「わたしが雪女だからって、すごくクールでスキーが上手いとはかぎらないのです」

天雪桃那花(あまゆきもなか)

雪女ちゃんは初めてがいっぱい! 前編

 わたし、花宮真雪です。


 初めて学校に通っています。

 高校一年生です。


 実はわたし、人間ではないのです。

 妖怪雪女なのです。


 知ってらっしゃいますか?

 雪女という妖怪をご存知でしょうか。

 わたし雪女は寒さにも冷たいものにもすこぶる強くて、冷気を出したり雪を出したりやお空から雪を降らせたりも出来るんです。



 わたしずっと人里離れた……というか雪女の長老雪絵おばばの作った結界内で隠された山奥の村に住んでおりました。

 でも妖怪雪女の里村はあんがいハイテクです。

 不思議と人間文化は根づいていて取り入れています。人間の書いた小説や漫画も読めて携帯電話も普及してるしドラマや映画やアニメが見られるテレビだってあります。



 わたしですね。

 人間の学校に通い出したのは人間世界に興味があるのもそうなのですが、将来的には人間のお婿さんを貰わなければならないのです。

 もしくは雪女の伝統で雪男さん族の誰かと結婚します。


 ほんとのところをいえばだいぶ令和時代になった現代いまでは、そんな妖怪雪女の伝統や大昔のように縛りつけるような制約はなくなってはきました。


 雪女族の掟も時代とともに緩和されているので現在では雪男さん族以外の種族とも結婚出来ます。


 だけどわたしの大好きなおばあちゃんは人間か雪男さん族と結婚してほしいみたいなのです。


「真雪、おばあちゃんの言うことなんて話半分に聞いてれば良いのよ。あんたは自由にあんたの好きな人と結婚する! それがが一番! 真雪は私達みたいに幸せにならなくっちゃ」

「でもでもまずは真雪ちゃんは好きな人を見つけなくっちゃね〜」

「見つけるってお姉たち。真雪、出逢いは運命だぞ。がむしゃらにがっつき彼氏を見つけようとしているうちはなかなか自然には出会えない。ロマンチックなのが一番だよ」

「あっ、はっ、はいっ。そうですね」


 妖怪雪女の里を出発する時にわたしはお姉ちゃん達に恋愛観を力説されて凄まれてしまいました。


 わたしのお姉ちゃん達も妖狐九尾さんや天狗さんの恋人がいますしね。

 恋人がいるってうらやましいです〜。

 わたしこれまで一度も恋人がいたことも恋をしたこともありません。


 でも恋をしたら雪女族は気をつけなくてはならないことがあります!


 胸キュンしすぎると溶けちゃうことがあるのです。

 溶けても私たちは死にはしませんが何も知らない人間に見られては大変。ちっちゃくなったりしばらく湯気のようなゆらゆらの冷気になっておばけみたいに体が薄くなってしまうんですよ。

 大騒ぎになってしまいます。

 それに悪い大人の人間に捕まったら見せ物小屋に売られたり実験とかされてしまうかも!?


 せっかく学校でお友達が出来たのにそんなことになっては悲しいです。

 お別れしなくちゃいけなくなっちゃう!

 

 溶けちゃう対策には胸キュンに慣れていって鍛錬したり意識を保てば溶けなくなるみたいです。



    ❄



 学校って楽しいっ!


 私にとっては社会勉強のいっかんですがわくわくな世界が待っていました!

 そこに広がるのは雪女の里にはないものばかりの未知の世界でした。


 これから学校行事のスキー旅行に行くんです〜。

 すっごく楽しみです!


 しかしですね、わたしスキーなるものが初めてなのですが大丈夫でしょうか?

 学校の図書室でスキーの本などを読んでは来ましたがどきどきです。


 雪女なので寒さにはめちゃくちゃ強い私です。雪も自分で出せちゃうぐらいでスキー場の環境にはまったく問題はないのですが。


 かなりの運動音痴なのですよね。

 大丈夫でしょうか?


 ですが学校の初めてのお泊りイベント、もう楽しみしかありません。


 夜はお布団に入ってから恋バナとかするらしいのです。

 恋したことのない私は皆さんの恋のお話に興味津々です。

 大いに勉強させていただきたいと存じます!



 学校の校庭にやって来たスキー場に向かう観光バスに乗り込みます。

 ここでは組ごとに乗車するので同じ組の一年生から三年生まで一緒のバスでくじ引きで決めた席です。


「真雪ちゃん! このスキー旅行って移動の時間も気が抜けないよ? 観光バスで隣同士の席になってカレカノになった子とかいるんだよ」

「真雪ちゃん、彼氏欲しいんだ?」

「あのわたし、お恥ずかしながら誰ともお付き合いしたこともなければ初恋もまだなんです」

「だいじょーぶ! いるってそんな初恋もまだな人!」


 クラスのお友達に励まされて私は決意を新たにします。


 もしかしたら彼氏は出来なくても初恋は出来るかもしれませんよね。



「おはよう。今日はよろしくね」

「あっ! はいっ、よっ、よろしくお願いいたしますっ」


 ――ずっきゅん!


 な、何これ?

 胸のどきどきが止まりません!


 変な汗をかいてきそう……というか溶けそうです。蕩けそう……。


 だってですね、私の横の席に座ったのはすっごくかっこいい二年生の先輩でした。


 一瞬でときめいてしまったのはとってもはずかしいので、しばらくは誰にも内緒にしようかと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る