、俺はちょっと」

「なんで早乙女君は私と遊べないの?」


「麗人、諦めろ。望月さんを困らせると竹刀が飛んでくるぞ」

「どういう意味よ。田所君?」

「いや、俺は望月さんを押そうと思って…」

「そ、それなら良いわ」


 仕方なしに一緒に遊んだが、浮輪がある訳でもなく、俺に体をくっ付けてキャッキャッしているだけだ。俺はどうしようもなしに相手していると


「もう時計が午後二時半だ。電車が混むから早めに上がらないと」

 健吾助かった。


「まだいいじゃない」

「もう帰りましょう。望月さん」

「えーっ、でも早乙女君がそういうなら」



 俺達は、シャワーを浴びて、着替えるとロッカールームの外で望月さんを待った。二十分位後に出て来て、電車に乗ったのが、結局午後三時になってしまったけど、まだ座れた。


 何故か、望月さんは俺の隣で俺に寄りかかって寝ている。

「なあ、健吾、望月さんの降りる駅って知っているか?」

「知らない。誠也は?」

「実言うと俺も知らないんだ」

「えっ、相模は?」

「俺も知らない」

「俺が知っている」

 

 みんなで川上の顔を見ると川上が電車のドアの上にある停車駅を見た。

「あっ、次だ」

「「「「えっ!」」」」


 俺は急いで寄りかかっている望月さんの体を揺らしながら

「望月さん。次が降りる駅ですよ」

「むにゃぁ。早乙女君おいて行かないで…」


 どんな夢見ているんだ。健吾達が笑いながら

「麗人、置いて行かないでだって。次で一緒に降りるか」

「勘弁してくれ」


 何とか望月さんを起こしたけど、自分がさっき口走った事は覚えていない様で


「あっ、降りる駅だ」

 すっと勝手に目が覚めた。流石だ。


「じゃあ、みんな学校でね。バイバイ」

 今日は予想以上だった。まさかあの早乙女君と裸に近い体をくっ付けていられるなんて。

 学校じゃあ、想像もつかないわ。でもこれで完全に他の人より一歩リード。彼の腕の中に早く…。えっ、いやそ、そうじゃなくて…。私何考えているのよ。



「はぁ、参ったなぁ」

「流石、麗人だな。一緒に居ると飽きない」

「誠也勝手な事言うな。こっちの身にもなって見ろ。ところで川上、おまえ望月さんに気があるの?」

「少し興味ある」

「「「じゃあ、頑張れ」」」

「川上。お前の心が通じる事を祈るよ」

「あははっ」


 その後は順番にそれぞれの駅で降りた。最後は健吾だ。

「麗人、二学期からが大変そうだな。まぁ。新しい展開という所か」

「勘弁してくれ」



 その日は家に帰って夕食を摂って直ぐに寝た。流石に疲れた。二十五日は九条さんとかぁ。あの人変な事言っていたけど、大丈夫かな?

 

―――――


 夏休みイベント、最後は九条先輩とのプールです。

 お楽しみに。


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