第7話 遠足は楽しいのでは その二
第三チェックポイントに着いた。もう一時間近く経っている。田所がマップを出してチェックして貰った後、
「途中、丸太橋やネット渡りがある。このアスレチック最大の難所だ。気を付けて行けよ」
「はい」
「丸太橋にネットか結構難しそうだな」
「ああ、楽しみだ」
十分程歩くと、高さは無いが、二本の太い丸太が、十メートルくらいの長さで五か所繋がっている。
先にここに着いた班も結構大変なようだ。駄目なら横を歩いてもいいようなものだが、真剣に丸太の上を歩いているので進みも当然遅くなる。
俺達の前にも二班程、待っていた。
「誰が先に行く?」
「俺から行こうか?」
「早乙女から?」
「ああ、じゃあ先に行くな」
こういうバランスを取りながら歩くのは得意だ。差し足でスススと進めばいいだけだ
「早乙女、上手いな」
「ああ、麗人は武術で秀でているからな」
「えっ、早乙女は武術の心得が有るのか?」
「心得どころか、もう十年近い筈だ。もうすぐ師範代とか言ってたぞ」
あの容姿で武術の師範代か。恐ろしい女いや男がいるものだ。
「雫も行ったし、田所、俺達も行こうぜ」
「ああ」
「東雲さんも上手いな」
「雫は、毎年スキーとか行っているからな。あいつバランスはいいんだ」
「お前達凄く仲いいな」
「もう小学校からの仲だからな」
「そうか」
俺も仲間に入りたくなった。話していて心が温まる。
丸太橋が終わると今度はネットの上を歩くというか這うという感じだ。横五メートル、縦十メートル近いネットが、縦に三枚並んでいる。
高さは無いが中々難しそうだ。ネットに足を挟んだり、腕を挟んで大変な目に遭っている生徒が大勢いる。
「さっ、俺達も行こうぜ」
「おう」
俺達四人は、苦労している人達を尻目に確実にネットを渡り越した。少し歩くと第四チェックポイントに先生が立っていた。
「ここで最後だ。ゆっくりした下り坂だけど気を付けて歩け。もう急ぐ事無いからな」
「はい」
「もう、終わりか。でも結構かかったな。一時間十五分も掛かっている」
「これは、後続が全部終わるの大変だぞ」
俺達四人がのんびり歩いていると前の方で悲鳴が聞こえた。
―きゃーっ、
ドテッ。
-痛ーい。
急いで行くと上条さんが足首を押さえている。一緒の班の子達は全員女子だ。男子入れるんじゃなかったっけ。田所が
「男子はどうしたんだ?」
「走っていっちゃったから、私達も追いかけようとしたら上条さんが小石に躓いて」
「そうか。しかし困ったな。上条さん、歩けるか?」
首を横に振っている。
「仕方ない。ここに居る男子は上条さんより背が高すぎて肩を貸せないから、女子達で出来るか」
「うん、分かった。でも一緒に歩いてくれる?」
「その位はいいよ」
そこから十五分くらいかけてゆっくりとゴールに着くと桜庭先生が駆けつけて来た。
「上条さん、どうしたの?」
「足を挫いて」
「どうして?」
「一緒に居た男子が急にかけ始めたので、私達も追いつこうとして掛け始めたら、上条さんが突き出ていた岩に足を取られて」
「そう、分かったわ。そのまま一緒に救護所まで来て」
「はい」
「上条さんの班の男子は説教免れないな」
「ああ、どう見ても男子が悪い」
俺達四人は手を洗ってからレストランに入った。まだ半分も帰っていない。
「なあ、早乙女、小早川、東雲。頼みがあるんだが?」
何だという顔を三人ですると
「お前達ってさ、みんな名前呼びしているだろう。俺だけ皆を名字呼びって、なんか仲間外れな感じがするんだよ。俺も名前呼びしていいか?」
三人で顔を見合わせると健吾が
「ああ、全然問題ない。これからも宜しくな誠也」
「ありがとう健吾、麗人、雫。よかったぁ、アスレチック中、ずっとおれ疎外感が有って」
「なんだ、早く言えば良かったのに」
「もうアスレチック終わったけどな」
「「「あはは」」」
そんな話をしながら待っていると全員がレストランに帰って来ていた。
少し遅くなった昼食も終わり、休憩してから、大きな駐車場に所狭しと並んでいるバスに乗り込んだ。桜庭先生が
「隣を確認して、来る時と同じ人が乗っているわよね」
「「「「はーい」」」」
「麗人、楽しかったな」
「ああ、誠也楽しかった」
「ちょっと待って!」
「「えっ?!」」
後ろから女子の声が掛った。田畑さんだ。
「何で、田所君が早乙女君を名前呼びしているのよ」
「いやだって。アスレチックして、仲が良くなったから」
「「「えーっ。ずるーい!」」」
女子からの一斉のブーイングになった。
「田所君、覚えてらっしゃい。GW明けはしっかりとクラス代表の仕事して貰うから。ねえ皆!」
「「「そうよ、そうよ」」」
「麗人、俺何か恨み買う事したか?」
「さぁ?」
「麗人、健吾。バス降りたら、駅前のファミレスに寄らない。GWの予定話そ」
「「「「えっ?!」」」」
「麗人、健吾やっぱり止めよ」
「あ、ああ」
学校にバスが着いた。他の学年はまだ帰ってきていない様だ。学年担任の短い話の後解散となった。健吾と雫と一緒に帰ろうとすると田畑さんが声を掛けて来た。
俺は彼女が言った内容に飽きれて健吾と雫の顔を見たけど、健吾はやれやれという顔をしているし、雫は、黙って俺を見ているだけだ。だけど逆らえそうにない。
仕方なく了解すると、周りにいた女子達が不安顔から安堵の顔に変わった。
はぁ、俺のGWはどこ行った。
結局、健吾と雫とは話す事が出来ないまま、GWに突入した。俺は道場と水やりだけになってしまった。
―――――
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。
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