第一章 第53話 国境の砦での戦闘の後始末
熾烈な戦闘から3日後、国境の砦と隣接している街の今後の進退を定めるべく、本来の領主から委任を受けている代官を臨時の代表者にして、官僚達と各ギルドの代表者達、そして3日前の戦闘を戦い抜いた守備兵の司令官と傭兵団【鋼の剣】の団長と参謀が集まり、大まかな方針が話し合われた。
取り敢えずの方針としては、本来の領主の無事の確認と帰還を、大公国の指導部に求めて行き、併せて今回の大公国軍が自国領に対して行った強盗行為と、王国軍と連携した戦闘行動に対しての、説明と賠償を行う事を求める事である。
本当ならば、如何に無法な行為をされたと云えど、大公国の街である立場では我々が大公国の指導部に、糾弾や弾劾を求める事は出来ないのだが、今回の半ば無理矢理の領主を首都で監禁した上に、様々な犯罪行為と自国領を攻撃した事実は、この街の住民全てと各ギルドの構成員に取っては、我慢の限界を遥かに超えた行為で、現在の大公国の指導部をほぼ全員が疑惑の目で見ている。
なので、大公国の指導部とは別に近隣の大公国の街や村などに、連帯して現在の大公国の指導部に領主を帰還させる事と、攻めて来た王国軍から自国を守る様に要請しようと、呼び掛ける書状を各地の有力者に宛てて送付して行った・・・。
◆◆◆◆◆◆
そうやって、国境の街の上層部が生き残る為の道を、必死に探そうとしている間、俺は俺で別の方向からの生き残る術を見つけようとしていた・・・。
残存王国軍を倒した際に、収容した王国軍人から尋問したら幾つかの証言と、資料としての書類が提出されていて、その中に守護機士【アテナス】を運用するに当たっての項目が有った。
先ず、守護機士【アテナス】はそもそも公国の守護神の為、完全に使用出来る状態では無くて、あくまでも暫定的な運用しか出来ない事。
然も、専用キャリアーから降ろす事は出来るが、その場からは動けない。
しかし、遠距離攻撃である【ブラスト・キャノン】は問題無く使用出来るので、此れを主力として攻撃する様に指示されていた様であった。
何とも言い難い資料内容に、笑ってしまいそうになるが、最終的には自己防衛機能を発動し、俺を追い詰めたあの力は正に守護神と呼んで差し支えないものであった。
此の証言や資料から、王国上層部もあの自己防衛機能の発動は想定外だったのだろう・・・。
守護機士【アテナス】の操縦席コックピットには、完全にパイロットに対する配慮が欠けていて、とてもあの高機動に対応した作りでは無かった。
ならば、あの高機動に対応した作りと、対戦していて判った問題点を解消させた、真の守護機士【アテナス】を完成させてやろうやろうじゃないか!
幸い、俺は守護機士【アテナス】を相討ちで倒した事で、全面的な所有権を与えられているので、好き放題にいじり回せる事になっている。
一週間前になるが、俺達以外は知らないが、本来のメイン・パイロットであるアンジーと姉妹のリンナとリンネには、他の仲間達には秘密で操縦席コックピット内に固定されていたカプセル内の人物、彼女達の父であるオリュンピアス公爵を見合わせた、王国軍は公爵が遺体にも関わらず、守護機士【アテナス】の認証を突破できる事実を利用し、偽のパイロットに操縦させる事に成功していたのだ。
あまりの非道な王国の振る舞いと、死んでからも利用させられた父親たるオリュンピアス公爵の無念を思い、アンジー達姉妹は慟哭しながら遺体に縋りついていた・・・。
その姿を、俺とアンナにミレイは居た堪れない気持ちになりながらも、側で立ち尽くしてあげるしかなかった。
そして暫くの間、泣き続けていたアンジーは俺達に振り返り、泣き腫らして目を充血させながらも、気丈に申し込んできた。
「・・・ヴァン・・・、本当に有り難う・・・、貴方のお陰で、父の遺体を取り戻す事が出来たわ・・・。
だけど、母の遺体は未だに王国が所有したままだし、公国は占領されたまま・・・。
私達にとっての仇は未だに厳然として存在してるわ・・・。
そんな現状で、守護機士【アテナス】が私の元に戻って来たのは、本当に僥倖と言えるわ。
此の僥倖を最大限に活用する為にも、ヴァン! 貴方の【星人ほしびと】の技術力を活かして欲しいの!
貴方の乗機であった強化PSパワードスーツは、大破したとはいえ守護神たる守護機士【アテナス】を行動不能にして、偽のパイロットを倒す事に成功したわ!
そんな貴方ならば、きっと守護機士【アテナス】を治して私が乗り込んで戦える様に出来るでしょう?
改めてお願いするわ! ヴァン! どうか私達に力を貸して下さい! お願いします!」
そう言ってアンジーは、深々と頭を下げて来て、リンナとリンネそしてアンナとミレイも、同じく頭を下げて来たので、俺は彼女達に近付いて、全員に顔を上げさせると宣言した。
「アンジーにみんな! 今更な話しだよ。
俺達は一蓮托生な仲間だし、更に言えば同志とも俺は思っているよ。
だから俺は、持てる技術の全てを使用して、必ず守護機士【アテナス】を元に戻すし、更に云えば元の能力よりもパワーアップさせて、オリュンピアス公国を取り戻す最高の戦力として見せるよ」
そう言いながらアンジーの涙を、持っていたハンカチで拭ってやると、感極まったアンジーと妹のリンナとリンネは嗚咽しながら、俺に抱きついて来た。
些か驚いたが、彼女達の心情を思い、ヨシヨシと背中を撫でてやり、アンナとミレイにも任せてくれといった感じでウインクしてやった。
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