第9話 九条先輩冗談は止めましょう



 GWに入って五日目。水曜日。今日は学校に花壇に水やりをする事になっている。俺は九条先輩から言われた通り、園芸部の部室兼倉庫に約束時間の十分前に来た。

 来たことが分かる様にドアを開放してある。


 花壇を見ると先輩が言っていたように水やりはしてあるが、もう渇きつつあるという感じだ。それと草が生えて来ている。そろそろ抜き時だ。


 花壇を見ながら待っていると先輩が来た。黄色いTシャツにデニム生地のパンツ、それに何故か白のひも付きサンダル。なんか水やりに来たとは思えない格好。



「麗人、来てくれてありがとう。思ったより渇いているわね。水やりの前に草むしりしないと」

「でも先輩その格好じゃ」

「大丈夫。倉庫の中に花壇に入れるようにゴム靴を用意してある。普段履いている靴だとウィルスやばい菌が靴底に付いているから、履き替えないといけないのよ」

「そうなんですか」


 流石園芸部だ。


「麗人もゴム靴に履き替えて花壇に入って草むしりよ」

「分かりました」


 二人で倉庫の中でゴム靴に履き替えると

「麗人はそっちの花壇をやって。私はこっちをやるから」

「はい」


 二十分位して終わると

「校門の前の花壇も草むしりしましょう」

「はい」


 ここも二面ある花壇を片方ずつ二人で草むしりをするとやはり二十分位で終わった。


「麗人、後は水やりよ」

「はい」


 一度倉庫に戻って、校舎裏の花壇に水やりをすると、校門の方の花壇にも行って水やりをした。


「麗人、後はさっき取った草を学校の焼却炉の傍に置いて終わりよ。捨てて来てくれる」

「分かりました」



 俺は、校舎裏の花壇の傍にまとめてあるむしり取った草をゴミ袋に入れると校門の傍にまとめて有った草も同じゴミ袋に入れて、隣校舎の裏にある焼却炉の傍のゴミ置き場に置いた。



 帰る途中、グランドを通るけど、運動部の人達はGWでも練習している。俺には苦手かな。

 園芸部の部室のドアが閉まっているので、何も考えずに開けると


―きゃーっ!


「えっ?!」


 そこには綺麗な淡いピンクのブラを手で隠しながら立っている先輩がいた。顔が真っ赤になっている。


「ばか、何見ているのよ。早く閉じなさいよ」

「す、すみませんでした」


 俺は直ぐにドアを閉めて待っていると

「開けていいわよ」


 恥ずかしくて開けられずにいるとドアが開いた。

「麗人、見たわね」

「だって、まさか先輩が…」


「エッチ、スケベ、スケベ、ヘンタイ、ヘンタイ、ヘンタイ、バカ、バカ、バカ、バカ」


 うおっ!


 いきなり抱き着いて来た。背中に手を回された。俺の鳩尾に柔らかいものが当たっている。Tシャツ一枚なだけに強烈だ。


「せ、先輩、何しているんですか。離れて下さい」

「駄目よ、私の胸を見た罰よ。少しこうして居させて」


 胸見て無いです。


 三分位で離れてくれた。


「ふう、麗人のお腹とか胸って固いのね」

「あの、俺男ですから」

「分かっているわよ。確かめただけよ。万一の為にね」


 万一の為ってなんだ?


「ところでなんでTシャツを脱いでいたんですか?」

「水やりと草むしりでTシャツが汚れると思ったから替えのシャツを持って来てたの。汗かいたし、せっかくだから着替えようと思って脱いだところに君がドアを開けたのよ。

 君にしっかりと胸を見られてしまったわ。まだ誰にも見せていないのに」

「はあ、でも俺胸は見ていな…」

「うるさい!ブラ見たら見た事になるの!」

 そうなのか?


「そうだ。罰として今日はお昼一緒に食べて」


 俺、罰を受けるいわれも無ければ、一緒にお昼食べる理由も無いんだけど。



 俺は全く納得がいかないままに、水やりを終えた後、先輩に連れられた駅前のファミレスに来ていた。


「あの?」

「なに?」


「今日は水やりだけだったんじゃ…」

「麗人。何言っているの。君が私の生胸を見たのがいけなんでしょ」


「ちょ、ちょっと待って下さい。それって。事実が段々、深く歪曲されていませんか?」

「何言っているの。私の胸を見たじゃない」

「いや、それって」



―ねえ、あの二人。

―うん、間違いない。

―九条先輩の生胸を触ったとか。

―えっ?そうは言っていなかったんじゃ。

―でもナマ胸って。

―そうね。

―これは由々しき問題よ。すぐにクラスチャットで。

―うん。



 ふふふっ、ここは部活を終えた生徒がたまり場にしている事はうちの生徒なら誰でも知っている。だから麗人をここに誘って、あえて大きな声で誇張した。

 これで麗人は、噂と共に私の彼として皆に知れ渡る。後は…。



 注文の品が来た。

「麗人、それ美味しそうだよね」

「えっ、さっき注文した時、ラムチャップなんて食えないって先輩言っていたじゃないですか」

「でも、それ見たら食べたくなった。私のペペロンチーナあげるから一切れ食べさして」


 まあ、一切れくらいなら。


「いいですよ」


 俺が、脂身が少ない端を一切れ切れ分けてフォークで先輩のスパが乗っている皿に置こうとすると


「麗人。駄目!私の口にそのまま入れて」

「何言っているんですか。先輩が好きに食べて下さいよ」

「あーん」


 先輩は可愛い口を大きく開けて、まるで演技前のご褒美の餌を求めるイルカの様に待っている。

 でもこんな事して

「あーん」


 くそっ、仕方なく俺はラムチャップの一切れをそのまま先輩の口に運ぶと


 はむっ!


 へっ?


 先輩は、俺がフォークに刺したラムチャップを見事に口の中に入れて食べ終わると今度は、自分のスパをフォークで数本取って俺の顔の前に持って来た。


「麗人、口空けて」

「嫌です。皿に置いて下さい」

「駄目よ。私の口に入れてくれたじゃない。だから!」

「嫌です。そういう事するならスパ要りません」

「麗人の意地悪」


 俺何も意地悪していないよな。



―今の見た。

―うん、九条先輩は嬉しそうに食べたけど、早乙女君は拒否したわよね。

―という事は、まだ二人の仲は深くない。さっきの胸の話は怪しい。

―そう思った方がいいかも。

―そうね。でもこの事はクラスチャットに上げておこう。

―うんうん。



 俺が食事をしていると、見た事のある女子達が、こっちをしっかり見ながら会計の方に歩いて行く。視線が痛いんだけど。



 ふふふっ、これで私達が付き合い始めたとか噂を流してくれれば最高だわ。


―――――


 書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

 まだ★が少なくて寂しいです。投稿開始段階で少ないと心が折れます。評価してもいいけど★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る