第2話 入学式


 今日は高校の入学式。

 俺、早乙女麗人。今日から親友の小早川健吾と東雲雫と一緒に三人で入った都立星城高校の門に来ていた。

 二人は小学校中学校と一緒で、この高校も三人で家から近くて適当に進学校な所が良いという思いで決めた。


「健吾、雫。今日から高校生だな」

「そうだな。麗人」

「うん、麗人も健吾も清く正しく美しくだよ」

「「なんだそれ??」」

「まあ、いいじゃない。行くわよ」



 三人共背が高い。俺は中学三年の体力測定の時、百七十六センチ、健吾も百七十六センチ、雫は百七十センチある。だから歩いてもちょっと目立つ。



 校舎までの道の途中に先生が立っていて、歩く方向を教えてくれる。昇降口に入ると、自分の名前が書かれた下駄箱を探して、事前に購入した上履きを履いて廊下に行くと先生が、指差しで体育館の方へ行けと言っている。


 三人でそのまま行くと入り口で今度は、壁に貼られている組毎の名前の一覧から自分の名前を探してその組の椅子に座れと言われた。

 

 そんな事言われても一クラス四十人がAクラスからFクラスまである。三人で二組ずつを担当して探していると健吾が、


「有った。Aクラスだ。麗人も雫も一緒だ」

「「やったぁ」」

「これで、中学から四年連続で一緒だな」

「ほんとね」


 一人で来てクラスが分からない人は、ボードPCを持った先生に自分の名前を言って教えて貰っている。


 俺達三人は、なるべく後ろの方に座ろうとして両親が座っている後ろの席を見るとお母さんが手を振ってくれた。


お母さんは綺麗で背が高い。直ぐに分かった。お父さんと一緒だ。今日は撮影無いのかな。そんな事を考えながら座ろうとすると、上級生や同級生からぼそぼそと小声が聞こえる。


―凄い可愛い。

―それにとても綺麗。

―でも男子の学生服来ているよ。

―指定服だけど、強制じゃないからボーイッシュで決めて見たかったんじゃないの


―すげぇ、可愛いな。

―後で声を掛けようぜ。

―うん、うん



 またか、でもいいや。もう慣れている。


「ふふっ、麗人、健吾。清く正しく美しくよ」

「なに、それ?」

「俺も分からねえ」



 俺達も小声で話をしていると壇上に男の人が上がって来て入学式の開始を告げた。校長先生のお話、来賓のお話、クラス担任の紹介等々、しっかりと四十分位の間、有難い?お話をしてくれた。



 入学式が一通り終わるとAクラスの前に女性の先生が現れた。凄い美人だ。白いスーツを着て、上着がはち切れそうなお胸に、スカートがはち切れそうなお尻、それにフチなしの眼鏡を掛けた髪の毛の長い先生だ。


「Aクラスの皆さん、立ち上がって私に付いて来て下さい」


 がたがたと皆で立ち上がってから両親の方に一度顔を向けてからみんなと一緒に教室へ向かった。



 廊下を歩いて行く。色々な教室の前を通ってAクラスに着いた。出席番号順に名前が書かれた紙が置いてある。


 俺は、廊下側二番目、一番後ろ。健吾は窓側の一番前。そして雫は廊下側三番目の前から二番目だ。皆ばらばらだ。


 席に座ると隣に座った女子がジッと俺を見てくる。何となく気になって顔を向けると顔を避けられた。反対側も同じだ。やっぱりここでも俺、駄目なのかな。健吾も雫も隣の人と話をしているのに。



 俺達を連れて来た先生が一度出た後、十分程して戻って来た。教卓の後ろに立つと

「皆さん、このクラスを一年間担当する担任の桜庭京子(さくらばきょうこ)よ。字はね」


 そう言って黒板に自分の名前を書いた。そして自己紹介をし始めた。何と帝都大学の教育学部を出ている才女だ。

 今日は金曜日。来週月曜からの俺達の動きを話した後、


「皆さん、早速ですが、席替えをしましょう。その後は自己紹介と役員決めね。この箱の中に席位置が書かれた札が入っているから廊下側一番前の人から取って行ってね。一人二枚は駄目よ」

 受けたのか、数人の生徒が笑っていた。何処が面白いんだ?

 


 俺の番になった。祈る様に窓側一番後ろ、窓側一番後ろとブツブツ心の中で言ってから箱の中に手を入れて一番上にある紙をサッと引き上げた。


 じゃーん。窓側後ろから二番目。やったぜ。


 雫の番になった。あいつの顔を見ると心の中で俺と同じ様にブツブツ言っているのが分かる。

 箱の中から引くとパッと顔が明るくなった。


 その後、健吾の番になった。前なので顔が見えないが箱から取り出したとたん、やはり顔がパッと明るくなった。


 どうも二人は希望に近い席を引いたらしい。


「はい、皆、引いたわね。じゃあ、席の移動して」


 がたがたと席を立ちながらスクールバッグだけを持って席を移動すると


「健吾、隣か」

「ああ、麗人は大体そこ辺りだと思ったぜ」

「ふふっ、私もよ」


 何と雫は俺の前だ。これで次の席替えまでは一緒に居れる。でも後ろの席に女の子が座った。ちょっと背の低い丸顔のボブカットの女子だ。


 その子は自分で一度席に座ると体を左右に揺らした後、桜庭先生の所に行ってこちらを見ながら先生の耳に顔を近付けて何か言っている。先生がうんうんと頷いた。そしてその子が戻って来ると


「早乙女君、後ろに座っている、上条さんと席を代えてくれない。上条さん、早乙女君と小早川君が大きくて前が見えないって言うのよ」

「えっ、でも」

「麗人、仕方ないな。先生俺が代わってもいいですけど」

「上条さんが早乙女君と代わりたいと言っているのよ」

 なんか、嫌な予感。


「分かりました」

「早乙女君。ありがとう。ごめんね」

「……………」



「さてと、自己紹介といきましょうか。今度は窓際一番目の人から自分の紹介をして」


 一番目の人が立って教卓の横で自分の紹介をしている。あっという間に雫の紹介も終わって、上条さんが終わって俺が前に立つと、皆からジッと見られた。

「俺は早乙女麗人。男です」


―えーっ!!!

―きゃーっ!!!

 男女構わない悲鳴のような驚き。


―げっ、あいつ男かよ。告白しようと思ったのに。

―うわーっ、歯が立たない。

―世の中ずるい。

―でもこれは取決めが必要かも

―うんうん。


 ちょっと静かになるのを待ってから

「あの趣味はありません。ちょっと武道を手習いしています。中学校は都立馬場中です」


 俺があっさりと終わらせると一応パチパチと拍手をくれた。その後、健吾の自己紹介の時、雫と俺が小中一緒だった事も話してくれた。



 自己紹介も終わると

「最後だわよ。役員決めね。これ終わらないと皆帰れないわよ」

「「ええーっ!」」


「先にクラス代表決めて。自薦他薦どちらでも良いわよ」


 シーン!


「誰もいないの。じゃあ先生が決めるわね。田所誠也(たどころせいや)君。君がクラス代表よ。前に出てクラス委員決めて」

「えっ!」


 渋々と前に出て来たのは、背の高いイケメン男子だ。頭の良さそうな顔をしている。細い銀フレームが上だけ付いている眼鏡をしている。


「先生に指名された田所誠也です。もう一人のクラス委員になる人いませんか」

「「「はい、はい、はい」」」


 女子が一杯手を上げた。モテるんだこいつ。


 結局、田畑玲子(たばたれいこ)さんという人がじゃんけんで決まった。いいのかこれで?


「では、他の役員も決めるわよ。田所君、ここに書いてある役員を決めて」

「はい」


 田所は、他にいくつもある役員を自薦他薦で決めた。もちろん俺達は何もしない。



「はい、では。今日はこれで終わります」



がたがたと皆が帰って行く中、

「麗人、雫。帰ろうぜ」

「うん」

「ああ、帰ろう」


 何故か女子達の視線が痛い。


 昇降口で靴を履き替えると校門まで歩いた。上級生からも俺達はジロジロと見られている。来週からが思いやられる。



 駅まで行くと

「健吾、雫。来週からはここで午前八時に待合せな」

「「了解」」


 健吾と雫は俺と反対方向の電車に乗る。雫が二つ目の駅で健吾が三つ目の駅。俺はこの駅から二つ目だ。


 家に帰ると

「ただいま」


「お帰り。お兄ちゃん。どうだった高校?」

「何も変わらずだよ。前と同じ感じ」


 俺を出迎えたのは、俺の大切な妹、早乙女美麗(さおとめみれい)。二つ年下の妹。お母さんによく似ている。とても可愛い女の子。身長は中学二年で百六十五センチと大きい方だ。勉強は良く出来る。俺の出身中学都立馬場中の二年生だ。


「お父さんとお母さんは?」

「お母さんは、午後から仕事だって言って、出かけた。でも今日は早く帰って来るって言ってたよ。お父さんも同じ」

「そうか」


 俺のお父さんは大学で教授をしている。結構イケメンでとても優しい。お母さん、早乙女花蓮は中学時代から女優とモデル初めて、今でも現役の女優であり、モデルをしている。


 俺と妹を甘やかし過ぎる感じが有る。夕食が一緒の時はあまりない。大体、妹と二人で食べているけど、今日は久々に四人で食べれそうだ。


―――――


 書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。

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